エコロジカルガーデニングデザイン
夏は雑草も旺盛に生育します。雑草との共存を目指すには、
雑草の役割を十分に理解することが大切です。
今回は雑草との共存の第2弾で、雑草の一石七鳥の役割について解説します。
第21回 雑草との共存 その2 雑草の役割

question
- 雑草が生えて困っています。どうしたらよいですか?
- 雑草が生えていて何かよいことがあるのでしょうか?
- 雑草に養分を取られて生育が悪くなったりしませんか?
- 雑草は病害虫の巣にならないのですか?

地球環境に負荷をかけないエコロジカルハーバリズムに基づくガーデニングデザインでは、生態系、すなわち生物多様性と循環を大切にしています。雑草が生えていれば、おのずと生物多様性が豊かになります。また、循環のカギともいえる土壌中の小動物(ミミズやダンゴムシなど)や微生物(カビやバクテリア)は、植物の根の周りにたくさん棲んでいます。従って、砂漠には土壌生物が棲めないように、植物の生えていない裸地にすると、土壌生物は減っていきます。育てている植物の足元に土が見えているようでは、砂漠に木が1本だけ立っている状態です。豊かな生態系のもとで育てるには、裸地にせず、生きた草で地面を覆う必要があり、これに雑草が大きく貢献します。
雑草の一石七鳥の役割
雑草には表に示す七鳥の役割があり、考え方や活用の仕方によってはまだまだ増えると思います。
これらの役割を果たす植物は、それぞれに名称があって、サステイナブルアグリカルチャー(持続型農業)やリジェネラティブアグリカルチャー(環境回復型農業)の場面でも実践として植栽されています。詳細は、前号の本記事の表「混植に用いる植物の作用と例」(75号P.35)をご参照ください。
雑草の役割の中で、エコロジカルハーバリズムで特に大切にしているのは、五鳥目のナースプランツと七鳥目のリビング保存食/リビング救急箱の役割です。
五鳥目のナースプランツは、風や病害虫といった物理的、生物的環境から身を守ってくれると同時に、土壌中の生物多様性を豊かにして土づくりをしてくれる総合的なざっくりとした意味合いをもつ名称です。従ってナースプランツといってしまえば、一鳥目から六鳥目までの役割を網羅しているといってよいでしょう。
七鳥目のリビング保存食とは、いざという時の非常食を乾パンや缶詰などではなく、生鮮食料として、生きたまま保存しようという考えです。常に生やしておくべき食べられる雑草の、人間に対する直接的で最も大きな、エコロジカルな役割と考えています。これは、江戸時代の「かてもの(糧物、糅物)」から学ぶ備える家庭菜園の考えからきています。「かてもの」とは、もともとは主食の米の増量材となるダイコンやカブ、雑穀、豆、干し菜、干し芋、海藻などを指す言葉で、その後、江戸時代には救荒作物を指すようになります。米沢藩9代目藩主の上杉鷹山は、天明の飢饉(1783)の際に、中条春庵、矢尾板安丈他、米沢藩医14名に命じて、救荒作物をまとめた『飯粮集(はんろうしゅう)』(1783)を執筆させます。これによって、藩下の各家庭の生垣に棘のあるヒメウコギを植えさせ、いざという時にそれを食べるよう奨励して飢饉に備えました。しかし、いざ飢饉になると、ウコギでは足りずに、誤って毒草を食べて亡くなるケースも多くあったようです。そこで、鷹山は新たに、重臣の莅戸善政(のぞきよしまさ)に命じて『かてもの』(1800)を執筆させます。これは、飢饉の際の食べ物の解説書で、不断から植物を生きた状態で備蓄をして飢饉に備えることを普及させる役割と、飢饉の際の中毒死を防ぐための指南書としての役割がありました。これにより、天保の大飢饉を乗り切ったとされています。
