2026.7.3

エコロジカルガーデニングデザイン

当協会理事・事務局長

木村 正典

暖かくなるといろいろな草が伸び出します。タネ播きしなくても勝手に生えてきてくれるありがたい草を有効に活用しましょう。雑草を厄介と思って見るのとありがたいと思って見るのとでは見え方もつき合い方も違ってきます。今回は雑草との共存の第1弾です。

第20回 雑草との共存 その1 雑草と共存する考え方

question

  • 雑草と野草の違いは何ですか?
  • 雑草はどうして取っても取っても生えてくるんですか?
  • 雑草はどうして嫌われるのでしょうか?
  • コンパニオンプランツになる雑草もありますか?

こぼれダネで発芽したコリアンダーやノエンドウなどの雑草に囲まれたアズキ(撮影場所:やまとハーブ[さいたま市])

地球環境に負荷をかけないエコロジカルハーバリズムに基づくガーデニングデザインでは、生態系を大切にしています。生態系を大切にするということは、生物多様性と循環を大切にするということになります。生態系では、生物間での喰う喰われるの関係の中で、植物が動物の餌になり、糞や死骸(落ち葉を含む)が土壌生物に食べられ、分解されて、やがて植物栄養になるという循環をしています。この循環には多様な生物の存在が不可欠です。特に、虫たち動物にとって、餌となる植物の存在は不可欠です。雑草がなければ自分の育てている植物が餌になってしまいます。雑草とうまく共存するには、雑草のことをよく知って考え方を180度変える必要があります。

雑草とは

「雑草ということはない。どんな植物でも、みな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。人間の一方的な考え方でこれを雑草として決めつけてしまうのはいけない。」というのは、どうして庭を刈ったのかとの問いに侍従が「雑草が生い茂ってまいりましたので、一部お刈りいたしました」と言った際の昭和天皇のお言葉です。雑草でひとくくりにしてしまうのは植物に対して失礼といえるでしょう。私たちが失礼をしているその雑草とは、生活圏内に勝手に生えてきた不要な植物のことです。人間の生活圏外に生える植物は野草と呼びます。身の回りの野草が雑草といってもいいかもしれません。

野草は人が植えつけたものではない自生植物ですが、雑草は時に、収穫しそびれたジャガイモが自然に生えてきたり、シソやサンショウ、ジャーマンカモミールなどがこぼれダネで勝手に生えてきたりと、人が育てていたものの子孫でも不要とあらば雑草として扱われます。

エコロジカルハーバリズムでは、雑草は単なる嫌われ者ではなく、生物多様性を維持する上で大切な、勝手に生えてくれるとてもありがたい生き物と捉えています。

雑草はなぜ強いのか

雑草の特徴は、予期せず勝手に生えてくれることと、生育旺盛で強靭であることです。雑草が強靭な理由は、生き残るために身につけた生存戦略がうまくいった結果であり、そのために現存しているともいえます。一方の人と共に進化してきた栽培植物は、ご先祖様がよりおいしいもの、より大きいもの、よりたくさん採れるものを採種してきた結果、知らず知らずにそれらの遺伝子をもつ個体を選抜育種してきたことになり、その上で、病害虫や雑草などから守りながら、肥料を与えながら、過保護に育ててきたわけですから、その分、病気に強いとか、雑草に強いなどの生命力の強い遺伝子は無視され、結果として、次第においしく、大きく、たくさん採れるようになった分、次第に生命力が弱くなってきたといえるでしょう。そう考えると、雑草の生命力が強いのではなく、栽培植物の生命力が弱いというべきでしょう。

雑草はどこからやって来るのか

雑草の多くは、鳥の糞や風で運ばれますが、中には買った土の中に混ざっていることもあります。

雑草との共存が必要な理由

エコロジカルハーバリズムでは土壌生物がとても重要な役割を果たします。植物栄養や土壌pHの適正化(弱酸性化)、土壌の団粒構造の維持など、土づくりは基本的に土壌生物が行うため、土壌生物なくして植物は育たないからです。

その土壌生物の棲みやすい土壌にするには、裸地にしない=土を露出させない、すなわち、植物で土壌を覆い尽くす必要があり、それには自分で密にタネ播きするか、勝手に生えてくる雑草を有効利用するかのどちらかになります。

また、多様な雑草があることで、虫たちの餌が豊富にそろっていることになり、自分の育てている植物の食害を希釈することができます。

雑草との共存に対する考え方

雑草によって病害虫が減り、土が豊かになるのに、勝手に生えてくる雑草をわざわざ抜く作業をして雑草と戦うというのは、手間ばかりかかって生態系を崩壊させてと、何もいいことはありません。雑草のないほうがきれいという、刷り込みによる主観的な感覚を満足させるだけです。雑草の生えている景色こそ、自然であり、多様で美しいと思える感覚を刷り込ませることが求められています。

しかし、話はそう簡単ではありません。雑草を受け入れられないのは、日本の自然観から来るものかもしれませんし、一筋縄ではいかない気もしています。日本には古くから、盆栽や箱庭、日本庭園など、自然を身近に楽しむ文化があります。これらは100%人の手で作られた極めて人工的な、偽物の自然であるにもかかわらず、本来の自然を超越した、脳が求める理想の自然であり、それを愛でる文化として我々のDNAに刻まれてきています。欧州の整形式庭園やトピアリー、モノカルチャーによる非日常な花畑なども似た側面がありますが、一線を画すものです。その、脳の求める理想の自然には、残念ながら雑草のある風景は含まれていないようです。ここを刷り込みで変えるのは難しいかもしれません。

