2023.8.1

サンダルウッドのヒト神経芽細胞腫細胞における神経炎症に対する神経保護効果

日本メディカルハーブ協会学術委員

村上志緒

神経炎症は、アルツハイマー病などを含むさまざまな神経疾患に関連する神経系の炎症反応である。多くの研究がサンダルウッド(Santalum album)抽出物の抗炎症の可能性を評価したが、in vitroでの神経炎症反応に対する効果を分析したものはない。また、抽出物の抗炎症作用のメカニズムについてもまだ解明されていない。

この研究では、サンダルウッド抽出物の抗炎症作用について、in vitroでの神経炎症反応をみることにより、免疫応答のメカニズムについて解明することを目的とした。

ヒト神経芽細胞腫細胞(SH-SY5Y細胞)を培養し、トール様受容体3(TLR3)アゴニストのポリイノスニック-ポリシチジル酸(PolyI:C)で神経炎症を誘発し、サンダルウッド抽出物を付与し、細胞の免疫応答について、いくつかの免疫機能の変化を示すパラメータについて検討した。そして、ヒト結腸癌由来の細胞株であるCaco2細胞において、PolyI:C誘発炎症反応に対して検討した。

その結果、サンダルウッド抽出物はSH-SY5Y細胞のTLR3を介した免疫応答を調節することが確認された。また、サンダルウッド抽出物を含む培地で細胞を処理することにより、IFN-β、IFN-α、MxA、およびOAS-1のmRNAレベルが大幅に増加し、IL-6、CXCL8、CCL2、およびIP-10が減少した。さらに、サンダルウッド抽出物はCaco2細胞におけるPolyI:C誘発性炎症反応を調節することが確認された。

これらより、サンダルウッド抽出物は、SH-SY5Y細胞におけるIFNおよび炎症性サイトカインの発現に間接的に影響を及ぼしていることが示唆された。サンダルウッドは、TLR2、TLR4の誘導、およびTRAF3、IRF3、NF-κB経路のTLR負の調節因子の調節を通じて、PolyI:Cが誘導する神経の炎症を抑制したと考えられる。

〔文献〕

K Suganya, QF Liu, BS Koo,  Santalum album extract exhibits neuroprotective effect against the TLR3-mediated neuroinflammatory Phytother Res. 2021 Apr;35(4):1991-2004.

〔参考〕

SH-SY5Y細胞:
ヒト神経芽細胞腫由来の細胞株。 神経芽細胞腫を有する4歳の女性患者の髄生検からSK-N-SHと呼ばれる元の細胞系を単離し、それをサブクローニングしたもので、ニューロンの機能および分化のインビトロ研究モデルとしてよく使用される。

Caco-2 cell:
ヒト結腸癌由来の細胞株。多孔性のメンブレンフィルター上に培養すると、小腸の円柱上皮細胞に似た刷子縁やタイトジャンクションの形態学的特徴を示し、P糖タンパク質(P-glycoprotein)やペプチダーゼなどの代謝酵素も発現する単層の細胞層を形成する。Caco-2細胞での透過係数(apparent permeability coefficient;Papp)は腸管吸収やバイオアベイラビリティと相関するとされており、薬物の消化管膜透過性のスクリーニングに有用である。