2022.9.25

セージ:口腔ケアに役立つハーブを学ぶ

博士(農学)

木村正典

口腔ケアに役立つハーブを学ぶ
Herbs that work for oral care

【学名】 Salvia officinalis L.(コモンセージ)
【科名】 シソ科 
【使用部位】 茎葉
【主要成分】 フラボノイド(ルテオリンなど)、精油(ツヨン、シネオール、カンファー)、フェノール酸(ロスマリン酸など)、ジテルペン型苦味物質カルノソール
【作用】 抗菌、抗真菌、抗ウイルス、収れん、発汗抑制、母乳分泌抑制
【適応】 口腔、咽頭の炎症、口内炎、歯肉炎、更年期や心身症の発汗異常、寝汗

すぐれた抗菌作用と収れん作用で全身の健康を守る
“長寿のハーブ”

コモンセージは地中海沿岸原産のシソ科の常緑小低木。学名Salvia officinalis L.、和名を「薬用サルビア」というように、サルビアの仲間です。一般に、食用や薬用のハーブを「セージ」、観賞用のものを「サルビア」と区別しています。

「治療する・救う」という意味のラテン語「salvus」が語源で、「長生きしたい者は庭にセージを植えよ」ということわざがあるように、“長寿のハーブ”、“若返りのハーブ“として古代ギリシャの時代から用いられてきました。樟脳のようなスッとした香りで苦味のある葉は、スパイスとしても利用され、豚肉の臭み消しや煮込み料理の味つけなどによく使われています。

メディカルハーブとしてのコモンセージの特徴は、強力な抗菌作用と収れん作用にあり、歯肉炎や口内炎などの口腔粘膜の炎症や、かぜによるのどの痛みや腫れに対し、ハーブティーやマウスウォッシュで使用されます。また、更年期のホットフラッシュや寝汗などの発汗異常の緩和、記憶力や認知機能の向上、消化促進、月経のトラブルの改善などの効果が認められ、気分が落ち込んでいる時や頭をスッキリさせたい時に用いるハーブとしても適しています。様々な薬効をもつコモンセージですが、作用が強いため、妊娠中・授乳中の使用や長期間の連続使用には注意が必要です

EFFECT コモンセージの効果・効能

コモンセージの精油成分や苦み成分には非常に強い作用があり、少量でもその効果を発揮します。
スッキリとした香りによるリフレッシュ作用は、ストレスで疲れた心にも有効です。

1. 歯肉炎、口内炎の予防・改善

強力な抗菌作用によって病原菌を撃退し、収れん作用によって歯茎をキュッと引き締めます。疲れると口内炎ができやすい人にも向きます。

2. のどの腫れ、咳、痰の緩和

うがいに用いると、のど粘膜の炎症が鎮まり、のどの痛みや咳、痰などのかぜの諸症状が緩和されます。かぜの予防にも有効です。

3. 更年期の悩みの改善

女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをもち、更年期特有のホットフラッシュやほてり、発汗異常、気分の落ち込みなどを改善します。

4. 消化促進

独特の香りと苦みが食欲を刺激します。また、消化酵素や胆汁の分泌を促進し、胃の働きをサポートすることもあります。

5. 美肌

化粧水など外用で用いると、肌を引き締めて毛穴の広がりを抑えたり、汗を抑えたり、傷などの出血を止めたりする働きがあります。

ATTENTION!

▶高用量の3週間以上の連続使用は避けてください。
▶妊娠中の方、授乳中の方は使用を避け、糖尿病や高血圧などの持病のある方は、医師に相談の上使用してください。

TOPICS スピリチュアル・ブームとホワイトセージ

アメリカンインディアンの人々によって儀式の中で用いられてきたハーブの1つにセージがあります。そこで使われるのは、米国カリフォルニアとメキシコ北西部が原産のホワイトセージ(学名:Salvia apiana Jeps.)です。ホワイトセージは浄化の力がとても強いと信じられ、乾燥させた茎葉に火をつけてお香のように煙を焚き、空間を浄化する「スマッジング」に利用されます。

近年、スピリチュアル・ブームに乗って、このホワイトセージの人気が高まり、ヨガや瞑想と共にスマッジングを取り入れる人が増えてきました。そのため、ホワイトセージのドライハーブ、精油、お香、スプレーなど様々なグッズが、通販サイトなどでも手軽に購入できるようになっています。

一方で、こうした流行により、伝統的なスマッジングの歴史やネイティブアメリカンの精神が軽視されることを懸念する声も挙がっています。また、野生のホワイトセージの乱獲や公有地での違法な収穫にも警鐘が鳴らされています。特に外国産のハーブを利用する時は、背景にある歴史や文化について、消費システムや環境問題も含めて考えてみることも大切です。

ボタニカルアート = 田中 沙織

博士(農学)
木村正典 きむらまさのり
当協会理事。(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK!プランター菜園のすべて』(NHK出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第61号 2022年9月