2026.10.14

更年期周辺期におけるシャタバリ(Asparagus racemosus Willd.)根エキスの有効性と安全性:無作為化二重盲検プラセボ対照試験

学術委員

辻恵子

今回紹介するのは、アーユルヴェーダで古くから利用されてきたシャタバリ(Asparagus racemosus Willd.)である。

シャタバリはインドやヒマラヤ地域などに分布する多年生植物で、薬用には主に根が利用される。アーユルヴェーダでは、女性の健康に関わるハーブとして知られ、女性の生殖や授乳などに関連して利用されてきた。また、滋養や健康維持を目的とする「ラサーヤナ」に用いられる植物のひとつとしても知られている。近年では、こうした伝統的な利用を背景に、シャタバリ根エキスを用いた女性を対象とする臨床研究が行われている。

本研究では、ペリメノポーズ(更年期移行期)の女性を対象に、シャタバリ根エキスの有効性と安全性が検討された。

研究では120人がスクリーニングされ、そのうち適格基準を満たした80人が、シャタバリ群とプラセボ群に無作為に割り付けられた。試験は二重盲検・プラセボ対照で実施された。 シャタバリ群には、シャタバリ根エキス300 mgを1日1回、8週間摂取させた。評価項目には、更年期症状、生活の質、気分状態、ストレスなどが含まれた。気分状態の評価には、POMS(Profile of Mood States)が使用された。POMSでは、疲労を示す「Fatigue」や、活力を示す「Vigor」など複数の項目が評価された。

8週間後、Fatigueについて、シャタバリ群ではベースラインからの変化量においてプラセボ群との間に有意差が認められた(p=0.019)。また、4週時点ではVigorについても群間で有意差が認められた(p=0.021)。 ストレスについては、PSS(Perceived Stress Scale)を用いて評価され、シャタバリ群では4週および8週の時点で、プラセボ群と比較して有意な改善が認められた。 さらに、更年期症状を評価するMRS(Menopause Rating Scale)や、更年期に特化したQOL評価であるMENQOL(Menopause-Specific Quality of Life)などについても評価が行われた。本研究では、シャタバリ群において複数の評価項目で改善が報告されている。

安全性についても評価され、研究期間中、シャタバリ群とプラセボ群の間で、臨床検査値などに大きな問題は認められなかったと報告されている。

シャタバリの根には、ステロイド性サポニンなど複数の植物成分が含まれている。シャタバリに特徴的な成分として、シャタバリン類などがこれまでに研究されている。

メディカルハーブには、古くから利用されてきた植物だけでなく、これまで日本ではあまり知られていなかった植物にも、現代の健康課題につながる可能性がある。今後もこうした海外の研究にも目を向けながら、女性のライフステージや健康に役立つ可能性を持つ新しいハーブを開拓し、その特徴や研究成果を紹介していくことが、メディカルハーブの可能性を広げる上でも重要であるという可能性が示された。

【引用文献】

Mahajan S, Avad P, Langade J. Efficacy and Safety of Shatavari (Asparagus racemosus) Root Extract for Perimenopause: Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study. Int J Womens Health. 2025 Nov 3;17:4057-4073. doi: 10.2147/IJWH.S544267.
Photo: Dinesh Valke / CC BY-SA 2.0