第5弾 環境課題について考える
シリーズでお伝えしてきた食環境の課題について、今号では環境課題について考えていきます。近年、世界各地で地球温暖化による気候変動の影響があらわになり、日本でも米の品質低下や収穫量の減少、サンマなど回遊魚の回遊ルートの変化、果物の着色不良など、農林水産業への被害も深刻化しています。このように生産が安定しなくなっていく中で、食品ロス削減が急務であるほか、地球環境に負荷をかけない食環境が求められています。
エシカル消費
気候変動による食料生産への影響をすぐに解決するのは困難です。地球の未来のためには、私たち一人ひとりが人・社会・地域・環境に配慮した消費行動をとる、エシカル消費の取り組みが必要となります。商品・サービスを選択する時は、以下の3点を考慮しましょう。①この商品は誰が作り、お店までどのように運ばれてきたのかを意識する。②地球環境にやさしいか、人の暮らしを守って作られているのかを基準で選ぶ。③必要な分だけ購入し、シェアやリサイクルを行い、資源を有効に利用する。
食品ロスを減らし、地球環境に負荷をかけない暮らし
現在、世界の全ての人が十分に食べられるだけの食料が生産されているにもかかわらず、約1割の人が飢餓状態にあります。これは、食料がうまく行き渡っていないこと(食料分配の不均衡問題)に加え、食品ロスも大きな要因となっています。世界では食料生産量の3分の1が廃棄されており、日本ではまだ食べられるにも関わらず、一人当たり毎日おにぎり1個を捨てている計算で、このうち半分が家庭内での食品ロスとなっています。食品を破棄することで、それを作るためにかかった時間やエネルギー、資源も全て無駄になります。また、各家庭で、自炊をし、食事の計画、食品選び、調理などを工夫することで、地球への負担を減らし、資源の無駄を抑えることができます。地球環境に負荷をかけないエコロジカルな、あるいは、リジェネラティブな(環境回復型の)方法で栽培された農産物を選ぶことも大切です。日々の暮らしから、食品ロス削減や、環境負荷の少ない食品選びなど、地球環境にも配慮した食生活に一歩近づきましょう。
以下に、国連食糧農業機関の「食品廃棄物を減らし、食品のヒーローになるための15の簡単なヒント」を改変、加筆し、環境課題やSDGs委員会の考えをも視野に入れて16にして掲載します。
❶より健康的で持続可能な食生活を採用する:健康的な食事は手の込んだものである必要はない。/❷必要なものだけを買う:食事を計画し、買い物リストの作成で衝動買いを避ける。/❸形は気にしないで果物や野菜を選ぶ:基準を満たさず廃棄されることがあるが味は同じ。過熟の果物はスムージー、デザートに活用する。/❹食品を賢く保管する:古い製品は冷蔵庫の前に移動する。開封した食品は密閉容器で冷蔵し保存する。/❺食品表示について理解する:場合によっては「賞味期限」を過ぎてもまだ安全に食べられる。「消費期限」と「賞味期限」を理解する。/❻小さなことから始める:家では少量ずつ食べるか、レストランでは大きな料理をシェアする。/❼残り物を愛する:食べ残しは、後で食べるために冷凍するか、別の食事の材料に使う。/❽食品廃棄物を有効活用する:生ゴミを捨てるのではなく、堆肥にして循環させる。/❾食べ物を尊重する:農家の様子など、食べ物ができるまでの過程を知ることで、食べ物を尊重する。/❿地元の食料生産者を支援する:地元の農産物を購入し、地域の農家や中小企業を支援する。配送距離を短縮して二酸化炭素を削減する。/⓫魚の個体数を維持する:より豊富に存在する魚種を食べる。持続可能な方法で捕獲・養殖された魚を購入する。/⓬水の使用量を減らす:水がなければ食料生産できない。食品ロス削減は、生産に費やされた水資源の節約になる。/⓭土壌と水をきれいに保つ:電池や塗料、携帯電話、タイヤ、インクカートリッジなどは土壌に浸透し、天然資源に損害を与えるため、廃棄には注意する。/⓮豆類や野菜をもっと食べる:豆類は環境負荷の少ないタンパク源であり、乾燥保存が可能であり食品ロスが少ない。野菜は地産地消食品であるため、輸送による二酸化炭素を削減できる。/⓯共有することは思いやり:廃棄されてしまう食品を寄付する。/⓰エコロジカルでリジェネラティブな方法で栽培された農産物を選ぶ:エコロジカルな栽培や地球環境回復型の栽培を推し進めるため、有機農産物などの環境負荷の少ないものを選ぶ。特に途上国で生産されるスパイスや嗜好品、精油、果物なども環境回復型栽培などでフェアトレードされたものを選ぶ。
農林水産省 食生活と環境との関係 https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/r3/r3_h/book/part1/chap2/b1_c2_1_01.html
国連食糧農業機関の「食品廃棄物を減らし、食品のヒーローになるための15の簡単なヒント」 https://www.fao.org/fao-stories/article/en/c/1309609/