他にも、一関藩医の建部清庵(たけべせいあん)は、『備荒草木図(びこうそうもくず)』(1833)の中で「四木一草」と呼ばれる、柿、栗、桑、棗、菜の花の栽培を各家庭に奨励して、飢饉に備えるよう指南しました。これらの「かてもの」としての役割を果たす食べられる雑草を現代風に「リビング保存食」と名づけました。現代でも災害に備えて食べられる、あるいは薬の代わりになる多様な雑草を不断から生やして、季節ごとに利用していざという時に備えることが大切です。そのためには、兎に角、雑草を見分けられることと、有毒植物を知ることが何より大切になります。有毒植物については、次々号以降で解説予定です。また、雑草といえども多様性を失うこともあります。単一雑草だけでモノカルチャー(単一栽培:同じ種類の植物だけを栽培すること)になっては意味がありません。モノカルチャー化しやすい雑草の代表が、メヒシバやオヒシバ、エノコログサ、スズメノカタビラなどのイネ科雑草です。これらの管理方法については、次号で紹介します。
表 雑草の一石七鳥の役割
| 鳥目 | 対策対象 | 役割を表す名称 | 具体的役割 |
| 一鳥目 | 病害虫管理 | トラッププランツ trap plants (害虫食料植物) | トラッププランツ(=害虫に食べられやすい植物)が生える ⇒ 害虫の食料が増える ⇒ 虫害を希釈する |
| 二鳥目 | 病害虫管理 | リビングウォール植物 living wall plants /社会的距離創出植物 making social distancing plants | 社会的距離創出植物(=育てている植物の間の違う種類の植物) ⇒ 植物の間に生える ⇒ 病害虫蔓延を阻止する リビングウォール植物(=畑の周囲で壁を形成する背の高い植物)が生える ⇒ 畑の周囲に壁を作る ⇒ 風よけやアブラムシ飛散防止などになる |
| 三鳥目 | 病害虫管理 | インセクタリープランツ insectary plants (天敵温存植物) | インセクタリープランツ(天敵の餌となる害虫のつきやすい植物)が生える ⇒ 害虫を餌とする天敵が寄って来る ⇒ 天敵を増やして棲まわせる |
| 四鳥目 | 土作り | ヘルスバロメータプランツ health barometer plants (健康指標植物) | ヘルスバロメータプランツ(水がないと真っ先に萎れたり、窒素がないと真っ先に黄ばむ植物)が生える ⇒ 土壌の養水分の状態を知ることができる ⇒ 植物の健康維持のためのバロメータとなる |
| 五鳥目 | 総合 | ナースプランツ nurse plants (看護植物・救護植物) | ナースプランツ(周りの環境や他の生物などから守ってくれる)が生える ⇒ ①土の乾燥を防ぐと共に根の周りに土壌微生物が棲み、土作りをしてくれる ⇒ ②病害虫や風などから守ってくれる |
| 六鳥目 | 土作り | リビングマルチ植物 living mulch plants /土壌生物温存植物 soil organisms keeping plants | リビングマルチ植物(土壌被覆してくれる生きた植物)もしくは土壌生物温存植物(土壌生物の棲み家となる根を生やす植物)が生える ⇒ ①マルチ効果で乾燥を防ぐ ⇒ 灌水が不要になる ⇒ ②土壌の乾燥を防ぐと共に雑草の根やその周辺に土壌微生物が棲みつく ⇒ 土壌生物の数や種類を増やす ⇒ 土を豊かにする |
| 七鳥目 | いざという時の「かてもの」、救急箱 | リビング保存食 living preserved food /リビング救急箱 living first aid kit | リビング保存食(いざという時の生鮮食料となる食べられる植物)やリビング救急箱(いざという時のみどりの救急箱となる植物)が生える ⇒ 災害時や飢饉への備えとして、食べられる葉や薬の代わりになる植物を生きたまま保存する ⇒ かてもの(糧物)やみどりの救急箱の役割を果たす【※不断から利用して食べ方、使い方を知っておくことが大切】 |
雑草との共存で懸念されることとその対応
雑草との共存を考える上で懸念される主なことと、それに対する対応は以下の通りです。
(1)病害虫の巣になる
市民農園などで雑草を生やしておくと周りに迷惑がかかるので注意されるなどの話をよく耳にします。その理由の第一が、病害虫の巣になるというものです。雑草に限らず、植物が植わっていること自体が、病害虫の巣になるわけで、特に、モノカルチャーで栽培すれば、そこから放たれる匂いや視覚的にご馳走と認識されるなどで害虫獣が大量に押し寄せ、格好の餌食になります。また病気も次々と伝染してあっという間に蔓延してしまいます。
