イチョウ葉の薬物相互作用が出血リスクと凝固プロファイルに与える影響:A comprehensive analysis

イチョウ葉には、抗凝固剤など医薬品との相互作用の可能性があることが示唆されており、以前より関連の研究論文は見られるものの、結果としてのエビデンスを示しているものには幅があるように思われる。今回は2025/4にpubmedに発表された最新の研究論文を紹介する。
目的として、この後ろ向き観察研究は、イチョウ葉エキスが関与する薬物相互作用の、出血リスクおよび凝固プロファイルに対する有病率と臨床的意義を調査するために実施された。
次に方法として、2022年1月から2023年12月の間にハイフォン国際病院に入院した患者のデータを使用した。18歳以上の患者、イチョウ葉エキスを単独または他の薬剤と併用して処方された患者、および投薬歴、臨床検査値、臨床結果を含む完全な医療記録の利用可能性で構成されていた。
得られた結果は、包含基準を満たした2,647件の処方箋のうち、342件で薬物相互作用が見られ、有病率は12.94%だった。
特に、イチョウ葉エキスは抗血小板薬、抗凝固薬、および非ステロイド性抗炎症薬と頻繁に相互作用し、クロピドグレルとアスピリンはそれぞれ2.61%という最も高い有病率を示した。オメプラゾールは、軽度の相互作用のうち頻度の高い薬剤(2.34%)だった。
出血性疾患の解析対象となった747名の患者のうち、31名(4.15%)に出血症状が認められ、相関解析の結果、臨床出血と凝固異常との間に強い相関が認められた(オッズ比1.75、p < 0.001)。さらに、イチョウ葉エキスとの薬物相互作用と出血リスク(オッズ比1.08、p < 0.001)および凝固異常(オッズ比1.49、p < 0.001)との間にも有意な相関が認められた。イチョウ葉エキスの薬物相互作用の重症度は出血リスクとは相関しなかった(OR: 1.01, p = 0.767)。クロピドグレル、アスピリン、セレコキシブ、ロキソプロフェン、ニフェジピン、オメプラゾールなどの特定の薬剤は、出血リスクおよび凝固異常と有意に関連していた(p < 0.05)。チカグレロル、エトリコキシブ、インスリン、オメプラゾール、ドンペリドンとの相互作用は、報告された出血量には影響を与えずに、凝固検査異常と関連していた。
結論として、臨床出血と異常な凝固結果の間に強い関連性があること、および イチョウ葉エキスの薬物相互作用、出血リスク、および異常な凝固の間に有意な相関関係があることが明らかになり、これらの知見は、臨床現場において、特に出血リスクの評価や凝固管理において、イチョウ葉エキスの潜在的な相互作用を評価することの重要性を強調している。
引用)Mai NTQ, Hieu NV, Ngan TT, Van Anh T, Van Linh P, Thu Phuong NT. Impact of Ginkgo biloba drug interactions on bleeding risk and coagulation profiles: A comprehensive analysis. PLoS One. 2025 Apr 8;20(4):e0321804. doi: 10.1371/journal.pone.0321804. PMID: 40198642; PMCID: PMC11991284.
参考)
イチョウ葉エキスはサプリメントとして不安症、アレルギー、認知症、眼疾患、末梢動脈疾患、耳鳴りなどのさまざまな症状・疾患に良いとされており、日本では記憶力の維持をサポートする機能性食品としても多くの商品が販売されている。抗血栓作用(血液凝集抑制作用、血液凝固能抑制作用など)を有するので、抗凝固剤や非ステロイド性抗炎症薬とは相互に作用が増強して出血傾向となるとされており注意喚起がなされていた。今回の結果より、各薬剤で差はあるものの相互作用が認められ、改めて注意が必要だと認識できる。また、2025/8より日本国内で初めてスイッチOTC化され発売されたオメプラゾールも、CYP2C19を介して相互作用が懸念されていたが、軽微ではあるが相互作用が認められた。今後は医療関係者だけでなく、植物療法を扱う関係者にも注意が必要となる。相互作用に関する研究論文は、数は少ないものの、新規に発表される論文は随時あり、最新の情報を入手し、相互作用の検討の際に参考することができる。





