2025.8.7

紫外線対策と保湿がポイント 夏のスキンケア

夏は汗をかいたり、薄着で肌の露出が増えたり、紫外線が強くなったりすることで肌のコンディションが乱れやすい季節です。夏に多い肌トラブルの原因を知り効果的なスキンケアを行って健やかな肌を守っていきましょう。

乾燥や外部刺激から体を守る肌の働き

 肌は外側から順に、「表皮」、「真皮」、「皮下組織」の層状の構造をしています。表皮の表面の「角質層」にはセラミドやコレステロールなど細胞同士をつなぐ成分(角質細胞間脂質)があり、しっかり水分を蓄えることで乾燥や外部刺激から体を守っています。これを「肌のバリア機能」といいます。

 ところが、気温や湿度の変化にうまく適応できなかったり、強い外部刺激が加わったりすると角質層の潤いが失われ、バリア機能が低下してしまいます。その結果起こるのが、かさつき、かゆみ、赤み、湿疹といった様々な肌トラブルです。

 バリア機能が低下した状態では、紫外線などのダメージを受けやすくなり、シミ、シワ、たるみなどの肌老化を進めてしまうことにもなります。さらに近年は、肌のバリア機能が低下すると、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が侵入しやすくなり、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを引き起こすきっかけになることも分かってきました。肌を健やかに保つことは、美容だけでなく全身の健康にも深くかかわっているのです。

夏は紫外線と暑さのピーク日焼けや乾燥に要注意

 日本の夏は気温と湿度が高く、肌のベタつきが気になる季節です。そのため肌は潤っていると思われがちですが、肌の内部は乾燥しているケースが少なくありません。夏場に肌トラブルを招く主な原因としては、「紫外線」「汗・皮脂」「冷房」の3つが挙げられます。

夏のスキンケアと健康管理で秋からも元気な肌に

 紫外線や冷房といった肌にとって過酷な環境に加え、洗い過ぎや保湿不足など不適切なスキンケアも肌トラブルに拍車をかけます。また、暑さによる食欲不振、冷たい物の摂り過ぎ、睡眠不足、ストレスなども全身的な体調に影響し、肌のコンディションを悪くする要因に。肌の不調を感じる時は、生活習慣を見直すことも必要です。

 夏に受けた肌ダメージはすぐには現れなかったとしても、肌のゴワつき、ハリの低下、くすみなど、秋口からの肌の不調につながることがあります。また、長年の蓄積により、シミやシワなどの肌老化も進行してしまうことに。適切なケアを実践し、肌の健康を守っていきましょう。

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紫外線

 紫外線は3月頃から強くなり始め、6〜8月頃にピークを迎えます。強い紫外線を浴びると皮膚の細胞が傷つき、炎症を起こして赤くなります。これが一般にいわれる「日焼け(日光皮膚炎)」です。重度の日焼けの場合は、水ぶくれができて痛んだり、熱が出たりすることもあります。

 また、紫外線は肌のバリア機能を低下させるため、乾燥によるかさつきや毛穴の目立ち、ニキビ、吹き出物、シミ、シワ、たるみなどの肌トラブルも起こりやすくなります。紫外線を長時間浴び続けることで体内に大量に発生する活性酸素も、直接・間接に肌にダメージを与えます。

紫外線が肌に与える影響


紫外線は波長の違いによりUV-A、UV-B、UV-Cに分類されますが、私たちの肌に影響をもたらすのはUV-AとUV-Bの2つです。UV-Aは、肌の奥の真皮まで届き、肌のハリを保つコラーゲン線維を切断するなどして、シワやたるみの原因に。窓ガラスや薄いカーテンも透過するため、屋内でも油断は禁物です。UV-Bは、日焼けを起こす力がUV-Aの数百〜1000倍と強く、多量に浴びると肌が赤くなるなどやけどのような炎症を引き起こします。炎症によってメラノサイトが活性化されるとメラニン色素が増え、シミやソバカスの原因となります。


汗・皮脂

 高温多湿の環境では汗や皮脂の分泌が増えます。そのため毛穴が詰まりやすくなり、雑菌が繁殖してニキビや吹き出物の原因になります。過剰に分泌された皮脂が紫外線によって酸化し、ニキビなどの肌トラブルの原因になることもあります。

