2023.1.23

肥満男性における高炭水化物摂取後の血中代謝物に対するシナモンとトウガラシの有益な働きについて

日本メディカルハーブ協会学術委員

河野加奈恵

これまで、肥満や2型糖尿病患者に対しては様々な食事療法が推奨されてきた。特にマクロ栄養素の摂取については、過去10年、炭水化物を制限し脂質を中心とした低カロリー食、低脂肪の高炭水化物食など推奨される食事療法が大きく変化し、現在は低炭水化物の高脂肪食が再び注目されている。

シナモン(Cinnamomum verum)とトウガラシ(Capsicum annum)は、その糖代謝における作用が広く研究されている身近な伝統的スパイスである。シナモンは、グルコースと脂質代謝経路の制御遺伝子の発現を変化させ、炎症性プロスタグランジンやインターロイキン、および一酸化窒素の産生を減少させることにより、血糖調整、高脂血症、およびインスリン抵抗性を改善することが多くの研究により実証されている。トウガラシに関しても、主にカプサイシン、カプシエイト、およびカプシノイドなどの活性物質が満腹感やエネルギー消費を促進し、糖尿病患者においてインスリン感受性とアディポネクチンを増加させてグルコース代謝を改善するなど、抗肥満・抗糖尿病特性を有することがわかっている。

この度行われた臨床試験は二部に分かれ、第一部では、高炭水化物食と標準炭水化物食の2種類の食事の食後の血漿中の代謝産物の変化を評価するメタボローム解析を行い、肥満型の人と標準体重の人で代謝物に変化があるのかを確認し、そこで得られた代謝反応の結果を元に、第二部で、肥満の人において高炭水化物食(HC)により引き起こされる代謝物に対してシナモンとトウガラシがどのような効果をもたらすか試験がされた。

第一部の試験では、BMI25以上の過体重グループと標準体重グループにそれぞれ健康な男性12名が参加し、両グループで高炭水化物食(450 kcal:炭水化物89%、タンパク質11%、 脂肪0%)と標準炭水化物食食(450 kcal:炭水化物45%、タンパク質30%、脂肪25%)を摂取し、各食事後の血漿メタボローム(代謝産物)を測定した。メタボローム解析における識別代謝物として、ホスファチジルコリン(PC)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジル イノシトール(LPI)、リゾホスファチジン酸(LPA)、脂肪酸アミド(FAA)などの脂質類や、BCAA、ビリルビン、ピペリジンなどが調べられた。

第一部の結果、ベースラインの時点で過体重のグループは標準体重グループに比べて、高齢で、空腹時血糖値が高く、インスリン抵抗性が高く、糖尿病予備軍であることが認められた。また、過体重グループが高炭水化物食を摂取すると、主にリン脂質と脂肪酸アミドに属する代謝物が大幅に増加した。過体重グループにおいて、血中濃度が高炭水化物食摂取後に有意に増加した代謝物の例として以下が挙げられる;

  • エネルギー恒常性を含む主要な生理機能の維持および回復に関与するエンドカンナビノイド系に関わるLPIやFAA
  • 酸化ストレスと炎症促進作用を誘発し、メタボリックシンドローム、心血管疾患、慢性腎臓病の病因を促進するインドキシル硫酸
  • TNFなどの炎症性メディエーターを活性化し、インスリン分泌減少に影響するヒドロキシステアリン酸およびヒドロキシエイコサテトラエン酸
  • 乳酸アシドーシスの要因となる乳酸
  • 糖尿病や耐糖能障害を引き起こす要因となる尿酸

この結果から、過体重グループでは、標準体重グループには見られない、高炭水化物食の摂取による脂質代謝の調節異常を受けやすいことが示唆された。

第二部では、20人が二重盲検プラセボ対照試験に登録され、約1〜3週間のウォッシュオーバー期間を挟む2回の来院時に、シナモン2g とトウガラシ200mgのカプセルまたはプラセボカプセルと高炭水化物食(小麦ロール 100g、フルーツジャム 50g、 ジュース 200mL)を一緒に摂取し、空腹時および食後に採取した血液の血漿試料を用いてメタボローム解析を実施した。

その結果、第一部の試験で高炭水化物食摂取により特に顕著な有意差があったリン脂質類の代謝物の量が、シナモンとトウガラシの摂取により正常化されていることが確認され、異常になっている代謝経路を調節している可能性があることが示された。

この試験では、過体重や肥満の人には高炭水化物食は好ましくない食後代謝反応を誘発する可能性があるので避けるべきだと結論づけられ、また、日々の食材としてシナモンや唐辛子を利用することが推奨された。メタボロミクスは非常に興味深い研究であるが、今回は男性のみを被験者とした小規模試験だったため、今後、女性を含め、また、食事の種類を増やした規模の大きい試験が期待される。

〔文献〕

Hameed A, et al. The Beneficial Effect of Cinnamon and Red Capsicum Intake on Postprandial Changes in Plasma Metabolites Evoked by a High-Carbohydrate Meal in Men with Overweight/Obesity. Nutrients. 2022 Oct 14;14(20):4305. doi: 10.3390/nu14204305.