健康なボランティアにおいて、夜間にバレリアン(Valeriana officinalis)を複数回摂取すると、CYP3A4活性にはほとんど影響がなく、CYP2D6活性には影響がなかった

医薬品とメディカルハーブの相互作用に関する研究報告には、「影響がない」あるいは「影響が少ない」と結論付けているものも多く見られる。しかし、それだけで終わりではない。「影響がない」とされた研究報告にも、使用時の注意や理解に役立つ情報が含まれていることがある。ここでは、バレリアン(Valeriana officinalis)とアルプラゾラムの併用による影響について検討する。
本研究の目的は、バレリアン抽出物が薬物代謝酵素シトクロムP450 2D6(CYP2D6)および3A4の活性に及ぼす影響を評価することであった。
次に方法として、健康なボランティア(n = 12)を対象に、試験開始時および14日間、毎晩500 mgのバレリアン錠2錠(1000 mg)を服用させた後に、デキストロメトルファン(30 mg;CYP2D6活性)およびアルプラゾラム(2 mg;CYP3A4活性)を経口投与した。バレリアンサプリメントには、1錠あたり5.51 mgのバレレニン酸が含まれていた。
得られた結果は、アルプラゾラムについては、バレリアン投与後に血漿中最高濃度(Cmax)が有意に上昇した。その他の薬物動態パラメータについては、ベースライン時およびバレリアン曝露後に有意差は認められなかった。
結論として、アルプラゾラムのCmaxがわずかに上昇したものの、バレリアンの標準用量では、CYP2D6またはCYP3A4代謝経路に依存する薬剤の体内動態に臨床的に有意な影響を及ぼす可能性は低いことが示された。
【引用】
Donovan JL, DeVane CL, Chavin KD, Wang JS, Gibson BB, Gefroh HA, Markowitz JS. Multiple night-time doses of valerian (Valeriana officinalis) had minimal effects on CYP3A4 activity and no effect on CYP2D6 activity in healthy volunteers. Drug Metab Dispos. 2004 Dec;32(12):1333-6. doi: 10.1124/dmd.104.001164. Epub 2004 Aug 24. PMID: 15328251.
【参考】
バレリアンはGABAの働きを高めることで、穏やかな鎮静作用があると考えられている。また、ベンゾジアゼピン系抗不安薬であるアルプラゾラムは、GABAの神経伝達を亢進することにより抗不安作用や催眠・鎮静作用などがある。以前より、バレリアンにはCYP3A4に影響があるとみられており、アルプラゾラムも添付文書よりCYP3A4により代謝を受けると記載がある。臨床上、CYP3A4代謝経路における体内動態に優位な影響はなかった、と言及があるが、バレリアン投与後、アルプラゾラムのCmaxが上昇したとも言及されており、併用することで体内で何らかの影響があることが推察できる。この組み合わせはGABAを介した似たような作用機序があると考えられるので、併用することで作用の増強も推察できる。そのことにより、眠気やふらつきなど、副作用が現れる可能性があるので注意が必要となる。また、今回は健康ボランティア、標準用量で評価されており、原疾患や高齢者、その他の併用薬、過量投与等により、体内動態が変わる恐れがある。「可能性が低い」と結論付けてあるケースであっても、使用する背景も念頭において、併用する際は留意する必要があると考えられるであろう。





