2026.9.13

日本のハーブ:ミシマサイコ

昭和薬科大学 薬用植物園 薬用植物資源研究室 研究員

佐竹 元吉

サイコを筑波の薬草園で栽培したことがある。盛夏には黄色の花が一面に咲いた。多くの昆虫が蜜を吸いに集まってくる。よく見るとスズメバチの仲間が散見された。秋に根を収穫するので、果実の結実を待った。1年生のサイコは根が細いが、2年生は太いものが収穫された。

1. ミシマサイコの特徴

ミシマサイコの根茎は太く短い肥厚する根がある。茎は直立、高さ40〜70cm、上方分枝する。根葉は基部柄状に細くなり柄と共に長さ30〜70cm、上方分枝する。茎葉は広線形から狭披針形で数個の平行する脈あり、長さ4〜10cm、幅5〜15mm、緑色、やや厚く硬く、鋭尖頭で短芒に終り、基部は長く次第に細くなり無柄。大散形花序は多数で2〜7個の枝があり、総苞片は長き約15mm、線条披針形、枝より甚だ短く、小散形花序は5〜10花、小総苞片広線形から長楕円形で、長さ2.5〜4mmの果時の小梗より短い稍急鋭尖頭、帯黄色、ガク歯牙はない。花弁は黄色で、先端は内曲し、花盤は平坦、花柱は短く、柱頭は扁平。柱頭が花弁から抽出してから、4〜5日目に雄蕊が出る。果実は左右より扁平、合生面は凹入し、分果は断面が五角形、肋は太い、油管は各溝に1個ある。分果柄は2裂。果実は楕円形、長さ3.5〜4mm。

2. 生薬:サイコ(柴胡)の特徴

サイコ(柴胡)、第十八改正日本薬局方 収載 Bupleurum Root BUPLEURI RADIX 基原はミシマサイコ Bupleurum falcatum Linné(Umbelliferae セリ科)の根で、定量する時、換算した生薬の乾燥物に対し、総サポニン(サイコサポニンa及びサイコサポニンd)0.35%以上を含む。

生産地は日本(宮崎、鹿児島、熊本、茨城県)及び中国で栽培される。

性状は、細長い円錐形〜円柱形をなし、単一または分枝し、長さ10〜20cm、径0.5〜1.5cm、根頭には茎の基部をつけていることがある。外面は淡褐色〜褐色で、深いしわのあるものがある。折りやすく、折面はやや繊維性である。横切面をルーペ視する時、皮部の厚さは半径の1/3〜1/2で、皮部にはしばしば接線方向に長い裂け目がある。

3. 学名について

中国には近縁植物で、日局正品のマンシュウミシマサイコ Bupleurum chinense(北柴胡)、B. scorzonerifolium(南柴胡)、日局正品でない B. marginatum(竹葉柴胡)、B. longiradiatum ホタルサイコなどが分布する。 カワラサイコ Potentilla chinensis、ノダケ Angelica decursiva は正品ではない。

4. 生育特性

関東以西に広く分布する。江戸時代に三島で土産ものとして、販売されていた。富士山噴火の火山灰地に見舞われた。山地の草原に広く分布し、伊豆半島から箱根、丹沢、御殿場の山地から愛鷹山系では、稍大形の柴胡が栽培されて、キュウシュウサイコと知られていたが、市場には見られない。

福岡の平尾台や秋吉台の石灰岩地、高知の蛇紋岩地には葉の形態が異なる種のミシマサイコが見られる。

① ミシマサイコ ② ミシマサイコ ③ 生薬 ミシマサイコ(一年) ④ 生薬 サイコ(北) ⑤ 生薬 サイコ(天津) ⑥ 生薬 サイコ(北) ⑦ ミシマサイコ

[写真提供] ①②:昭和薬科大学 薬用植物園 中野 尚夫 氏 ③④⑤⑥:株式会社栃本天海堂 栃本 泰司 氏 ⑦:昭和薬科大学 薬用植物園 園長 中根 孝久 氏

昭和薬科大学 薬用植物園 薬用植物資源研究室 研究員
佐竹 元吉 さたけもとよし
当協会顧問。沖縄美ら島財団研究顧問。1964年東京薬科大学卒業。国立医薬品食品衛生研究所生薬部部長、お茶の水女子大学生活環境研究センター教授、富山大学和漢医薬学総合研究所・お茶の水女子大学客員教授を歴任。著書『第17改正 日本薬局方生薬等の解説書』(共著・廣川書店)他。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第76号 2026年6月