2023.10.16

美しい地域環境資源を未来へ「つなぐ棚田遺産」: 新潟県十日町市池谷・入山の棚田

SDGs委員会副委員長

佐藤香

棚田リポート 新潟県十日町市 池谷・入山の棚田


新潟県の南部に位置し、国宝の「火焔型かえんがた土器」が出土した笹山遺跡で有名な十日町市に「池谷いけたに入山いりやまの棚田」があります。その起源は天和の検地(1681年)以前と言われています。世界一の豪雪地帯で、春には雪解け水が大地に浸透しミネラルを多く含んで棚田に注がれます。池谷・入山の棚田は魚沼産コシヒカリの産地でもあります。

棚田のある入山集落は1989年廃村に、池谷集落は一時6世帯13名にまで減り、限界集落となりました。そんな中、2004年中越大震災が発生、棚田の畦が崩れ、もうこの集落には住めないと人々が諦めかけた時、復活の灯りをともしたのがボランティアの皆さんでした。ボランティアの皆さんとともに崩れた棚田を3年かけて直し、米作りを復活させました。

米作りを続けていく中で人々は「集落を存続させたい」と強く願い、後継者受け入れを思い、積極的にボランティアや農業研修者、地域おこし協力隊を受け入れ、現在、池谷集落は11世帯20名(うち子供6名)と、限界集落ではなくなり、棚田継続の未来が見えるまでになり、「集落の存続と都会と田舎が手と手をとりあう幸せな社会づくり」を目標に歩み続けています。

様々な逆境にめげず、この棚田で育てた魚沼産コシヒカリは「山清水米やましみずまい」(※)と呼ばれ、全量、減農薬、源化学肥料栽培の特別栽培米であり、一部は無農薬、無化学肥料栽培で天日干しのはざかけ米です。またお米は「妻有つまりビール」の原料としても提供されています。

池谷・入山棚田では棚田オーナー制度、「元限界集落から地域おこしチャンネル」としてYouTubeで発信、それぞれの季節には体験イベントを開催し、地域と都会の繋がりを大切に活動されています。

実際に現地に訪れてみると、大自然に囲まれた棚田のあちらこちらに数々のハーブを見ることができます。廃校を利用した棚田の基地「池谷分校やまのまなびや」から辺りを見回すと、マルベリー、スギナ、ミント、クロモジなど。

訪れた時はちょうどマルベリーの実が熟している時で、渋みのないさっぱりとした甘い味を堪能しました。そして田んぼののどかな風景を眺めながら歩いて数分、ブナが一面に生い茂る原生林に到着しました。あまりにも美しいブナの立ち姿に思わず息を飲むほど。

そしてブナ林に足を踏み入れると心地よい森の香りを感じ、深呼吸したくなる気持ちのいい空気に包まれました。このブナ林では、地元の小学生が課外授業を行ったり、ヨガリトリートも行われるとか。絵画のような風景の中でたっぷりの森林浴をすることができました。

復活した奇跡の棚田と、大自然に原生する植物を堪能しにぜひ訪れてみてください。

JAMHAはつなぐ棚田遺産サポーターとして、ハーブを通して、棚田の魅力をお伝えしていきます。

JAMHAの取り組み

JAMHAでは、生態系を大切にした自然とつながるハーブ栽培やハーバルライフの普及・啓発と、環境に対する意識向上の推進を掲げ活動をしています。

そこで、この度、JAMHAは「つなぐ棚田遺産オフィシャルサポーター」となり、次のような取り組みを検討しています。

1.普及広報支援

HP・会報誌等で「つなぐ棚田遺産」の趣旨、棚田の有する多面的機能を周知

2.地域振興支援

(1)会員を中心としたイベントによる支援

①農作業支援(田植えや稲刈りなどのお手伝い体験)
②観光支援(SNSなどでの紹介、棚田におけるワークショップ開催)
③販促支援(会員などによる農産物購入や購入先開拓)

(2)協会の専門性による支援

①棚田周囲や畦の植栽による新たな特産物や観光資源化の提案と支援(雑草抑制や観賞だけでなく、土壌浸食防止や様々に利用できるハーブの植栽)
②休耕田における稲以外の植栽による新たな特産物の導入支援(放任・自殖を基本とし、混植による生態系を保全する植栽)

まずはぜひお近くの棚田に足を運んでみてください。地域の自然の豊かさと地域の魅力を感じることでしょう。会員さんによる棚田レポート(書式自由)をお待ちしています。

農林水産省「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」パンフレットより

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第65号 2023年9月