エコロジカルガーデニングデザイン
HERB & LIFE
ハーブのある暮らしを楽しむ<冬>
Ecological gardening design
エコロジカルガーデニングデザイン
前号の株分けに続いて、はじめての栄養繁殖第3弾。
今回は、取り木で殖やす方法を紹介します。
取り木は大量増殖に向きませんが、根を出してから殖やすため、確実に殖やせます。
第19回
取り木で殖やす

question
取り木とはどんな方法ですか?
取り木に向く植物と向かない植物はありますか?
取り木のコツはありますか?
取り木の最適時期はいつですか?

地球環境に負荷をかけないエコロジカルハーバリズムでは生態系を大切にして、化学物質を使わず、無理なく無駄なく育てます。育てる楽しみには殖やす楽しみもあります。植物を殖やす繁殖には、交雑によって親とは違う遺伝子となる種子繁殖と、クローンによって親と同じ遺伝子をもつ栄養繁殖とがあります。今回は、栄養繁殖第3弾として、取り木で殖やすコツをご紹介します。
取り木とは
取り木は、根の出ていない茎に土をかけるなどして湿らせ、発根させてから切り分ける方法です。原則として、根を出してから切り分けますので、挿し木よりも確実に繁殖できる方法です。ただし、発根に時間がかかるうえ、挿し木のように一度に大量に殖やすのには向いていません。
取り木に向く植物、向かない植物
取り木に向く植物は、茎の立ち上がる植物で、挿し木のできる植物は取り木ができます。挿し木よりも成功率が高いため、挿し木の難しい植物でも取り木によって殖やせる可能性は大きいです。
一方、取り木に向かない植物は、セリ科やアブラナ科、オオバコ科などの茎の立ち上がらないロゼット状態の植物です。
取り木にはいくつかの方法があり、それぞれの方法に向き、不向きの植物があります。
取り木の方法
1.盛り土法(根取り法)
株元に土を20cmほど被せて埋め、不定根の発根後にそれぞれの枝を根元から切って株分けする方法です。強制的な株分けです。
ブルーベリーやコデマリ、ユキヤナギのように株元から枝を立ち上げるブッシュタイプの植物や、ローレルやヤツデ、モクレン、ジューンベリー、ヤマボウシ、トサミズキのように「ひこばえ」(根元から出てくるシュート)の出やすい植物に向きます。一方、地中海の乾燥地原産のラベンダーやローズマリー、コモンセージなどは、土寄せすることで根元が過湿で傷みやすく、ひこばえも出ないことから向きません。

盛り土法によるゲッケイジュの取り木


2.圧条法(土中取り木法、伏せ木法、曲げ取り法)
茎を土中に潜らせるように固定し、そこから発根させる方法です。
シソ科やキク科のハーブ、マルベリー、ブラックベリー、クランベリー、つるバラ、ジャスミン、ハニーサックル、ブドウなど、病気や過湿などを嫌うために盛り土法が向かない植物や、匍匐性植物、つる性植物などに向きます。不定根は節から出やすいので、節の葉を取り除いて土中に埋めます。
[方法] ❶取り木する部分の茎を一節以上、地中に誘引してU字の針金などで固定する。❷半年間放置して発根していたら、切断して植え替える。
圧条法には茎の固定方法によってさらにいくつかの方法があります。
2.1.先取り法
クワなどのやや高い位置の枝を曲げて、枝先のみを固定する方法です。

2.2.撞木取り木法
レモンバームやコモンセージ、匍匐性ローズマリーなど、地面に沿って伸びる枝を長く水平に土中に埋めて固定する方法です。


2.3.波状取り木法
ブラックベリーのようなつる植物の長い枝を2か所以上曲げて土中に固定する方法です。
波状取り木法によるブラックベリーの取り木の1カ所の固定の様子。
これを節のところで数か所行うのが波状取り木法。


3.高取り法(空中取り木法)
木本類を対象に、空中で不定根の発根を促す方法です。直径1~3cm程度の茎(枝)を用いて空中の高い位置で取り木する方法で、盛り土法や圧条法の不向きな植物や挿し木の難しい木本類で行われます。高取りには、新梢ではなく、2年以上経った枝を用います。直径1cm以上の太さのある枝であれば、どんな植物でも可能ですが、「環状剥皮」という難易度の高い技術を伴います。
環状剥皮とは、樹木の樹皮をナイフなどで形成層近くまで剝ぎ取ることをいいます。これにより、傷口にカルスを形成して発根を促します。樹木の茎の組織は、外側から、コルク層(死んでいる細胞)、コルク形成層、コルク皮層、皮層、師部、維管束形成層、木部(中心部の心材は死んでいる細胞)の順に配列しています。コルク皮層あるいは皮層から外側の機能していない部分を外樹皮、機能している皮層と師部を内樹皮と呼びます。環状剥皮は維管束形成層を残して師部から外側を剥ぎ取る技術です。維管束形成層まで取り除いてしまうと、維管束が形成されず、その先の枝が枯死してしまいます。シカに樹皮を食べられると枯れるのは維管束形成層まで食べられてしまうことによります。従って、維管束形成層まで傷つけないように剝ぎ取るのは内樹皮までにする必要があります。
[方法]
❶梅雨時に、取り木する部分の茎を、茎の直径と同じくらい~やや広めの幅に環状剥皮する。単子葉類では下から斜めに傷を入れる舌状剥皮をおこなう。
❷環状剥皮した部分に水で湿らせた水苔を巻く。
❸水苔が乾かないようにビニールで被覆して固定する。
❹この状態で3カ月~半年おく。その間水苔が乾かないよう定期的に保水。発根後、切り取って植えつける。


取り木の適期
取り木の仕込みの最適時期は、春から梅雨明け前までで、暑さが和らいだ初秋も可能です。切り分ける時期は、既に不定根が発生しているので、厳寒期と酷暑期を除けば、いつでも可能です。仕込みさえしておけば、忘れたころに発根してますので、是非、チャレンジしてみてください。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第74号 2025年12月






