2025.5.22

胃腸に優しい食事で体も心も元気に

消化を助ける食材を選び
調理方法にもひと工夫を

 胃腸が弱っている時は、胃腸を休ませてあげることがとても大切です。消化・吸収で体に負担をかける物や胃腸の炎症を助長する物を避け、消化機能を助ける成分や炎症を抑える成分を含む食材を摂ると、早期回復につながります。また、冷えも胃腸の血行を悪くして消化機能を低下させる原因となるので、できるだけ体を温めるような食事を摂るようにしましょう。

 野菜なら、消化酵素や胃腸を守る栄養素を含むダイコン、キャベツ、カブ、ヤマイモなど。胃粘膜を健康に保つβ‐カロテンが豊富なニンジン、カボチャ、コマツナ、モロヘイヤなどもおすすめです。

 ハーブやスパイスの中にも胃腸の働きを高めてくれたり、炎症から起こる胃もたれや腹痛などの症状を緩和してくれたりする物がたくさんあります。ペパーミント、カモミール、フェンネル、レモングラス、バジル、シソなどはその代表。ショウガ、カルダモン、クローブ、ターメリック、シナモン、サンショウなども優れた健胃作用をもつので、胃腸が弱った時だけでなく日常的に取り入れるとよいでしょう。

 海藻やきのこ、根菜類など食物繊維の多い食品は便秘改善や整腸に役立ちますが、胃腸を休ませたい時には控えめに。食べる場合は、細かく切る、すりおろす、じっくり煮込むなどの工夫をすると胃腸への負担を軽くすることができます。

01
カブとショウガのすり流し(2人分)
胃の疲れを感じる時やお酒を飲んだ後に
〔用具〕おろし金、鍋、器
カブ ••• 中4〜5個(約150g)
ショウガ ••• 1片
だし汁 ••• 400mL
酒、みりん ••• 各大さじ1
塩 ••• 少々
ユズの皮 ••• 少々

1.カブの葉を落とし、よく洗って皮ごとすりおろす。
2.鍋にカブとだし汁を加えて火にかけ、沸騰したら酒、みりん、塩を加え、弱めの中火で5分ほど煮る。
3.ショウガをすりおろして2に加え、さらに2〜3分煮る。
4.火を止めて器に盛り、刻んだユズの皮を添える。

POINT
カブに含まれる消化酵素のアミラーゼが胃酸の分泌をコントロールし、胃もたれや胸焼けを改善します。辛味成分のイソチオシアネートには消化促進作用があり、食欲不振や消化不良にも有効です。

02
野菜スープ(2人分)
ハーブと塩麹が香る胃腸に優しいスープ
〔用具〕鍋、スープ皿
キャベツ ••• 2枚
ニンジン ••• 1/3本
セロリ ••• 1/2本
タマネギ ••• 1/2個
ニンニク ••• 1片
ショウガ ••• 1片
オリーブオイル ••• 大さじ2
水 ••• 400mL
塩麹 ••• 大さじ1
塩、こしょう ••• 各適量
〔フレッシュハーブ〕
ディル、ローズマリーなど ••• 適量

1.キャベツは葉をひと口大にちぎり、芯は薄切りにする。ニンジンはいちょう切りに、セロリと玉ねぎは1㎝角に切り、ニンニクとショウガはみじん切りにする。
2.鍋にオリーブオイルを熱してニンニク、ショウガを炒め、香りが立ってきたら残りの野菜を加え、塩少々を加えて炒める。
3.野菜に油が回ってしんなりしたら水とハーブを加え、ふたをして弱めの中火で10〜15分煮る。
4.塩麹を加えて混ぜ、火を止める。好みでこしょうを振って器に盛る。

POINT
塩麹には消化を助ける効果や善玉菌を増やして腸内環境を整える効果があります。ディルは消化促進作用や整腸作用を、ローズマリーは消化機能改善、代謝促進などの作用をもちます。使用するハーブは、バジル、タイム、オレガノ、イタリアンパセリなどもおすすめです。

03
オレンジピール

爽やかな香りで食欲増進、お通じもスムーズに
〔用具〕鍋(ホーロー製や樹脂加工の物)、ざる、クッキングシート、ポリ袋、バット
オレンジの皮(ノンワックスのもの) ••• 2個分
上白糖 ••• 100g
グラニュー糖 ••• 30g
水 ••• 100mL

