2026.6.18

家庭菜園で芳香性ハーブを栽培する地域ベースの介入研究が、食事および尿中のナトリウムの変化に及ぼす影響

学術委員

辻恵子

近年、日本でもハーブや家庭菜園を健康づくりに活用する取り組みが広がっている。高齢者施設での園芸活動、市民農園を通じた介護予防、ベランダ菜園による食育など、植物を育てる行為を身体・心理・社会的健康につなげる実践が増えている。一方で、ハーブ栽培を「減塩行動」に直接結びつけた研究はまだ少なく、新しい生活習慣介入として注目される可能性がある。

今回紹介する論文は、家庭で香草ハーブを育てることによって食塩摂取量を減らせるかを検討した地域介入研究である。メキシコで実施され、高血圧や心血管疾患の主要因である塩分過多に対し、ハーブを塩の代替として活用する生活改善プログラムの効果を評価した。

研究対象は地域住民の家族で、家庭菜園キットが配布された。使用されたハーブはコリアンダー、オレガノ、タイム、エパソーテ、チャイブ、バジルの6種類であった。これらは香りが強く料理の風味を高めるため、塩や調味料の使用量を減らす目的で選ばれた。参加者はこれらを自宅で栽培しながら、料理教室や栄養教育も受け、「ハーブを使った減塩調理」を実践した。

効果の評価には、24時間尿中ナトリウム排泄量という客観的指標と食事調査が用いられた。介入後には、ナトリウム摂取量および尿中ナトリウム排泄量の減少傾向が観察された。一方で、対象人数が少ないことや対照群がないことなどから、効果の解釈には慎重さも必要とされた。

結果として、参加者はハーブの使用によって料理の満足感を保ちながら塩の使用量を減らす傾向を示した。また、家庭菜園を通じて食への意識が高まり、健康的な食行動への前向きな態度や家族参加の促進も報告された。植物を育てる経験が、単なる栄養指導だけでは得られにくい継続的な行動変容につながる可能性が示唆された。

さらに、小規模なスペースでも栽培可能であり、都市部でも導入しやすい点は実践上の利点と考えられた。一方で、対象規模が限られていることや、料理教室・栄養教育など複数の介入要素の影響を完全には分離できない点など、研究としての限界も指摘された。

しかし本研究は、コリアンダー、オレガノ、タイム、エパソーテ、チャイブ、バジルといった6種のハーブを用いた家庭菜園と料理教育の組み合わせが、ナトリウム摂取量低下につながる可能性を示し、「おいしく減塩する」ための現実的な生活介入となり得ることを示唆した点で重要である。日本においても、食育や地域健康活動への応用の可能性が期待される。

Baston M, Hernández-F M, Vázquez K, Ruiz-Morales M, Mehner-Karam P, Sil-Acosta M, Acevedo N, Granich-Armenta A, Holz K, Cantoral A. A community-based intervention study involving family gardens with aromatic herbs on changes in dietary and urinary sodium. BMC Nutr. 2024 Feb 26;10(1):33. doi: 10.1186/s40795-024-00841-1. PMID: 38409182; PMCID: PMC10895754.