2026.3.25

ペパーミントの月経障害への効果: 無作為化比較試験のシステマティックレビュー

学術委員

菊地伶弥

世界中の生殖年齢にある女性の多く(約45~99%)が無月経、不正子宮出血、月経困難症、月経前症候群(PMS)等の月経障害に苦しんでいる。ペパーミント(Mentha x piperita)は古代より月経促進や月経痛緩和に用いられてきたハーブであり、現代の研究においても抗酸化作用、抗炎症作用、抗菌作用、鎮痙作用、鎮痛作用、抗不安作用などの多様な薬理作用を有することが報告されている。

作用機序として、主要成分であるメントールはTRPM8受容体の活性化や電位依存性カルシウムチャネルへの作用を介した平滑筋弛緩、ならびに神経伝達物質の調節に関与すると考えられており、これらの作用が疼痛や不快症状の軽減に寄与する可能性が示唆されている。さらに中枢神経系においては、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の阻害作用や、興奮性神経伝達に関わるNMDA受容体への拮抗、ニコチン受容体との相互作用などが報告されており、これらが月経周期に伴う認知機能の変動や情緒的苦痛の軽減に関与している可能性が指摘されている。

本研究では、5件の無作為化比較試験(RCT)が抽出され、合計499名の参加者を対象としてペパーミントの月経障害に対する効果が検討された。月経開始とともにペパーミント抽出物カプセルを経口投与する介入が行われており、投与量や投与回数は研究ごとに異なるものの、187mg程度のカプセルを1日数回、3〜5日間投与するプロトコルが報告されている。

主要評価項目である痛みの強さ(VAS 0–10)においては、個別研究ではペパーミント群が4.51±2.38、プラセボ群が6.62±2.19と報告され、プラセボ群と比較して有意な鎮痛効果が認められている(p<0.05)。また、標準的な鎮痛薬であるメフェナム酸(1回250mg)との直接比較試験では、痛みの軽減効果について両群の間に有意差が認められなかったことが報告されている。

随伴症状についても改善が報告されており、個別研究では吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状の軽減が認められている。例えば、ある無作為化比較試験では下痢(p=0.005)、吐き気(p=0.02)、疲労感(p=0.001)などの症状が対照群と比較して有意に低下したことが報告されている。これらの効果は、メントールによるTRPM8受容体の活性化やカルシウムチャネル調節による平滑筋弛緩作用、ならびに中枢神経系における神経伝達系への影響など、複数の生理学的機序が関与している可能性が考えられている。

安全性については重大な有害事象は報告されておらず、軽度の胸焼けなどの軽微な副作用がみられる程度であったとされている。個別研究の報告では、副作用による試験脱落率がペパーミント群4.8%、プラセボ群12.7%とされた例もあり、全体として良好な忍容性が示されている。

以上の臨床的知見を総合すると、ペパーミントは末梢の平滑筋弛緩作用と中枢神経系への作用の双方を通じて、疼痛や不快症状の軽減に関与している可能性が指摘されている。ただし、研究数はまだ限られており、投与量や投与期間にも研究間で差があることから、今後さらに大規模で質の高い臨床研究による検証が必要であると考えられる。

[文献]
Lagzian Y et al. The effects of peppermint on menstrual disorders: A systematic review of randomized controlled trials. Iran J Nurs Midwifery Res. 2025;30(6):777-784. doi:10.4103/ijnmr.ijnmr_283_23.