日本のハーブ:貫衆(カンジュウ)と綿馬(メンマ)
シダ類の薬用植物に貫衆がある。貫衆は、中国の本草書の『神農本草経』に収載され、基原植物は、ヤブソテツ属 Cyrtomiumやオシダ Dryopteris crassirhizoma、クサソテツ Matteuccia struthiopteris TODARO、ゼンマイ科 Osmundaceaeのゼンマイ Osmunda japonica THUNBなど11種類のシダ類が考えられている。貫衆の効能は、殺虫、清熱解毒、止血が知られている。


1)ヤブソテツとオニヤブソテツ
単羽状複葉で縁は切れ込むことがほとんどなく、包膜は円形で、胞子嚢群は不規則に並ぶ。






葉の色が緑色や黄緑色の薄い色で光沢のないのがヤブソテツで、葉の色が濃緑色で、羽片基部が円形で中軸に重なるものがオニヤブソテツである。葉は単羽状で、頂裂片が独立するが、ヤブソテツは側裂片が15〜25対であり、オニヤブソテツは8〜15対である。



葉の裏側に胞子嚢があり、包膜で覆われている。いずれも包膜は円形で、包膜の中央部が黒色のものがオニヤブソテツ、やや褐色のものがヤマヤブソテツ、白色のものがメヤブソテツである。
ヤブソテツ Cyrtomium fortunei は、側羽片の幅が狭く、側羽片は15〜25対つく。葉は光沢のない厚い紙質で、淡緑色。羽片先端部には、はっきりした鋸歯がある。ソーラスは全面に散在し、葉の縁寄りからつく。包膜はやや大きく円形で、灰白色。羽片の形や光沢などは変異が多い。裂片の多いものにヤマヤブソテツがある。ヤブソテツは草原や林下に生育する。
オニヤブソテツ Cyrtomium falcatum は、北海道〜九州の海岸付近、崖に生える。葉柄基部に密状、褐色〜黒褐色の鱗片がつく。葉は単羽状複葉で、頂羽片がある。側羽片は卵状長楕円形の鎌状で8〜15対つき、基部は円形で耳垂突出はなく、辺縁は全縁で多少波打つ。先端は尾状にのびて辺縁は全縁。羽片の幅が広い類似種にはヒロハヤブソテツとメヤブソテツがある。ヒロハヤブソテツは羽片の幅が広いものは長さの1/2ほどあり、耳垂がなく、基部が丸く、側羽片が1〜7対。メヤブソテツは羽片の基部の耳垂がヤブソテツよりはっきりし、羽片の幅が3cm以上と広いのが特徴。羽片の縁に粗鋸歯があり、胞子嚢が羽片の縁からでなく、中肋寄りにつく。
ヤブソテツのグループで、ヤブソテツ類は頂羽片がはっきりするが、ミヤジマシダ Cyrtomium balansae は頂羽片がなく羽片はだんだん小さくなる。
2)オシダ Dryopteris crassirhizoma
中国の東北地方及び朝鮮産品、日本ではこの根茎を綿馬(メンマ)根と称し駆虫生薬とする/中島等
根茎を乾燥したものを、生薬名・綿馬、綿馬根、貫衆(カンジュウ)などと呼び、止血、駆虫薬として、特に条虫駆除に用いられる。また鼻血、婦人の帯下などにも用いられる。山地の林内に群生。草の高さは、70〜100cm、葉は2回羽状複葉で黄緑色から濃緑色、光沢があり、柔らかい草質。葉柄は短く、中軸や葉柄には溝がある。また裂片の葉脈はくぼみ、小脈は2岐する。葉柄基部には、光沢のある黄褐色から黒褐色の鱗片が密生し、胞子嚢は上部の羽片だけにつける。

中国では古代から漢方薬の貫衆の一種として解熱、解毒、止血、殺虫などの薬効のあるものとして処方されてきた。
アイヌの人たちはカムイ・ソルマ(神のシダ、または熊のシダ)と呼び、胃の痛みや打撲傷に根茎と葉柄の煎じ汁が用いられた。
セイヨウオシダ Dryopteris filix-mas、英名はMale fernと称し、ヨーロッパからアジア、北アメリカの大部分に分布。葉は直立し、2回羽状複葉で長さは120cmになる。羽片は25〜50対。葉軸は橙褐色の鱗片で被われ、古代ギリシャ時代から、根茎を「条虫(サナダムシ)」の駆除に用いられた。
また、貫衆(カンジュウ)と思われるものに、ゼンマイやクサソテツの記載もある。


[写真提供] ①〜⑦:昭和薬科大学 薬用植物園 中野 美央氏 ⑧〜⑭:元昭和薬科大学 薬用植物園 中村 玲子氏
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第75号 2026年3月






