2026.2.21

成人のうつ病治療におけるセントジョーンズワート抽出物の有効性と安全性:SSRI との比較によるランダム化臨床試験のメタ解析

菊地伶弥

現在、うつ病は世界において全年齢層で最も一般的な精神疾患の一つである。うつ病に関連する臨床症状としては、頻繁な気分の変動、持続的な悲しみ、不安、食欲減退、イライラ、不眠、あらゆる活動への興味や喜びの喪失などが挙げられる。大うつ病性障害は、前頭葉の機能不全、神経ネットワークの変化、その他の認知機能障害と関連している。

うつ病の主な治療法には、薬物療法、心理療法、行動療法があり、薬物療法では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が第一選択として広く用いられている。また、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)やノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)なども使用されている。しかし、これらの薬剤はめまい、消化不良、下痢、視覚異常、口渇などの副作用を伴うことが報告されており、近年では副作用が比較的少ないとされるセントジョーンズワート(Hypericum perforatum:SJW)抽出物が、うつ病治療の代替手段として注目されている。

本研究は、成人の軽度から中等度のうつ病に対するSJW抽出物の有効性と安全性を、抗うつ薬(SSRI)と比較したメタ解析である。14件の臨床試験、合計2270名のうつ病患者を対象として解析が行われた。各臨床試験における治療期間は4週間から12週間の範囲であった。

SJWとプラセボの比較では、SJW群は有意に抑うつ症状の改善を示した。統合オッズ比は0.72(95%CI 0.64–0.81)、p=0.009であった。リスク比は0.46(95%CI 0.26–0.83)、p=0.00001と報告され、SJWはプラセボより明確に高い有効性を示した。

SJWとSSRIの比較では、SJWはSSRIと同等、またはそれ以上の改善効果を示した。統合オッズ比は2.44(95%CI 1.33–4.45)、p=0.004であり、リスク比は1.39(95%CI 1.09–1.76)であった。

SJWの投与量は300〜1800 mg/日の範囲であり、比較対象となったSSRIにはフルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラムなどが含まれていた。安全性に関しては、SJW群は副作用による中止率がSSRI群より低く、重篤な有害事象はほとんど報告されなかった。

以上より、SJWは軽度から中等度のうつ病に対して、標準的抗うつ薬と同等以上の有効性を示し、副作用が少ない比較的安全な治療選択肢であることが示された。

[文献]

Zhao X et al. The efficacy and safety of St. John’s wort extract in depression therapy compared to SSRIs in adults: A meta-analysis of randomized clinical trials. Adv Clin Exp Med. 2023;32(2):151‑161. doi:10.17219/acem/152942.