2025.11.13

エキナセアによる呼吸器感染症予防と抗生物質使用削減効果:システマティックレビューおよびメタ解析(ERA-PRIMA)

学術委員

菊地 伶弥

抗生物質の過剰使用は、薬剤耐性の主要因として国際的に懸念されている。 一次診療における抗生物質処方の約60%は呼吸器感染症(RTIs)に対するものであり、その多くはウイルス性または自然寛解が見込まれるケースのため不要な処方に分類される。 抗生物質による管理が必要とされるRTIsは約10%に過ぎず、この分野の適正な管理が抗生物質使用量削減の鍵となる。 1)

こうした背景の中、伝統的にRTIs予防に用いられてきたエキナセア(Echinacea purpurea, E. pallida, E. angustifolia)が注目されている。 近年の研究では、エキナセアに抗ウイルス作用や免疫調整作用があることが示されており、特にアルコール抽出製剤においては、インフルエンザウイルスなどのエンベロープウイルスに対する広範な活性が報告されている。 免疫系への作用としては、インターフェロンシグナルの活性化、好中球の走化性促進、抗炎症作用などが感染予防に寄与していると考えられている。

これらの知見を踏まえ、エキナセア製剤(Echinacea purpurea, E. angustifolia)のRTIs予防効果および抗生物質使用抑制効果を体系的に評価したメタ解析を紹介する。 2)
本システマティックレビューおよびメタ解析で、30件のランダム化比較試験(RCT)、39群、合計5,652名を対象に解析が行われた。
使用された製剤は複数存在するが、最も多く用いられ、かつ高い効果を示したのは新鮮な地上部から抽出されたエタノール製剤である。 この抽出法に基づく製剤は、以下のような有意な臨床効果を示した:

●RTIsの月間罹患率:32%低下 (RR=0。68、95%CI=0。61-0。77)

●少なくとも1回のRTIs罹患率:25%低下(RR=0。75、95%CI 0。69–0。81)

●再感染率:40%低下(RR=0。60、95%CI 0。46–0。80)

●合併症(気管支炎・肺炎など):56%減少(RR=0。44、95%CI 0。36–0。54)

●抗生物質使用率:40%減少(RR=0。60、95%CI 0。39–0。93)

●抗生物質使用日数:70%減少(IRR = 0。29)

安全性に関しても、重篤な有害事象は報告されておらず、忍容性は高いと評価された(RR=1。01、95%CI=0。83–1。23)。  副作用の発生率は対照群と同等であり、日常的な使用にも適していると考えられる。

本研究は、エキナセアがRTIsの予防、再発抑制、合併症軽減に有効であり、抗生物質使用の削減に寄与する可能性を示す科学的根拠を提供している。 特にエタノール抽出が最も効果的であることから、今後は製剤の標準化、投与期間、対象集団の明確化を含む高品質なRCTによるさらなる検証が求められる。 これにより、エキナセアは科学的根拠に基づいた自然由来の感染症予防の選択肢として、医療現場および日常生活への応用が期待される。 

[文献]

1)Stimson J、et al。 Risk of unintended consequences from lower antibiotic prescribing for respiratory tract infections in primary care。 J Infect。 2024;89(4):106255。 https://doi。org/10。1016/j。jinf。2024。106255
2)Gancitano G、et al。 Echinacea reduces antibiotics by preventing respiratory infections: A Meta-Analysis (ERA-PRIMA)。 Antibiotics。 2024;13(4):364。 https://doi。org/10。3390/antibiotics13040364