それから、弥生人がイネを植えて田んぼを作り出して以降、農業はモノカルチャーとなり、次第に、農業=草との闘い、虫との闘いという構図が確立していきました。雑草をよしとしない農業でのタブーが家庭菜園などの指南書でもタブーとされて普及してしまっていることも確かです。

であるなら、やはり、意識改革による行動変容が必要であり、エコロジカルハーバリズムの普及が求められるでしょう。雑草をよしとしない人との衝突は文化の衝突に等しく、単に言い争いになって平行線です。まずは自分で実践してそのよさに気づくことが大切です。

他の植物との共存を考える 〜混植と作付体系〜

雑草との共存を考える上で、雑草に限らず、植物のもつ他の植物と共存する際の役割を考えてみたいと思います。

既に、サステイナブルアグリカルチャー(持続型農業)や生態系保存型農業、IPM(総合的病害虫・雑草管理)などの分野で、他の植物との共存に関する研究、実践の行われているものがあります。農業における他の植物との共存、すなわち混植は、作付体系(さくづけたいけい)と呼ばれ、以下の4つの方法があります。

作付体系(広義の混植)の4つの方法

  1. 混作(狭義の混植) / 無秩序にバラバラに植える
  2. 間作 / 列ごとに違う植物を植える
  3. 周囲作 / 圃場の周囲に違う植物を植える
  4. 輪作 / 違う植物をローテーションして栽培

コンパニオンプランツとは?

混植に用いる植物をコンパニオンプランツと呼ぶことがありますが、コンパニオンの関係とは、両者相互が対等で共にメリットのある関係です。人間と動物とのつき合いでも、近年、人間側からの一方的な見方であるペット(愛玩動物)という言葉を使わずに、共に歩むという意味からコンパニオンアニマル(伴侶動物)と呼ぶようになっています。生物学では、生物間で相互関係をもちながら共に生活する現象を共生といいます。一方的な関係である片利共生の代表は寄生で、相互にメリットのある相利共生はコンパニオンの関係といえるでしょう。といっても植物の場合、根粒菌や訪花昆虫など、微生物や動物との相利共生はあります。

植物同士の作用として、アレロパシー(植物間相互作用)がありますが、主体は植物の根から出るポリフェノール類(フェノール物質とフラボノイド)や葉から出るイソプレノイド(テルペノイド)が他の植物の生育や発芽などを抑制する作用であり、相互に利益のある相利作用すなわちコンパニオンの関係は知られていません。コンパニオンプランツとして紹介されている組み合わせはほぼ、一方的な作用です。相利共生として、トマトとバジルがよく取り上げられており、私も随分混植実験をしましたが、収量も品質も混植の効果は得られませんでした。料理に使うのに便利とか、バジルを収穫した手でトマトを摘むとバジルの香りが移るとかいう利点で一緒に育てるのはよい案だと思います。

混植に用いる植物

植物における一方的な作用は、それぞれ個別の名称がつけられており、サステイナブルアグリカルチャーなどで混植に用いられています。それらを表にまとめてみました。これらのうち、マリーゴールドなどの線虫(ネマトーダ)を駆除する対抗植物や、マメ科植物などの緑肥作物やカバークロップスなどは、今や農業での常套手段になっています。これらの植物は単独よりも組み合わせて使うと効果的です。害虫を畑の内部に寄せつけずに周囲に集める「プッシュ・プル法」が1980年代後半に提唱されました。現在では東アフリカのトウモロコシ畑を中心に、害虫忌避作物と天敵温存植物を内部に混作・間作し、害虫誘引作物を周囲作する方法が開発されて実用化されています。

このような役割をもつ植物を個別に考えて積極的に植える方法もありますが、雑草はその種類が豊富ですので、多様な雑草を生やすことで、様々な作用が期待されます。植物のもつ個別な作用を求めるよりも、多様な雑草を生やすことで得られる多様な作用を期待するホリスティックな考え方のほうがよりエコロジカルといえるでしょう。特に表の後半の青文字の役割は雑草が得意とするところです。その詳細は次号に譲ることにします。

  • ミシガン州立大学の有機栽培実践圃場。野菜は間作されており、畦間も株間も雑草で覆われている。これらの雑草が病害虫や乾燥などから野菜を守るナースプランツ(救護作物)の役割を果たしている。紫キャベツは株間も充分に空けて害虫を引き付ける物質(グルコシノレート)の飛散濃度を下げている。
  • ミシガン州立大学の有機栽培実践圃場。スイスチャードの株間に雑草を残す実験区。株間だけ雑草と共存するだけでも、雑草のナース効果は高い。株元の土を露出させないことで乾燥を防ぐ効果は大きい。
  • 山梨県早川町の「地球のパッチガーデン」。耕作放棄地をハーブ畑に変える試みを行っており、イネ科雑草の生い茂るまま、毎年少しずつハーブを植えてその数を増やしている。雑草と共存する場合、一度耕して雑草ゼロからスタートする方が、ハーブや野菜の生育が先に旺盛になるので楽。このように既に雑草の生い茂っている中に野菜やハーブを持ち込む場合、既に旺盛な生育をしている(=根株の充実している)多年生雑草の生育(=根株)を抑えるため、定期的に切って光合成を抑制する必要があり、時間がかかる。
当協会理事・事務局長
木村 正典 きむら まさのり
ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK!プランター菜園のすべて』(NHK出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第75号 2026年3月