2026.9.18

ローズマリーに含まれるカルノシン酸・カルノソール・ロスマリン酸の抽出条件と調製方法

学術委員

辻恵子

ハーブの抽出では、同じ植物を用いても、溶媒の種類や濃度、抽出時間、温度、植物材料と溶媒の比率などによって、抽出される成分量が異なる。 今回は、ローズマリーを対象に抽出条件を最適化した研究と、複数の調製方法による成分量を比較した研究を紹介する。

3つの主要な抗酸化成分を効率よく抽出するには

Oliveira GAR らは、ローズマリー(Rosmarinus officinalis)から、ロスマリン酸、カルノソール、カルノシン酸を効率よく抽出するため、固液抽出法の条件を検討した。

研究では、エタノール濃度、抽出時間、液体と植物材料の比率の3項目を変化させた。エタノール濃度は44.8~95.2%、抽出時間は4.8~55.2分、液体と植物材料の比率は4.6~21.4 mL/gの範囲で設定された。抽出物中の成分はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析された。HPLCは、液体試料に含まれる複数の成分を分離して、それぞれの成分量を測定する方法であり、本研究ではロスマリン酸、カルノソール、カルノシン酸の抽出量を比較するために用いられた。

3種類の成分について、抽出量と最終抽出物中の濃度を同時に最大化する条件を求めたところ、70%エタノール、液体と植物材料の比率5 mL/g、抽出時間55分が最適条件として示された。この条件での抗酸化成分の回収率は89.8%であり、最終抽出物中の抗酸化成分濃度は原料と比較して4.75倍となった。

調製方法による成分量の違い

Kallimanis P は、コモンセージ(Salvia officinalis)、ギリシャセージ(Salvia fruticosa)、ローズマリー(Salvia rosmarinus)の3種類について、異なる調製方法による成分量を比較した。

検討されたのは、浸出、煎出、乱流抽出、チンキ、オレオライトである。対象となったのは、カルノシン酸、カルノソール、ロスマノール、12-O-methylcarnosic acidなどのアビエタン型ジテルペンである。成分の分析には¹H-qNMR(定量プロトン核磁気共鳴法)が用いられた。¹H-qNMRは、成分が持つ水素原子の信号を利用して、抽出物にどの成分が含まれ、どのくらいの量があるのかを調べる分析法である。

水を用いた浸出と煎出を比較すると、3種類の植物では、煎出のほうが対象となったアビエタン型ジテルペンの含有量が高い結果となった。

煎出時間については植物によって違いがみられ、コモンセージとギリシャセージでは5分、ローズマリーでは15分が、カルノシン酸およびカルノソールの抽出において高い値を示した。

また、チンキでは保存に伴う成分量の変化についても調べられ、14日間の保存後にカルノシン酸などの主要成分の減少が確認された。ただし、成分によって保存中の変化は異なり、すべての成分が単純に減少したわけではなかった。

抽出条件からみるローズマリーの成分

今回紹介した2つの研究では、ローズマリーの抽出において、溶媒、抽出時間、植物材料と溶媒の比率、調製方法などの条件によって、抽出物に含まれる成分量が異なることが示されている。

ハーブの伝統的な調製法に加え、抽出条件と成分量、さらに調製後の安定性を科学的エビデンスに基づいて評価し、より適切な調製法や品質管理につなげるため、こうした研究をさらに進めていくことが望まれる。

【引用文献】

Oliveira Gde A, de Oliveira AE, da Conceição EC, Leles MI. Multiresponse optimization of an extraction procedure of carnosol and rosmarinic and carnosic acids from rosemary. Food Chem. 2016 Nov 15;211:465-73. doi: 10.1016/j.foodchem.2016.05.042. Epub 2016 May 7.

Kallimanis P, Magiatis P, Panagiotopoulou A, Ioannidis K, Chinou I. Extraction Optimization and Qualitative/Quantitative Determination of Bioactive Abietane-Type Diterpenes from Three Salvia Species (Common Sage, Greek Sage and Rosemary) by 1H-qNMR. Molecules. 2024 Jan 28;29(3):625. doi: 10.3390/molecules29030625.