Valerian

バレリアン

バレリアン Valerian
Valeriana officinalis

和名:西洋カノコソウ / 科名:オミナエシ科 / 使用部位:根部

バレリアンはヒポクラテスの時代より西ヨーロッパで鎮静や催眠を目的に使われてきた。現在、バレリアンの根は世界各地で用いられ、米国ではサプリメントとして、チンキ剤、浸剤、あるいはそのまま粉末にして、また、乾燥エキスのカプセル剤や錠剤の形で用いられている。バレリアンはしばしば睡眠を促すために伝統的に用いられている他のハーブ、例えばホップ、パッションフラワー、レモンバーム、ラベンダー、ジャーマンカモミールなどとのブレンドにより用いられる。臨床試験で効果が検証された、3種のハーブがブレンドされた製剤は、The ABC Clinical Guide to Herbs©2003 (published by the American Botanical Council)に適切な製剤として掲載されている。バレリアンは、2000年のアメリカの小売総売上の第8位であり、その総売上高は約17百万ドルである。バレリアンの根とその粉末、そして抽出物は米国薬局方(U.S. pharmacopeia)第25版と米国医薬品集(National Formulary)第20版に医薬品として収載されており、オーストリア、フランス、イギリス、ハンガリー、ロシア、スイスなどの薬局方にも収載されている。ドイツでも同様に薬局方に収載され、鎮静及び催眠の効能がドイツコミッションEで承認されている。

【適応】

不安/不眠/睡眠障害/神経障害による情動不安

【作用】

睡眠障害(軽度~中等度)の改善

※REM睡眠への有害作用や覚醒後に持ち越される有害作用はない。

【主な使用法】

服用期間についての公的な規制はないが、30日以上の長期臨床試験は行われていない。

内服

〔浸剤〕カップ1杯の熱湯に生または乾燥した根2‐3gを入れて浸剤を調製し、1日1回から数回服用する。

〔チンキ剤〕1/2‐1ティースプーン(1‐3ml)を1日1回から数回服用する。

〔エキス〕乾燥した根2‐3gに相当する量を1日1回から数回服用する。

〔茶剤または乾燥エキス〕1回量を就寝30分前から1時間前に服用する。必要に応じて夕方に服用することもよい。

※成人は体重に応じて適量を内服する。3-12歳の小児は医師による管理が必要である。

外用

〔入浴剤〕:1回の入浴に100gを用いる。

【禁忌】

世界保健機関(WHO)は12歳以下の小児では医師の管理下のみで使用可としている。しかし、ドイツではバレポトリエイト(valepotriates)とバルドリナル(baldrinal)を含有しない製剤であれば、3歳以上の小児で使用可としている。

妊娠と授乳:WHOは、妊娠時の安全性について臨床的に確立されていないことから妊娠時の使用を禁忌としており、また、研究報告が無いという理由で授乳時の使用も禁忌にしている。

【副作用】

バレリアンは一般的に安全性が高いと考えられている。ベンゾジアゼピン系薬剤と異なり、バレリアン服用による覚醒時の不快感はほとんどみられない。しかしバレリアン服用後の2‐3時間は判断力や運転能力が若干低下する可能性がある。副作用として頭痛、胃部不快感がみられることがあるがほとんど稀である。何年にも渡る長期間、大量のバレリアン(530mg‐2gを1日5回以上)を慢性的に服用していて急に止めると禁断症状が出る場合性がある。

【薬物相互作用】

アルコール、バルビツール酸系薬剤、ベンゾジアゼピン系薬剤との相互作用を有すると考えられているが、臨床試験ではこれらの相互作用の報告は無い。動物実験ではベンゾジアゼピン系薬剤の作用を増強することが報告されている。

【臨床的展望】

バレリアンに関する29の臨床試験(対象者5,201名)のすべてにおいて、不安、睡眠障害、気分改善に関する有効性が認められた。ほとんどの臨床試験でバレリアンが睡眠障害のある患者の睡眠をプラセボよりも有意に改善したことが証明された。最近ではいくつかのハーブと組み合わせて服用した場合の効果についての報告がある。これらには、非慢性的であり精神疾患ではない睡眠障害を対象とした、ホップとの混合による鎮静及び不眠改善効果、ホップとの混合による運転時の安全性への影響、セントジョンズワートとの混合によるベンゾジアゼピン系薬剤の代替としての抗不安効果、カンファーとサボテンの一種(Selenicereus grandiflorus)とホーソンとの混合による機能的心血管障害、低血圧、気象過敏症の症状改善への効果を検証したものがある。2つの二重盲検・プラセボ試験によりレモンバームとの混合により不眠症の睡眠の質を改善し、運転、機械の操作に影響しないことが確認された。1つの無作為・二重盲検・プラセボ・クロスオーバー試験では、バレリアン、ホップ、レモンバームの混合物が不眠の改善に有効であることが示された。バレリアンの不眠や不安への適応が支持されている要因としては、歴史的活用による経験が豊かであることが大きい。そして動物を用いた多くの薬理研究や植物化学研究、及び臨床試験の報告が加わることで更に支持されている。

2009年4月発行
編集:特定非営利活動法人 日本メディカルハーブ協会・学術調査研究委員会
提供:アメリカン・ボタニカル・カウンシルこのモノグラフはAmerican Botanical Councilにより2003年に発行されたThe ABC Clinical Guide to Herbs, Mark Blumenthal (senior editor), © を翻訳したものです.

Translated from The ABC Clinical Guide to Herbs, Mark Blumenthal (senior editor), © 2003 by the American Botanical Council (www.herbalgram.org). Courtesy of American Botanical Council.