2026.9.14

薄毛を自覚する成人における、発毛を促進する新規ノコギリヤシ(Serenoa repens)エキスの安全性と有効性:180日間の結果

学術委員

菊地伶弥

ノコギリヤシ(ソウパルメット:Serenoa repens)の果実油には、80〜85%の脂肪酸に加えて、ステロールや長鎖アルコールなどの微量成分が含まれている。ノコギリヤシの脂質ステロール抽出物は、主に遊離脂肪酸の作用によってⅠ型およびⅡ型の5α-リダクターゼを非競合的(アロステリック)に阻害することが報告されている。この5α-リダクターゼは、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)へと変換する酵素であり、ノコギリヤシがこの阻害作用を介して毛包や発毛にどのような影響を与えるかが注目されてきた。

これまでにも、ノコギリヤシを含む経口・外用製品について、毛髪の質や毛髪数、毛髪密度などへの効果が報告されている。2020年のシステマティックレビューでは、5件のRCT(ランダム化比較試験)と2件の前向きコホート研究が検討され、ノコギリヤシ含有製品による有益な結果が報告された一方、エビデンスの質は十分ではなく、ノコギリヤシ単独の効果を検証する大規模RCTが必要とされた。(1)

そこで本研究では、成分組成を規格化したノコギリヤシ抽出物「SEREVELLE」を使用し、薄毛を自覚している健康な成人男女60人(平均年齢50.0歳、男女各30人)を対象とした180日間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。被験者は、SEREVELLEの濃縮抽出物160 mg(うち生理活性脂肪酸105 mg)を含むカプセルを1日1回摂取する介入群40人と、外観が同一でパーム油を含むプラセボを摂取する対照群20人に無作為に割り付けられた。評価には高解像度トリコスコピーシステム*を用い、頭皮前部および後部の毛髪パラメータを評価した。 (2)

180日目における主要評価項目の結果、総終毛数の平均変化量は介入群で+18.6(対照群は-10.1、p<0.001)、総毳毛(うぶ毛)数は+6.6(対照群は-2.1、p<0.05)、総毛髪密度は+25.1(対照群は-12.2、p<0.001)であり、対照群比でそれぞれ283%、414%、306%の成長改善を認めた。サブグループ解析においても、男性(p<0.001)および閉経後女性(総終毛数p<0.05、総毛髪密度p<0.01)の双方で有意な改善が確認された。さらに、副次評価項目である総毛幹幅(p<0.01)および総毛包ユニット密度(p<0.05)も介入群で有意に上昇した。安全性に関しては、試験期間を通じて製品との因果関係が認められる局所的または全身性の有害事象は報告されなかった。

結論として、独自の規格化ノコギリヤシ果実脂肪酸エキスを180日間毎日経口摂取することにより、薄毛を自覚する成人男女の毛髪数、毛髪密度、毛幹幅、および毛包ユニット密度などの複数の指標において有意な改善が認められた。

[文献]

  1. Evron E, et al. Natural Hair Supplement: Friend or Foe? Saw Palmetto, a Systematic Review in Alopecia. Skin Appendage Disord. 2020;6(6):329-337. doi:10.1159/000509905.
  2. Ablon G. The Safety and Efficacy of a Novel Saw Palmetto (Serenoa repens) Extract for Promoting Hair Growth in Adults With Self-Perceived Thinning Hair: 180-Day Results. J Cosmet Dermatol. 2026;25(2). doi:10.1111/jocd.70717.

*高解像度トリコスコピーシステムとは、ダーモスコープという特殊な拡大鏡(マイクロスコープ)を用いて頭皮や毛髪を鮮明に観察する検査装置である。髪の太さや毛穴、頭皮の赤みなどを確認し、AGAや円形脱毛症などの診断を補助する。