2021.8.20.

【薬物相互作用を学ぶ】ハーブと医薬品の相互作用

グリーンフラスコ代表

林真一郎

前回は食品と医薬品との相互作用について解説しましたが、今回はハーブと医薬品のさまざまな相互作用について解説します。なお、この領域はいまだ研究途上であり、コンセンサスのとれた定説は少ないのが現状です。また相互作用についても理論上の可能性であり、臨床上、確実に起こりうるといったものではありません。

1. セントジョンズワートと医薬品の相互作用

平成12年5月10日に厚生労働省(当時は厚生省)はセントジョンズワートを摂取することにより薬物代謝酵素が誘導され、インジナビル(抗HIV薬)、ジゴキシン(強心薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)、テオフィリン(気管支拡張薬)、ワルファリン(血液凝固防止薬)、経口避妊薬の効果が減少する注意を喚起しました。なお、薬物代謝酵素であるチトクロームP450にはいくつかのサブタイプがあり、セントジョンズワートは特にCYP3A4とCYP1A2が強く誘導されます。表1にヒトの代謝酵素活性に対するハーブの影響を示します(参照『がんの統合医療』メディカル・サイエンス・インターナショナル)。

2. ハーブと医薬品の相互作用の具体例

ハーブと医薬品の薬力学的薬物相互作用と薬物動態学的薬物相互作用の具体例を示します(参照『ナチュラルメディシン・データベース』Jahficなど)


1.アスピリン(アセチルサリチル酸)

ウィロウバークやメドウスィート、バーチ(白樺)との併用は、サリチル酸を含むため作用を増強し、有害作用が生じる可能性があります。

2. アトルバスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)

ブラックコホシュとの併用は、肝障害のリスクを高める可能性があります。

3. アルツハイマー型認知症薬(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬)

イチョウ葉やトウゲシバとの併用は、同様の作用があるため、有害作用が生じる可能性があります。

4. 胃酸分泌抑制薬(H2ブロッカー・プロトンポンプ阻害薬)

デビルズクロウなどの苦味ハーブとの併用は、胃酸の分泌を促進するため、作用を減弱する可能性があります。

5. エストロゲン

マテやコーヒーとの併用は、エストロゲンがカフェインの分解を抑制するため、カフェインの有害作用が生じる可能性があります。アニス、フェンネル、チェストベリーとの併用は、エストロゲン様作用をもつため、エストロゲン受容体と競合しエストロゲンの作用を減弱する可能性があります。

6. エフェドリンおよびテオフィリン(気管支拡張薬)

マテやコーヒーとの併用は、交感神経系への作用を増強し、心臓への負担が生じる可能性があります。

7. 経口薬

経口的に摂取する薬とアイルランドモスやアルテア(マシュマロウ)、ウスベニアオイなどの粘液含有ハーブを併用すると、薬の吸収を阻害する可能性があります(この相互作用を防ぐためには、両者を1時間以上あけて服用します)。

8. 経皮吸収型製剤(エストロゲンパッチ、ニコチンパッチなど)

l-メントールやd-リモネンを含む精油は、経皮吸収促進作用があるため、使用部位が重なると薬の経皮吸収を高める可能性があります。

9.血液凝固抑制薬(抗凝固薬・抗血小板薬)

イチョウ葉やフィーバーフュー、ジンジャーやアンジェリカ、デビルズクロウやマテなどのカフェイン含有ハーブとの併用は作用を増強し、紫斑や出血を生じる可能性があります。ネトルとの併用はビタミンKを含有するため、ワルファリンなどの抗凝固薬の作用を減弱する可能性があります。クローブやシナモン、バーチ(白樺)やウインターグリーンの精油との併用は、作用を増強する可能性があります。


10.抗甲状腺薬

ブラダーラック(ヒバマタ)との併用は、ヨウ素を含むため甲状腺機能に影響を与える可能性があります。


11.ベンゾジアゼピン系鎮静薬

バレリアンとの併用は、同様の作用があるため過度の眠気などの有害作用が生じる可能性があります。クラリセージの精油など鎮静・鎮痙作用をもつ精油との併用も、同様の可能性があります。


12.アカルボース(α-グルコシダーゼ阻害薬)

マルベリーと併用すると同様の作用があるため、過度の糖吸収の抑制が生じる可能性があります。


13.パーキンソン病治療薬(ドーパミン作動薬)

チェストベリーと併用すると、同様の作用があるため有害作用が生じる可能性があります。


14.パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

セントジョンズワートと併用すると同様の作用があるため異常発汗、振戦、興奮、頭痛といったセロトニ
ン症候群などの有害作用が生じる可能性があります。


15. 光感作薬(光の感受性を高める薬)

セントジョンズワートやネトルなどのクロロフィルを豊富に含むハーブとの併用は、同様の作用があるため露出部に日焼け、水疱、炎症などを生じる可能性があります。ベルガモットやアンジェリカの精油などフロクマリン類を含む精油との併用も、同様の可能性があります。

16. 偏頭痛治療薬(トリプタン製剤)

セントジョンズワートとの併用は、同様の作用があるためセロトニン症候群などの有害作用が生じる可能性があります。


17.免疫抑制薬

エキナセアやキャッツクロー、ペラルゴニウム・シドイデスやミスルトゥー(西洋ヤドリギ)と併用すると、作用が減弱する可能性があります。


18. チアジド系利尿薬

ネトルやバーチ(白樺)、コーンシルクやダンディライオンなどと併用すると、作用が増強し、めまいや低血圧などの有害作用が生じる可能性があります。

19. 甘草を含む漢方薬

リコリスとの併用は、甘草の有害作用である偽アルドステロン症や低カリウム血症による浮腫や高血圧、ミオパチー(筋肉の痙攣や筋力の低下)などのリスクを高める可能性があります。

20. 桂皮を含む漢方薬

マルベリーやニガウリと併用すると、過度に血糖を低下させる可能性があります。またハーブや精油による肝障害や皮膚過敏症のリスクを高める可能性があります。


グリーンフラスコ代表
林真一郎 はやししんいちろう
当協会理事長。1982年、東邦大学薬学部薬学科卒業。1985年、ハーブ専門店グリーンフラスコ設立。2001年、植物療法の調査研究のためグリーンフラスコ研究所を設立し、医師・薬剤師・看護師などとネットワークをつくり、植物療法の普及に取り組む。東邦大学薬学部客員講師、日本赤十字看護大学大学院非常勤講師。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第35号:2016年3月