 また、かいた汗が蒸発する時に肌の水分も一緒に奪ってしまうため、肌が乾燥しやすくなります。


冷房

 冷房が効いた室内は湿度が低く空気が乾燥しているため、肌の水分が失われて乾燥しやすくなります。特にエアコンの風が直接当たる場所にいたり、汗をかいた状態で冷房の効いた室内に入ったりすると、肌の乾燥はみるみる進んでいきます。

 また、冷房による全身の冷えや、高温の屋外と冷えた室内の寒暖差によるストレスも自律神経の働きを乱し、皮脂の分泌や肌の血行に悪影響を与えます。

夏の肌トラブルの原因

夏のスキンケアのポイント

紫外線の害から肌を守る外側からのケアを行い、同時に肌のバリア機能を高めることが、夏のスキンケアのポイントです。美肌に欠かせない食事にも目を向けましょう。

POINT1. 紫外線をブロックする

 紫外線による肌トラブルを防ぐためには、何よりも紫外線を浴びないことが大切です。まず、肌の露出をできるだけ控えること。その上で日傘、帽子、アームカバーなどで防御しましょう。衣服は濃い色で、目の詰まった繊維の物が有効です。

 紫外線は目からも入り、メラニン色素を発生させてシミの原因になったり、目の水晶体のタンパク質を変性させて白内障を招く原因になったりします。そのため、春先から夏にかけてはサングラスも必須です。

 顔などの露出を避けられない部分は、日焼け止めを塗って防御します。耳や首の後ろ、デコルテ(胸元)、目の周りなどの塗り忘れに注意し、2〜3時間おきに塗り直すようにしましょう(詳しくは囲みを参照)。

日焼け止めの選び方・使い方

 日焼け止めに記載されている「SPF」は、シミやソバカスの原因となるUV-Bをカットする効果を表したもので、最高値が「50」。「PA 」は、シワやたるみの原因となるUV-Aをカットする効果を表し、PA +〜PA++++の4段階で示されます。屋外でのレジャーやスポーツ時にはSPF50やPA++++を、通勤や買い物など、ちょっとした外出ではSPF15〜30前後、PA++程度を選ぶといったように、シーンに応じて使い分けましょう。

 日焼け止めを使う際は、ムラなくたっぷり塗ることが大切です。塗る量が不十分だと、記載されている紫外線防止効果を得ることができません。頬骨や目の周りは特にシミができやすいので、重ね塗りしたり、パウダーを軽くのせたりしてしっかり遮光しましょう。

POINT.2 肌のバリア機能を高める

 「保湿」を意識した洗顔や冷房対策を心がけ、食事では潤いのある肌づくりに役立つ栄養素を意識して摂るようにしましょう。

洗顔

 肌の調子が悪い時は洗顔料を使わずに水またはぬるま湯だけで洗うか、皮脂の多いTゾーンだけ洗顔料や石けんを使うとよいでしょう。皮脂が多過ぎると雑菌が繁殖しやすくなったり、皮脂が酸化して肌老化の原因となったりするため、余分な皮脂を落としつつ、適度な潤いを保つのがポイントです。

 洗顔後は急速に肌の乾燥が進むため、すぐに保湿を行いましょう。化粧水をなじませた後、乳液やクリームなどで水分が蒸発しないようにふたをします。

冷房対策

 冷房の温度を下げ過ぎないようにし(目安は26〜28℃)、冷房の風に直接当たらないようにします。室内にいて肌寒いと感じる時は、長袖の服やストールなどを羽織って身体が冷えないようにしましょう。

 体内の水分量が減ってしまうと肌も乾燥しやすくなるので、常温か温かい飲み物をこまめに摂って水分補給することも大切です。

食事

 栄養バランスの整った食事を摂ることが大切です。中でも皮膚の材料となる良質のタンパク質、ビタミンA・C・E、ビタミンB群の不足に注意します。さらに、紫外線によって大量に発生する活性酸素の害から肌を守るために、抗酸化成分を含む食品も積極的に摂るようにしましょう。特にビタミンCは、抗酸化という点では基本となる栄養素です。肌のハリを保つコラーゲンの生成を促し、シミの原因であるメラニンの生成を抑えてくれます。

