大学生におけるタイム葉の経口投与が記憶、不安、抑うつおよび睡眠の質に及ぼす影響:ランダム化比較試験

海外の一部地域で、大学生の不安、抑うつ、睡眠障害が多く、記憶機能や学業成績への影響が問題となっている。一部では認知機能向上を目的とした刺激薬の使用もみられると報告されている。こうした背景から、認知機能や精神状態を穏やかにサポートする方法への関心が高まっている。タイム(Thymus vulgaris)は伝統的に食用および薬用として利用されてきた植物であり、記憶機能や精神状態に有益な作用を有する可能性が示唆されている。本研究は、タイム葉摂取が大学生の記憶機能、不安、抑うつおよび睡眠の質に及ぼす影響を評価することを目的とした。
19~23歳の大学生106名を対象にランダム化二重盲検比較試験(RCT)を実施した。 タイム群(53名) には乾燥タイム葉粉末500 mgカプセルを1日2回(1日1,000 mg)、プラセボ群(53名)にはデンプンカプセルを1か月間投与した。 評価には前向き・後ろ向き記憶質問票(PRMQ:Prospective and Retrospective Memory Questionnaire)、病院不安・抑うつ尺度(HADS:Hospital Anxiety and Depression Scale)およびピッツバーグ睡眠質問票(PSQI:Pittsburgh Sleep Quality Index)を用いた。介入前の背景因子、不安、抑うつおよび睡眠状態に群間差は認められなかった。
結果として、タイム群では記憶機能、不安、抑うつおよび睡眠の質の改善が認められた。PRMQ総得点は34.21±2.3から30.42±3.2へ低下し(p=0.002)、前向き記憶(展望的記憶)は19.61±2.3から18.32±1.1へ(p=0.003)、後向き記憶(回顧的記憶)は17.21±2.6から14.81±1.1へ改善した(p=0.002)。一方、プラセボ群では有意な変化は認められなかった。
精神状態の評価では、不安スコアが7.33±0.8から5.82±0.6へ低下し(p=0.003)、抑うつスコアは5.85±0.8から4.31±0.5へ低下した(p=0.002)。不安状態の分類では介入後に群間差が認められ(p=0.04)、正常範囲の学生割合は51.0%から75.5%へ増加した。一方、抑うつ状態の分類では群間差は認められなかった(p=0.87)。
睡眠評価では、PSQI総得点が5.14±1.2から4.01±0.5へ改善した(p=0.002)。また、入眠潜時は1.11±0.2から0.62±0.1へ短縮した(p=0.001)。一方、睡眠時間には有意な変化は認められなかった(0.79±0.1→0.82±0.1、p=0.53)。プラセボ群では睡眠関連指標に有意な変化は認められなかった。 安全性については、試験期間中にタイム摂取に関連する有害事象は報告されなかった。
結論として、タイム葉を安全な量で日常の食事に取り入れることで、大学生の前向き記憶および後向き記憶が向上し、不安および抑うつ症状が軽減するとともに、睡眠の質が改善される可能性が示された。これらの結果から、タイム葉は大学生における刺激薬使用に代わる選択肢となる可能性がある。
【文献】
Alqudah A, et al. Effects of orally administered Thymus vulgaris leaves on memory, anxiety, depression, and sleep quality in university students: a randomized controlled trial. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2023;27(22):10806-10814. doi:10.26355/eurrev_202311_34447