2025.11.27

トウガラシ:食欲増進に役立つスパイスを学ぶ

当協会理事

木村 正典

【学名】 Capsicum annuum L.(カプシクム・アンヌウム;トウガラシ)Capsicum frutescens L.(カプシクム・フルテスケンス;キダチトウガラシ)Capsicum chinense Jacq.(カプシクム・キネンセ)

【科名】 ナス科

【使用部位】 果実

【主要成分】 酸アミド系辛味成分(カプサイシンなど)、カロテノイ
ド(カプサンチン、β-カロテン)、サポニン、ビタミンC

【作用】 健胃、鎮痛、局所充血

【適応】 食欲不振、筋肉痛、神経痛などの疼痛

トウガラシ特有の辛み成分に
食欲増進効果や体を温める効果が

 トウガラシは、中南米原産のナス科トウガラシ属の植物です。15世紀の大航海時代にコロンブスがスペインに持ち帰り、世界中に広まりました。

 人が栽培しているトウガラシは5種で、そのうち次の3種が日本で食用とされています。日本でおなじみのタカノツメなどのアンヌウム種と、メキシコのハバネロなどの激辛トウガラシの多いキネンセ種、タイのプリッキーヌなどのフルテスケンス種(キダチトウガラシ)で、このうちアンヌウム種には、辛みのある系統の他、ピーマンやパプリカ、シシトウなどの辛みのない系統があります。

 トウガラシの特徴的な成分は、辛みのもとである「カプサイシン」。唾液や胃液の分泌を促して消化・吸収をサポートし、食欲を増進する他、体を温めたり、代謝を高めたりする作用があります。また、皮膚を刺激し、血行を促す作用をもつことから、外用で腰痛や筋肉痛、肩こりなどにも使われます。漢方ではトウガラシは蕃椒(ばんしょう)という生薬として、体内の冷え取りや健胃、発汗などの目的で用いられます。

 料理のおいしさと健康に貢献してくれるトウガラシですが、刺激が強いため摂り過ぎると胃腸の粘膜が傷ついたり、下痢をしたりすることがあるので注意しましょう。

当協会理事
木村 正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第73号 2025年9月