2025.11.29

トウガラシの効果・効能

当協会理事

木村 正典

最近では、トウガラシ由来のカプサイシンが化粧品のふっくら効果に応用されたり、ダイエット効果を
狙ったサプリメントに配合されたりするなど、健康・美容の分野で様々な形で活用されています。

01食欲増進

カプサイシンが唾液や胃液の分泌を促進し、消化・吸収を高めて食欲を増進します。東南アジアでトウガラシがよく使われるようになった理由の1つは、暑さの中でも食欲減退を防ぐ効果があるためといわれます。

02血流改善

カプサイシンの働きで血管が拡張して血流がよくなり、体温が上昇します。皮膚の血流を改善する作用や局所的に知覚を麻痺a作用もあるため、外用で筋肉痛、しもやけ、凍傷、育毛などに用いられることもあります。

03ダイエット

カプサイシンはアドレナリンの分泌を促し、脂肪分解酵素のリパーゼを活性化して脂肪を燃焼しやすくするため、肥満の改善効果が期待できます。ダイエット効果を得るには、運動と組み合わせることがポイントです。

04動脈硬化予防

脂肪代謝がスムーズになることや血流がよくなることで高血圧が改善し、血管の老化現象である動脈硬化の予防につながります。また、辛味を利用することで料理の塩分を減らすことができ、減塩対策にも役立ちます。

05防虫

トウガラシは、カプサイシンを中心とした防虫(忌避)成分をもつため、ストチュウ(酢と焼酎を半々に混ぜた手作り病害虫スプレー)に用いられる他、米や小麦粉などの穀物や豆類につくコクゾウムシの発生を防ぐために昔から使われてきました。

TOPICS
トウガラシの赤い色素「カプサンチン」

 トウガラシの赤い色のもとは、果実に含まれる「カプサンチン」を主とする色素成分です。赤いトウガラシは緑色のトウガラシが完熟したもので、種子が熟して発芽能力をもつようになると、緑色の色素であるクロロフィルが分解され、カプサンチンが生成されます。カプサンチンはトウガラシの他にも赤ピーマンやパプリカに含まれています。

 カプサンチンはカロテノイドの一種で、優れた抗酸化作用をもつことが知られています。その抗酸化力はβ-カロテンの約1.5倍で、トマトに含まれるリコピンに匹敵するパワーといわれるほどです。この抗酸化力から糖尿病、脳卒中、脂質異常症、心臓病、高血圧、動脈硬化、肥満といった生活習慣病の予防や老化の予防に有効と考えられ、健康食品や医薬品への応用が期待されています。

 カプサンチン由来の色素が「パプリカ色素(=トウガラシ色素)」で、飲料やスナック菓子、ゼリー、カニカマ、ソーセージ、漬物、調味料などオレンジ色をした様々な食品に着色料として使われる他、鶏卵の色を鮮やかにするため鶏の飼料に加えられることもあります。天然色素のため安全性は高く、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)はカプサンチンをA級色素に分類しています。

当協会理事
木村 正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第73号 2025年9月