雑草には表に示した一鳥目〜三鳥目、五鳥目の役割があります。まず、一鳥目の役割として、雑草が害虫の食料になるということがあります。害虫の好きな雑草が生えれば、それが食べられます。穴だらけの雑草があったら、絶対に取り除いてはいけません。もし取り除いたら、害虫はいなくなりませんので、害虫はそれ以外の自分の育てている植物などしか餌が無いことになります。取り除けば被害が拡大することになります。穴だらけの雑草のお蔭で、自分の育てている植物の被害が希釈されることになります。次に、二鳥目あるいは五鳥目の役割として、自分の育てている植物の周りに色々な雑草が生えることで、視覚的に敵から身をくらませる役割や、育てている植物の出す害虫を誘引する香りを希釈させる役割、アブラムシが風で飛ばされてくるのを防ぐ役割、発生し病気の蔓延を防ぐ役割などがあり、病害虫の巣になるのを防いでくれます。さらに、三鳥目の役割として、害虫のたかりやすい雑草があると、その害虫を食べるために天敵が寄って来て、その天敵が育てている植物もパトロールしてくれます。
以上のように、自分の育てている植物が雑草のお蔭で守られていると考えて、雑草をナースプランツと思って、共存しましょう。
(2)養水分を奪われる
養水分を奪われる懸念も尤もで、実際、雑草も養水分を吸収しています。ただし、そこは奪われると考えるのではなく、一緒に育て、食べるなどの活用をして自分の育てている植物にプラスして利用するという気持ちがまずもって大切です。その上で、雑草による病害虫管理の役割はもちろんのこと、裸地を防ぐことによる土作りの役割のあることを強く認識するべきです。
まずは、四鳥目の役割として、雑草などたくさんの種類の雑草が生えていることで、根の浅い植物や乾燥に弱い雑草、窒素が不足すると葉の色が薄く黄ばむ雑草などのお蔭で、窒素が足りなくなっているとか、特にプランターでは土が乾燥気味とかなど、土壌中の養水分の状態を知るバロメータになります。
また、六鳥目の役割として、雑草で地面が見えなくなることによって、地下水が雑草の根を通して蒸散して朝露などで土壌表面を濡らし、葉によって太陽光を遮ることで、土の表面まで常に湿った状態を維持して土壌が乾くことがありません(プランター栽培を除く)。また、土が常に湿っていることとあわせて、雑草の根の周りに有用生物がたくさん棲みつき、それらが土壌の物理性、化学性を改善して土づくりをしてくれます。雑草の背が高くなって育てている植物の光合成を妨げるようになったり、イネ科雑草がはびこってモノカルチャーになってきたら、雑草を切るだけで、根を残すことが極めて重要です。
(3)光合成を妨げられる
雑草が草丈を高くしたり、自分の育てている植物に巻き付いたり覆いかぶさったりしてきたら、光合成が妨げられて生育不良になり、枯死する場合もあります。特に、畑は栄養分が豊富ですので、道端の雑草に比べてかなり巨大になります。これは雑草との共存の上で避けられないことで、人為的管理が必要になりなります。この場合、背が低くなるように、抜かずに切るなどの雑草管理を定期的に行う必要があります。
(4)生育が抑制され制圧される
アレロパシーの強い雑草や繁殖力の旺盛な雑草の場合、雑草でモノカルチャーになる可能性があります。それでは生物多様性を喪失することになってしまいますので、生物多様性を維持するために選択的除草を行って雑草を管理します。
雑草の具体的な管理方法については、次号で紹介いたします。

エコロジカルガーデンのイヌタデ。バッタやハムシの被害で穴だらけの雑草には、一鳥目の害虫食料植物や三鳥目のインセクタリープランツなどの役割があるので除去しない。除去すると、バッタやハムシはいなくならないので、彼らの食べるものは自分の育てているものしかなくなり、被害が増大する。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第76号 2026年6月
