日本のハーブ:フクボンシ(覆盆子)とテンチャ(甜茶)
薬草園で大きく育った甜茶は、葉が甘く、ステビアと類似した成分が含まれている。甜茶の学名は、Rubus chingii var. suavissimus である。母種のゴショイチゴRubus chingii Hu の変種である。ゴショイチゴは葉に甘味がない。果実は集合果で、乾燥したものは、フクボンシといって、薬として使われている。
1)ゴショイチゴ Rubus chingii Hu
中国大陸及び日本では、四国や九州、中国地方に野生する植物で、この未熟果実を生薬フクボンシ(覆盆子)として薬用に使われている。
ゴショイチゴの形態は、低木つる性植物で、高さ1.5~3m。枝は若いときには緑色で、成長すると赤褐色になり、円筒形で、細く、無毛で、5~ 6mmのまばらなとげがある。葉は少し円形、長さ、幅共に、5~10cm、基部浅い心形、やや5深裂、上面は無毛、又は両面脈状に伏毛があり、裂片は長鋭尖頭で重鋸歯がある。托葉は線形。花は1個、小梗は繊細、無毛、長さ2~3cm。ガク筒は平坦、裂片は卵形又は長楕円形、円頭又は鋭頭、時に凸端、長さ6~8mm、両面に短い伏し毛がある。花弁は白色、長さ約15mm。果実は集合果で、赤く、球形、直径1.5~2cm、密に灰色の開出毛が生じる。分布は、日本では、山口県、高知県、香川県、愛媛県、大分県及び熊本県。
中国では、安徽省、福建省、広西チワン族自治区、江蘇省、江西省、浙江省である。とても甘い果物は生で食べられ、ジャムやゼリー、ワインを含む様々な飲み物の製造にも使用される。果実、根、葉は薬に使われる。
2)フクボンシ(覆盆子)
ゴショイチゴの乾燥未熟果実である。初夏の果実が緑から緑黄色に変わったら収穫し、茎と葉を取り除き、沸騰したお湯で少し湯通し、または蒸して取り出して乾燥させる。
形態は、高さ0.6~1.3cm、直径0.5~1.2cmの円錐形または平円錐形の集合果である。表面は黄緑色または淡褐色で、頂点は鈍く丸みを帯びており、基部は凹んでいる。萼は茶色で、下に果実の茎の痕跡があり、軽くて硬い。匂いはほんのり、味はやや酸味がある。薬効は、強精強壮、視力改善、頻尿改善、老化防止などが記載されている。中国の薬局方に収載され、顕微鏡形態や成分の確認方法も記載されている。
3)甜茶
Rubus chingii var. suavissimus (S. Lee) L. T. Lu,
ゴショイチゴの変種が甜茶である。形態は、茎は小灌木で、高さ3~5mである。葉は掌状に5~7分裂する。花は直径3~5cmで、花びらは1.4~2.5cm。中国では、果実は赤色で円錐形である。中国の丘陵地帯の広葉常緑樹林に生育する。標高500~1000mの広西チワン族自治区に分布する。葉は南中国では甘いお茶を作るために使用される。
母種は、葉が掌状に5分割され。花は直径2.5 ~4cm。花びら1~1.5(2)cm。この変種は葉が掌状に5~7分割される。花は直径3~5cm、花びらは1.4~2.5cmである。
4)甜茶の成分研究
成分が解明されたのは1981年、ルブソシドというステビアの成分に類似していた。
神田博史先生が、国立衛生試験所生薬部から母校に戻ったとき、広島大学と上海科学院との共同研究が行われており、恩師の田中治教授が中国の華南国立植物園を訪問し、甘味なる植物を持ち帰ったことから始まる。広島大学の生薬研究室で甘み成分ステビアの研究をし、ステビオシドを解明していた。神田博史先生は、田中治教授が中国から持ち帰ってきた甘い葉、一つ掴みをシャーレで水に浸して広げた。この葉片は、 5掌状のモミジイチゴに類似していた。植物園では、モミジイチゴRubus palmataといわれたが、モミジイチゴの葉は甘味がない。学名を解明するために類似している植物を探したが解明できなかった。唯一類似していた植物がゴショイチゴであった。国内のゴショイチゴを山口県徳地町で採集したが、葉にも甘味がなかった。Rubusの専門の富山大学の鳴橋直弘先生の検討をお願いしたが見つからなかった。成分分析で、ステビオシドの糖が一つ少ない化合物と判明し、ルブソシドをRubus chingii Huの学名で1981年に発表した。その後、中国ではRubus chingii の葉に甘みがないことが判明し、中国より、1981年Rubus suavissimus S.K.Leeと報告されたが、 2000年にRubus chingii var. suavissimus(S.K.Lee) L.T.Luと最終的な報告がされた。







[写真提供]
①②:高知県立牧野植物園 提供
③④⑤:昭和薬科大学 薬用植物園 中野 美央氏
⑥:元株式会社栃本天海堂 松島 成介氏
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第74号 2025年12月






