2025.10.30

日本のハーブ:サンキライ(山帰来)とサルトリイバラ

昭和薬科大学 薬用植物園 薬用植物資源研究室 研究員

佐竹 元吉

 サンキライ(山帰来)は、サルトリイバラ(Smilax glabra Roxburgh/Liliaceae ユリ科)の塊茎を秋頃に掘り起こし、ひげ根などを取り除き、水洗後に乾燥した生薬として第十八改正日本薬局方に収載されている。中国の薬局方では、これを土茯苓(ドブクリョウ)と称している。

 サンキライの名前は、享保年間に市場生薬を調査した時、中国産の唐山帰来として土茯苓を充て、和産のものは和山帰来とし、琉球産が良品質と記されている。琉球産はオキナワサルトリイバラ、カラスキバサンキライ、サツマサンキライと思われる。

 和産のサンキライは菝葜(バッカツ)として区別されることがある。中国産の土茯苓はサンキライとして、明治時代から家庭薬で広く使われてきた。

1)サルトリイバラ Smilax china

 サルトリイバラの根茎は節が多く木質である。葉は直径3〜12cmの円形あるいは楕円形で互生する。葉縁に鋸歯はなく、表面は黄緑色で光沢がある。茎は緑色で硬く、茎には托葉が変化した一対の細い巻きヒゲがある。雌雄異株。淡い黄緑色の小さな花、花弁は長さ4mm程で反り返り、雄花には黄色い葯が、雌花には先端が三つに裂けた柱頭ある。果実は径1cmで赤熟する。根茎を秋に採取し乾燥したものが、和山帰来、または菝葜である。

 オキナワサルトリイバラは、サルトリイバラの葉が大きい変種とされている。

2)ハマサルトリイバラ Smilax sebeana

 ハマサルトリイバラは、海岸付近の草地などに生えるつる性の多年生植物である。真冬の強風にも葉を落とすことがなく、内陸部に生えるサルトリイバラとの違いは、葉が小さく、茎に鋭い刺がない。

 種子島では草餅を包む材料に、「かから」の葉として親しまれ、主に業務用に草餅用の葉として利用されている。また、沖縄では食用や薬に使われている。

3)カラスキバサンキライHeterosmilax japonica Kunth.

 カラスキバサンキライ(唐鋤葉山帰来)は、屋久島以南に分布し、サルトリイバラ科のつる植物。花が筒状になる特徴があり、シオデ属のものに見えるが別属である。

 常緑性でつる性の半低木。全株無毛で茎には刺がない。葉身は卵状披針形で長さ5〜28cm、幅3〜12cm、先端は急尖頭、基部は円形。葉質は洋紙質。葉柄は長さ1〜3cm、托葉の部分は短くて2〜5mmでその先端から2本の巻きひげが出る。雌雄異株。花序は傘状で、葉腋に1個着き、10〜20程の花を咲かせる。花序の茎は扁平、長さ2〜5.5cmで幅0.7〜1.5mm、小花梗は長さ1 〜2cm。花被片は筒状に癒合し、長さ3〜4mm。雄花の雄しべは2〜4本あり花被片より短く葯は小さい。雌花には糸状に退化した雄しべと1個の雌しべがあり、柱頭は3裂する。果実は球形で径8〜10mm、暗緑色に熟す。種子は果実1個に2〜3個で、楕円形で赤褐色、長さ約5mm。

4)サツマサンキライ Smilax stanopetala

 つる性の植物で茎はよく分枝する。葉は革質または硬洋紙質、下面緑色また淡色、刺と巻きひげがある。刺はまばら。花は多数、散状に咲く。花被片は橙色で、花時に反曲する。

5)シオデとサルマメ

 サルトリイバラ科には、葉が紙質で、果実は黒熟し、早春の若芽は山菜として採られているシオデSmilax oldhamiや林縁の草原には小形で葉が直径1.5〜4cmのサルマメSmilax sarumameがある。

6)土茯苓 Smilax glabra 

 中国産、つる性、刺はない。茎は枝分かれし、円柱形、1〜4m、木質。葉柄5〜15cm、巻きひげがある。葉身は楕円形または卵形披針形、6〜15×1〜7cm。1つの散形花序。花柄1〜5mm、葉柄よりも著しく短い。雌雄の花はともに花序10〜30。雄花の花被は緑がかった白色で、ほとんど開かない。外側の花被片は広く卵形で輪状、約2×3mm、縁は不規則に歯状。雌花の花被片は、縁が内側に巻き込む。果実は青黒色、直径6〜10mm。

 生薬は、扁圧された不整円柱形を呈し、しばしば結節状に分枝し、外面は帯灰黄褐色〜黄褐色で、上面のところどころにこぶ状の茎の残基がある。横切面は類白色〜帯赤白色で、皮部は極めて薄く、ほとんど中心柱からなる。わずかににおいがあり、味はほとんどない。

土茯苓

おわりに 

 最近では、紅い実のついたサルトリイバラ、サンキライは、乾燥しても利用できるつる性の枝・茎をクリスマスリースなどの飾りつけに用いられる。

写真:Xmasリース

[写真提供]
①②③④⑨⑩⑪:昭和薬科大学 薬用植物園 中野 美央氏
⑤⑥⑦⑧:(一財)沖縄美ら島財団総合研究所 植物研究室 阿部 篤志氏 
⑫⑬:元昭和大学 薬学部 磯田 進氏
⑭:株式会社栃本天海堂 松島 成介氏
⑮:元昭和薬科大学 薬用植物園 中村 玲子氏

昭和薬科大学 薬用植物園 薬用植物資源研究室 研究員
佐竹 元吉 さたけもとよし
当協会顧問。沖縄美ら島財団研究顧問。1964年東京薬科大学卒業。国立医薬品食品衛生研究所生薬部部長、お茶の水女子大学生活環境研究センター教授、富山大学和漢医薬学総合研究所・お茶の水女子大学客員教授を歴任。著書『第17改正 日本薬局方生薬等の解説書』(共著・廣川書店)他。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第72号 2025年6月