疲労の症状管理における人参および人参含有漢方製剤:システマティックレビューおよびメタ解析

疲労は、一般人口の5~20%に影響を及ぼす公衆衛生上の重要な課題である。特に慢性疾患患者やがんサバイバーでは有病率が高く、生活の質(QOL)の低下、医療費の増加、生産性の損失などを引き起こすことが知られている。現在、運動療法や認知行動療法などが推奨されているが、専門家不足、コスト、継続の難しさなどの課題がある。また、メチルフェニデートやパロキセチンなどの薬物療法についても、有効性が限定的であることや副作用の懸念が指摘されている。
一方、朝鮮人参( Panax ginseng、オタネニンジン)を含む人参類には、ジンセノサイド、多糖体、タンパク質などの生理活性成分が含まれており、抗酸化作用、抗炎症作用、炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-αなど)の調節、酸化ストレス経路(Nrf2-ARE)の活性化などを介して、抗疲労作用を示す可能性が報告されている。人参は Panax 属の複数種を含む総称であり、本論文では Panax ginseng C.A. Mey.(中国人参*および朝鮮人参)と Panax quinquefolius L.(アメリカ人参)が、補完代替医療(CAM)領域において疲労管理に広く用いられる主要種として説明されている。
本研究は、朝鮮人参が疲労に及ぼす影響について、既存のランダム化比較試験(RCT)を統合解析したシステマティックレビューおよびメタ解析である。 主疾患、疲労の原因、持続期間、地域、民族背景による制限は設けていない。介入には、中国人参、朝鮮人参、アメリカ人参などの単独人参製剤に加え、中医学(TCM)の古典処方に基づく人参含有漢方製剤が含まれていた。治療期間は2~16週間であり、人参の用量は125 mg~9 g/日と幅があったが、多くの研究では2~3 g/日程度が用いられていた。
メタ解析の結果、朝鮮人参を含む各種人参製剤の摂取は、全般的な疲労を安全に軽減し、生活の質(QoL)を向上させる有効な手段であることが示された(p = 0.05)。当初の全体解析では統計的な異質性が高く、有意な改善は認められなかったが(SMD: −0.36; 95% CI: −0.82~0.11; p = 0.13)、特定の1研究を除外した感度分析により異質性が解消(I²=2%)された結果、対照群と比較して疲労症状を有意に改善することが確認された(SMD: −0.23; 95% CI: −0.35~ −0.10; p = 0.0003)。
また、サブグループ解析においても、特定の疾患に基づかない全般的な疲労(SMD: −0.48; 95% CI: −0.71~−0.25; p < 0.0001)や、一般人口の慢性疲労(SMD: −0.30; 95% CI: −0.56~−0.03; p = 0.03)への効果が認められたほか、人参単独よりも人参含有漢方製剤においてより顕著な疲労減少が認められた(SMD: −0.39; 95% CI: −0.66~−0.13; p = 0.004)。有害事象の発生率においては、対照群との有意な差はなく(RR: 0.98; 95% CI: 0.88~1.09; p = 0.71)、安全性上の懸念は認められなかった。
結論として、このシステマティックレビューおよびメタ解析により、朝鮮人参を含む人参製剤は、疲労症状を有する患者において、疲労の改善に寄与する可能性が示された。今後、朝鮮人参が疲労に及ぼす全般的な影響を評価するためには、長期的な影響やより信頼性の高い測定方法を用いたさらに厳格な臨床試験が求められる。
[文献]
Li X, et al. Ginseng and Ginseng Herbal Formulas for Symptomatic Management of Fatigue: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Integr Complement Med. 2023;29(8):468-482. doi:10.1089/jicm.2022.0532.
*原文まま。本レビューにおける 「中国人参」は、Panax ginseng C.A. Meyer(オタネニンジン)を指し、朝鮮人参と同一種である。両者は主に加工・乾燥方法の違いによって区別されている。