1.オレンジの皮は白いわたを包丁で取り除き、5㎜幅に切る。
2.鍋に湯を沸かし、1を入れて1分ほどゆで、ざるにあげる。これを2回繰り返した後、1時間ほど水にさらし、水けを切る。
3.鍋に水、上白糖を入れて中火にかけ、上白糖が溶けたら2を加える。弱火にして鍋を回しながら皮に透明感が出るまで煮詰める。
4.クッキングシートの上に重ならないように並べ、粗熱を取る。
5.ポリ袋にグラニュー糖と4を入れて振り混ぜ、バットに並べてラップをせずに冷蔵庫で乾燥させればでき上がり。

POINT
保存する場合は密閉容器に入れ、冷暗所で2週間以内が目安。甘夏や伊予柑、レモンなどでも同じように作ることができます。ただし、胃痛や胃もたれ、吐き気などがある人は、症状を助長する可能性があるのでかんきつ類は控えるようにしてください。

消化機能の回復にホットドリンクを

下痢や便秘の時も水分補給が大切

 胃腸の調子が悪くて食事があまり摂れない時も、水分は十分に補給することが大切です。空腹状態で水分を摂らないでいると、胃酸が胃粘膜を傷つけて、胃もたれや胸焼けなどの症状が悪化することがあります。また、下痢の時は大量に失われる水分を補うために、便秘の時は腸のぜん動運動を高めるために、少量ずつこまめに水分を摂るようにしましょう。

 水分補給に最適なのは、白湯、ノンカフェインのお茶、温かい汁ものなど。いつものドリンクに体を温める作用や消化を助ける作用をもつショウガなどのハーブをプラスするのもよいでしょう。

 葛粉は葛の根から取り出したでんぷんを精製し乾燥したもの。その葛粉を溶いた葛湯は古くから滋養強壮やかぜのひき始めに飲まれてきましたが、最近では腸内環境を整える食品としても注目されています。お酒を飲み過ぎた翌朝のだるさや吐き気を和らげたい時にもおすすめです。

04
葛湯
薬効の高い葛にショウガをプラス
〔用具〕鍋、木べら
葛粉 ••• 10g
水 ••• 150mL 
ショウガ ••• お好みで
はちみつ ••• お好みで

1.鍋に葛粉を入れて水で溶き、すりおろしたショウガを加える。
2.弱火にかけ、木べらなどでかき混ぜながら温め、透明感が出たらはちみつを加え、好みのとろみ加減で火を止める。

POINT
葛に含まれるでんぷんは、食物繊維と同じように腸の善玉菌のエサとなって腸内環境を整えます。

ATTENTION!
はちみつを使用しているので、1歳未満の子どもには与えないでください。

05
ローズマリーとカモミールのシロップ 
ドライハーブにフルーツを加えて
〔用具〕ふたつきの鍋、ざるまたは茶こし、保存瓶
〔ドライハーブ〕
ローズマリー ••• 10g
カモミール ••• 10g
オレンジ(ノンワックスのもの) ••• 1/2個
砂糖 ••• 1200g
水 ••• 1150mL

1.オレンジの皮を削り、果汁を絞っておく。
2.鍋に水を入れて沸騰させ、火を止めてからドライハーブ、砂糖、1の皮と果汁を入れてかき混ぜる。
3.ふたをして、涼しい場所に24時間置く。
4.ざるや茶こしを使ってこし、煮沸消毒した保存瓶に移せばでき上がり。冷蔵庫で保存し、1週間程度で使い切る。

POINT
水やお湯で6〜10倍くらいに希釈して飲んだり、ティーに加えたり、ヨーグルトにかけたりと、いろいろな使い方ができます。ローズマリーには心や体を活気づける賦活作用があり、胃腸を元気にしてくれます。

06
胃腸のためのハーブティー
健胃作用に優れた3種のハーブをブレンド
〔用具〕ティーポット、カップ
〔ドライハーブ〕
カモミール ••• 1g
ペパーミント ••• 1g
フェンネル ••• 1g
熱湯 ••• 200mL

1.ポットにハーブを入れ、熱湯を注いだらふたをして5分ほど抽出する。
2.カップに注ぎ入れる。

POINT
飲み過ぎや食べ過ぎで疲れた胃腸を回復し、胃もたれや胸焼け、お腹のはりなどの症状を鎮めてくれます。どのハーブもリラックス効果や鎮静効果をもつので、ストレス性の胃腸の不調にも適しています。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第71号 2025年3月