2025.8.14

喫煙者ボランティアにおける尿中ニコチン/コチニン比を用いたミント飲料のニコチン代謝への影響

学術委員

辻恵子

多くの人にとってたばこは重要な嗜好品であり、喫煙者も多く、男性では20%を超える。(「国民健康・栄養調査」令和5年分)しかし、昨今の健康意識の高まりから、たばこの喫煙率は減少傾向にある。今回は、禁煙をサポートするニコチン製剤とミント飲料との薬物相互作用検討した研究報告である。

ニコチン代謝の変動は、CYP 2A6の遺伝子変異、環境要因、および食事に起因する可能性がある。今回の目的は、ヨルダン人喫煙者における尿中ニコチン/コチニン比を用いて、ミント飲料がニコチン代謝に及ぼす影響を評価することであった。

次に方法として、 ヨルダンの喫煙者ボランティア 24 名をランダムに 2 つのグループに分けた。ミント飲料摂取期間中の1週間、1 日 3 回ミント飲料を摂取し、メントール断ち期間中の1 週間、メントールを含む製品とミント飲料を避けた。一方のグループの治療順序はミント飲料、メンソール断ちで、もう一方のグループの治療順序はメンソール断ち、ミント飲料だった。早朝の尿サンプルをベースラインと各期間の終了時に採取し、サンプルは液体クロマトグラフィー質量分析法で分析し、ニコチンとコチニンの濃度を調べました。ニコチン/コチニン比を計算し比較した。

得られた結果は、全被験者において、ミント飲料摂取期間中はメントール断ち期間と比較してニコチン/コチニン比が高くなるという一貫した傾向が認められたが、その程度にはばらつきがあった。全被験者のミントドリンク摂取期間中の平均ニコチン/コチニン比(1.327 ± 0.707)は、メントール断ち期間(0.993 ± 0.547)よりも高かった。

結論として、ミント飲料は尿中のニコチン/コチニン比を上昇させ、ニコチンからコチニンへの変換を減少させたことを示唆している。

[文献]
Ghazi AM, Salhab AS, Arafat TA, Irshaid YM. Effect of mint drink on metabolism of nicotine as measured by nicotine to cotinine ratio in urine of Jordanian smoking volunteers. Nicotine Tob Res. 2011 Aug;13(8):661-7. doi: 10.1093/ntr/ntr054. Epub 2011 Mar 31. PMID: 21454915.

参考)
ニコチン製剤の主成分であるニコチンはコチニンへ代謝されるとこで、主に体外へ排出される。ニコチンからコチニンへの代謝遅延が起こると、ニコチンの体内滞留時間が長くなり、消化器系、心血管系へ影響などの様々な健康リスクが増加が懸念される。ニコチン代謝には薬物代謝酵素であるCYP2A6が主に関連していると言及があり、ミント飲料がCYP2A6に影響を及ぼしてると考えられる。今回使用されたミント飲料の学名に言及はなく不明だが、メントール含有製品も中止していることより、メントールが主成分であるペパーミントも留意する必要があると推察される。ペパーミントは他にもCYP1A2、CYP2C19、CYP2C9、CYP3A4など、多様な薬物代謝酵素に影響を及ぼすとされている。さらに、メントールは作今の猛暑により様々な飲料や食品等に含有されるようになり、より身近なメディカルハーブのひとつとしてあげられ、誰でも気軽に摂取していることが想像できる。ミント飲料摂取時にのみ影響があると限定的な試験ではあるが、特に日本における猛暑の季節には、医薬品を追加で服用する際等には使用を中止するなど、安全に使用することが重要であると考えられるだろう。