2021.7.15

閉経後の性交疼痛症と性的満足度の改善にカモミール

女性は更年期を経て閉経するとエストロゲンの分泌が減り、性器への血液供給の低下やコラーゲンの弾力性の低下などにより、膣の乾燥と萎縮が起こる。また、膣の乾燥と萎縮により、性交中の痛みと不快感、性交後の出血、灼熱感などの症状が引き起こされる。この膣萎縮は閉経期の女性の約75%が経験するとされ、性的欲求や性的満足度の低下など女性のQOLを下げる要因となっている。

この予防と改善のために海外では膣のエストロゲンクリームが広く利用されているが、近年は補完代替医療の人気が出てきている。この二重盲検ランダム化比較試験では、96人の平均53歳の閉経後女性を対象に、5%カモミール(Matricaria chamomilla)配合膣用ジェル、抱合エストロゲン膣クリーム、およびブラセボのグループに分け、性交疼痛症および性的満足の効果が調査された。

最初の2週間は毎晩1グラム、次の10週間は週に2回1グラム、合計12週間使用し、治療開始後2、6、12週間後に再検査のフォローアップを行なった。
その結果カモミール膣用ジェルはエストロゲン膣クリームと同様に性交の痛みが減少し性的満足度が向上した。

カモミール膣用ジェルのグループには、試験前に重度な性交疼痛症が9名(30%)、中程度が16名(53.3%)、軽度が5名(16.7%)いたが、、使用2週目からプラセボに比べて効果が見られ始め、6週目には重度と中程度は0名、軽度が9名(30%)、性交痛がなくなった人が21名(70%)、最終の12週目では1人の軽度をのぞいて、残りの全員29名(96.7%)が性交痛がなくなり、治療期間を通して変化が見られなかったプラセボとは大きな違いが認められた。

これらの効果は、エストロゲン受容体に結合し、エストロゲン効果を引き起こすアピゲニンおよびクリシンフラボノイドによるものと推測されている。
カモミール膣用ジェルグループで32名中2名が灼熱感を感じ使用を中止した為その点は注意をすべきだが、そのほかの副作用は認められず、ホルモン療法の良い代替手段として期待される。

〔文献〕Bosak Z, Iravani M, Moghimipour E, Haghighizadeh MH, Jelodarian P, Khazdair MR. Evaluation of the influence of chamomile vaginal gel on dyspareunia and sexual satisfaction in postmenopausal women: A randomized, double-blind, controlled clinical trial. Avicenna J Phytomed. 2020 Sep-Oct;10(5):481-491. PMID: 32995326; PMCID: PMC7508318.

(9/7/2021 報告:河野加奈恵 学術委員)