2023.12.19

冷えのタイプに合わせてポイントを押さえたケアを

いりたに内科クリニック

監修・入谷栄一

ひと口に冷えといっても原因や冷え方は一様ではなく、それぞれの冷えのタイプに合った
対策を講じないと、なかなか改善に至りません。冷えの主なタイプとケアのポイントを紹介します。

A. 四肢末端型:手足に冷えを感じやすいタイプ

冷えの特徴

ストレス、過労、偏った食事、運動不足などの生活習慣により自律神経のバランスが乱れ、血行不良を起こしているタイプです。体の中心でつくられた熱が末端まで行きわたらないため、手先や足先が氷のように冷えます。若い女性に多く、肩こりや頭痛、月経のトラブルなどを伴うことも少なくありません。

ケアのポイント

  • ただ手足を温めるだけでは改善しないので、首元や肩、お腹など体幹の保温を心がける。
  • ストレスは大敵。心身をリラックスさせる時間を意識的につくる。
  • 食事をしっかり摂る。
  • 毎日適度な運動をする。

B. 下半身型:腰から下に冷えを感じるタイプ

冷えの特徴

主に腰から下に冷えを感じるタイプで、お尻やふくらはぎの筋肉の緊張や血行不良が原因です。30代以降の人に多く見られ、下半身は冷えるのに顔はほてっている「冷えのぼせ」が現れる人もいます。

ケアのポイント

  • 長時間の座りっぱなしを避け、デスクワークの人はこまめに立ち上がって体をほぐす。
  • 下半身(特にふくらはぎ)のストレッチやマッサージ、ツボ押しなどで血流をよくする。
  • ウォーキングやジョギング、入浴、半身浴、足湯なども有効。

C. 全身型:体全体が冷えるタイプ

冷えの特徴

寒さが苦手で一年中体全体が冷え、常に体温が低めなのが特徴です。体質もありますが、ストレスや生活習慣の乱れも関係します。中には甲状腺機能低下症や膠原病、貧血などの病気が原因となっているケースもあります。

ケアのポイント

  • 食事、運動、生活習慣を見直し、体の内側から温めることを心がける(右ページ参照)。
  • 体質的な「冷え症」には、漢方薬も有効。
  • セルフケアで改善しない場合や、気になる症状がある場合は、医療機関を受診する。

D. 内臓型:体の内部が冷えるタイプ

冷えの特徴

手足は温かいのに、二の腕やお腹にさわると冷たく感じるのが特徴です。腸が冷えることでガスがたまりやすくなり、お腹の張りを感じる人もいます。自律神経のアンバランスが原因で起こり、冷えの自覚が乏しいケースもあることから「隠れ冷え」とも呼ばれます。

ケアのポイント

  • 下腹部(へその下の辺り)と腰(背中側)にカイロなどを当てて温める。
  • 体を温める食べ物を摂る。
  • ストレスコントロールを心がける。
  • 適度な運動を習慣にする。

ご注意:低温やけど防止のため、カイロは必ず衣服の上から当て、寝る時ははずしてください。

東洋医学での冷えの考え方

西洋医学では冷えは病名ではなく、あくまで1つの症状です。対して漢方などの東洋医学では、冷えに伴う不快な自覚症状がある場合を「冷え症」といい、治療対象となる病気の1つと捉えています。東洋医学には「けつすい・」という概念があり、何らかの原因でこれらのバランスが崩れた時に不調が現れると考えます。血が不足している「 血虚けっきょ」、血が滞っている「瘀血おけつ」、水分がたまっている「水毒すいどく」、気が不足している「気虚ききょ」といった状態が、冷えの主な原因となるとされます。

イラスト:なめきみほ

いりたに内科クリニック
監修・入谷栄一 いりたに・えいいち
総合内科専門医、呼吸器専門医、アレルギー専門医。東京女子医科大学呼吸器内科非常勤講師。在宅診療や地域医療に力を入れる他、補完代替医療やハーブ、アロマに造詣が深く、全国各地で積極的に講演活動も行う。著書に『病気が消える習慣』、『キレイをつくるハーブ習慣』(経済界)など。当協会顧問。https://www.iritani.jp

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第66号 2023年12月