2024.2.5

美しい地域環境資源を未来へ「つなぐ棚田遺産」: 新潟県上越市清里区「櫛池の棚田群」

SDGs委員会副委員長

佐藤香

JAMHAはつなぐ棚田遺産サポーターとして、ハーブを通して、棚田の魅力をお伝えしていきます。

新潟県上越市清里区にある櫛池の棚田群は11の集落からなる棚田群です。この清里区櫛池の棚田群は標高差400mほどの山間にあり、216.6ヘクタールの面積になります。冬には2〜3mにも及ぶ雪が積もる豪雪地帯ですが、山々のブナの森から流れ出る豊富な雪どけの水や湧き出る清流がこの地区の豊かな土壌を潤し、県内でも有名な良質のお米を育てています。

櫛池の棚田群では、食卓に上るだけでなく、種もみの生産も行っており、各地の稲の苗にもなっています。いわばお米のお母さんを育てている大切な場所なのです。

貴重なお米が育つ棚田群ですが、一方で水路の管理が十分にできずに休耕地となってしまった場所も存在します。地域の方々はこの貴重な棚田群保全のため、様々な活動を行っています。

休耕地では、お米にこだわらず、ソバ、アワ、ウド、ワラビなどを栽培し、地域の魅力発信の一つとして、特産物や加工品で販売しています。また棚田の高低差と雪の多さから棚田の土砂崩れ被害は大きな問題になっており、田んぼ1つひとつの石積みにはワイヤーのカゴを設置し、棚田が崩れないように保護もされています。

櫛池の棚田から車で数分、南西に登ると、標高約500mのところに、2010年農林水産省「ため池百選」に選ばれた「坊ヶ池」があります。ため池とは、降水量が少なく流域の大きな河川に恵まれない地域などで、農業用水を確保するために貯えられるよう、人工的に造成された池のことです。

「坊ヶ池」は棚田の用水不足解消を目的に、江戸時代に長い歴史の中で造られました。そして現代に至っても貴重な水源として農業の礎の役割を果たしています。

この地を訪問した時、「坊ヶ池」は霧に包まれており、辺りは森林の香りが漂うとても神秘的な場所でした。「坊ヶ池」の湖畔は公園として整備されていて、見晴台や交流施設「ビュー京ヶ岳」、キャンプ場などがあります。晴れた日、見晴台からは四季折々の絶景が見られるとのこと。

その景色をのんびりと味わえる「ビュー京ヶ岳」では土日、祝日期間限定のカフェがオープンします(冬季間は休業)。地元の生産組合が作ったお蕎麦、清里産米粉のピザ、櫛池地区で採れた山菜などを使った季節のメニューが用意されているそうです。

この訪問では、清里区櫛池の棚田群は11の集落が一つになり、地域の方々も一丸となってアイデアを出しながら、伝統や文化を農地と共に守り、次世代にこの貴重な棚田群を引き継ぎたいという願いが強く感じられました。

JAMHAの取り組み

JAMHAでは、生態系を大切にした自然とつながるハーブ栽培やハーバルライフの普及・啓発と、環境に対する意識向上の推進を掲げ活動をしています。

そこで、この度、JAMHAは「つなぐ棚田遺産オフィシャルサポーター」となり、次のような取り組みを検討しています。

1.普及広報支援

HP・会報誌等で「つなぐ棚田遺産」の趣旨、棚田の有する多面的機能を周知

2.地域振興支援

(1)会員を中心としたイベントによる支援

①農作業支援(田植えや稲刈りなどのお手伝い体験)
②観光支援(SNSなどでの紹介、棚田におけるワークショップ開催)
③販促支援(会員などによる農産物購入や購入先開拓)

(2)協会の専門性による支援

①棚田周囲や畦の植栽による新たな特産物や観光資源化の提案と支援(雑草抑制や観賞だけでなく、土壌浸食防止や様々に利用できるハーブの植栽)
②休耕田における稲以外の植栽による新たな特産物の導入支援(放任・自殖を基本とし、混植による生態系を保全する植栽)

まずはぜひお近くの棚田に足を運んでみてください。地域の自然の豊かさと地域の魅力を感じることでしょう。会員さんによる棚田レポート(書式自由)をお待ちしています。

農林水産省「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」パンフレットより

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第66号 2023年12月