「野生ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)の季節変動:代謝関連障害に対する多機能性成分の可能性」

ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)は地中海原産の常緑性ハーブであり、料理の香りづけや伝統医療に広く利用されてきた。葉には抗酸化作用や抗炎症作用、血糖調整作用などの生理活性があり、精油や抽出物は食品や化粧品、機能性食品にも応用されている。成分の量や種類は季節や生育環境によって変化するため、収穫時期によって健康効果が大きく異なることが知られている。
本研究では、ローズマリーを春・夏・秋・冬に収穫し、それぞれの抽出物に含まれるフェノール類やフラボノイドの量および種類を比較するとともに、抗酸化作用、抗炎症作用、血糖調整作用、抗菌作用、紫外線防御作用、がん細胞に対する作用などの生物活性を評価し、最も効果的な収穫時期を明らかにすることを目的とした。抽出物はエタノールで作製し、各種の作用は細胞や酵素を用いた実験で評価した。
分析の結果、全ての季節でルテオリン、カンペフェロール、ルチン、ビオカニンAなどのフラボノイドが検出されたが、その含量には季節による差が認められた。特に秋に収穫したローズマリーは最も多くの成分を含み、次いで春、夏、冬の順であった。抗酸化作用、すなわち体の老化や細胞の損傷を防ぐ力も秋の抽出物で最も強く、春も比較的高い活性を示した。一方、炎症を抑える作用は冬の抽出物で最も高く、強力な鎮痛・抗炎症作用を持つ非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の代表的な有効成分であるジクロフェナクに匹敵する効果が観察された。このことから、作用の種類によって最適な収穫時期が異なることが示唆された。
その他の作用については、血糖に関わる酵素の働きを抑える血糖調整作用は全体的に弱いが、春の抽出物でやや顕著であり、抗菌作用は弱めであった。紫外線から肌を守る力は全季節で一定の効果を示し、がん細胞に対する抑制作用は中程度であった。安全性の確認では、最大投与量でも有害な影響は認められなかった。
以上より、ローズマリーの化学成分や生物活性は季節によって大きく変動することが明らかとなった。特に秋に収穫した抽出物は抗酸化作用が高く、健康効果の観点で最適であると考えられる。一方、炎症を抑える力は冬に強くなる傾向があり、作用の種類に応じて収穫時期を選定することが重要である。本研究は、ローズマリーを食品や化粧品、薬用製品に利用する際の収穫戦略の指針を示すものであり、季節に応じた収穫により有効成分を最大限に活用できることを明らかにした。
【引用文献】
Kherraz K, Guelifet K, Benmohamed M, Rastrelli L, Khattabi L, Bendrihem AK, Ferhat A, Ferhat MA, Aggoun K, Jafari DA, Sawicka B, Harchaoui L, Zahnit W, Zeraib A, Messaoudi M. Seasonal Variation in Wild Rosmarinus officinalisL.: Phytochemicals and Their Multifunctional Potential Against Metabolic Disorders. Molecules. 2026 Jan 8;31(2):220. doi: 10.3390/molecules31020220.