 また、腸内環境が悪くなると、肌トラブルが起こりやすくなることも分かっています。その意味で、発酵食品や食物繊維、オリゴ糖の摂取も美肌ケアに有効です。

メディカルハーブでスキンケア

ハーブは古くからやけどや切り傷、肌荒れなどの手当に用いられてきました。
ティーとして飲むだけでなく、化粧水や入浴剤など様々な方法でスキンケアに活用できます。

ハーブの抗酸化作用や抗炎症作用が肌トラブルの予防・改善効果を発揮

 ハーブに期待できる効果は数多くありますが、スキンケアにかかわるものとして「抗酸化作用」、「抗炎症作用」、「代謝促進作用」が挙げられます。

抗酸化作用…肌の乾燥や老化の原因となる活性酸素を除去する働きをいいます。ハーブには抗酸化作用に優れたものが多く、ハーブティーを日常的に摂ることで、肌の老化予防効果が期待できます。

抗炎症作用…程度の差はありますが、ハーブは全般的に抗炎症作用をもち、乾燥肌や肌荒れ、ニキビをはじめアトピー性皮膚炎や湿疹など炎症性の肌トラブルの改善に役立ちます。ハーブを使った化粧水は、日焼けのアフターケアにも有効です。

代謝促進作用…特定のハーブには古い細胞から新しい細胞に生まれ変わる「新陳代謝」を助ける働きがあり、肌のターンオーバーをスムーズにします。その結果として肌ダメージからの回復が早くなり、美肌効果や老化防止効果が期待できます。

 ハーブティーやハーブウォーターは肌の健康に必要なビタミンやミネラルも摂ることができ、水分補給にも最適です。ハーブを使用したコスメは、自然の香りとハーブのもつ薬理作用が肌にやさしく働きかけ、様々な効果で肌の健康を守ってくれます。この夏のスキンケアのサポートに、ぜひ取り入れてみましょう。

スキンケアにおすすめのハーブ◇

ローズヒップとカレンデュラは、スキンケア用ハーブの代表です。他にもジャーマンカモミールやローズなど、肌の健康をサポートしてくれるハーブがたくさんあります。

●ローズヒップ…ビタミンCが豊富で抗酸化作用も高く、乾燥肌の改善やシミやシワ、たるみの予防、肌を明るくする効果が期待できる。

●カレンデュラ…皮膚の細胞を修復・保護する働きをもち、かゆみや肌荒れを改善、傷の治癒を促す。抗菌力も強く、ニキビにも有効。

●ジャーマンカモミール…抗炎症作用と鎮静作用に優れ、乾燥肌のかゆみや赤みを鎮める。ニキビや湿疹、日焼け、やけど、傷や潰瘍にも有効。

●ローズ…肌の引き締め効果やシミの予防効果をもち、透明感のある明るい肌に導く。

●ネトル、エキナセア、ダンディライオン…炎症を鎮めて乾燥による肌荒れやかゆみを和らげる。ニキビや吹き出物にも有効。

●エルダーフラワー…豊富なビタミンCと抗酸化成分が、乾燥肌の改善やシミ、ソバカスの予防に効果を発揮。

●リンデン、マーシュマロー…保湿作用や抗炎症作用があり、肌にハリと潤いを与えてくれる。

スキンケアにおすすめの精油

精油を使ったアロマトリートメントは、リラックス効果も得られます。精油ははたらきが強いので、希釈濃度を守り、皮膚炎のないところでパッチテストを行ってから使用しましょう。

●ジャーマンカモミール、ラベンダー…抗炎症作用や鎮静作用に優れ、ストレス由来の肌トラブルにも効果的。

●ゼラニウム、ローズ…肌のターンオーバーをスムーズにし、かたくなった皮膚をやわらかくする。

●ラベンダー…肌の炎症を鎮める作用や肌を引き締める作用、抗菌作用をもつ。

●ローズマリー…肌の新陳代謝を促進し、活力のない肌やエイジング肌を生き生きとさせる。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第72号 2025年6月