2025.7.1

高齢者のシトクロムP450に対する植物サプリメントの効果の臨床評価

学術委員

辻恵子

高齢者や妊娠、小児、原疾患などの層別により、体内薬物動態が変動し、メディカルハーブとの相互作用も特異的に変動することが考えられる。今回は、肝臓・腎臓機能の低下、水分量・脂肪量の変化、複数の薬を併用することによるポリファーマシーのリスクの高い高齢者における、メディカルハーブの相互作用を検討した研究報告である。

今回の目的は、セントジョーンズワート(オトギリソウ科 Hypericum perforatum)、ガーリックオイル(ヒガンバナ科 Allium sativum)、オタネニンジン(コギ科 Panax ginseng)、イチョウ(イチョウ科 Ginkgo biloba)の長期補給が高齢者のCYP1A2、CYP2D6、CYP2E1、またはCYP3A4活性に影響を与えるかどうかを調査することだった。

次に方法として、60歳から76歳までの12人の健康なボランティア(平均年齢67歳)をランダムに割り当て、各サプリメントを28日間投与された。ミダゾラム、カフェイン、クロルゾキサゾン、デレキソキンのプローブドラッグを各サプリメントの前と最後に投与され、CYP3A4、CYP1A2、CYP2E1、およびCYP2D6測定した。

得られた結果は、セントジョーンズワートでは、CYP3A4(約140%)とCYP2E1(約28%)を有意に誘導し、ガーリックオイルはCYP2E1(約22%)抑制した。CYP2D6のオタネニンジン阻害は統計的に有意であったが、効果の大きさ(約7%)は臨床的に関連性がないように見えた。この研究でテストされたサプリメントはどれもCYP1A2活性に影響を与えなかった。

結論として、高齢の被験者は、若い人と同様に、特にセントジョーンズワートが関与するCYP活性のハーブ媒介の変化の影響を受けやすい。CYP活性の変化に起因する薬物動態学的なメディカルハーブと薬物の相互作用は、薬の有効性および、または毒性に悪影響を及ぼす可能性がある。若い被験者を採用した以前の研究と比較すると、各サプリメントに対するCYPの応答性に年齢に関連するいくつかの変化が存在する可能性があることを示唆している。したがって、処方薬と各サプリメントの併用は、高齢者では特に慎重に対応する必要がある。

[文献]

Gurley BJ, et al. Clinical assessment of effects of botanical supplementation on cytochrome P450 phenotypes in the elderly: St John’s wort, garlic oil, Panax ginseng and Ginkgo biloba. Drugs Aging. 2005;22(6):525-39. doi: 10.2165/00002512-200522060-00006. PMID: 15974642; PMCID: PMC1858666.

参考)

高齢者は、加齢による身体機能の低下、特に肝臓や腎臓の機能の低下による薬物代謝の排泄の遅延、体内の水分量が減少し脂肪量が増加することによる薬の蓄積、薬物代謝酵素活性低下、複数の薬剤を服用するポリファーマシーなど、相互作用の影響によるリスクが高くなる可能性がある。各サプリメントに対するCYPの応答性に年齢に関連するいくつかの変化が存在する可能性がある、と言及されていることから、メディカルハーブ使用者の層別に留意しながら、安全に使用することが重要であると推察される。