2021.3.5.

デトックス(解毒)ハーブの決定版 ダンディライオン

グリーンフラスコ代表

林真一郎

はじめに

 
ダンディライオンはデトックス (解毒作用)が顕著でありかつ繁殖力が強いため、インドのアーユルヴェーダやアラビアのユナニ医学、TCM(中国伝統医学)や北米の先住民医学などに幅広く用いられてきました。わが国にはおよそ40年前に妊婦さんが飲む「ノンカフェインのヘルシーコーヒー」として自然・健康志向が強い米国西海岸から紹介された歴史があります。さらに歴史をさかのぼれば戦後のコーヒー不足の時代に「代用コーヒー」として民間に広まったこともあり、時代の変化がハーブの評価を変えるよい例だと思います。さてメディカルハーブとしてのダンディライオンは葉部と根部の2つの使用部位があります。葉にはカリウムやカロチノイドが多く、利尿作用が強いことで知られます。それを表すようにダンディライオンのフランスでの民間の呼称であるピサンリpiss en litは「寝小便」「小便小僧」を意味します。 

今回はわが国でもたいへん人気が高いダンディライオンの根についてご紹介したいと思います。

ダンディライオンの含有成分

 
2003年に編集された ESCOP(植物療法欧州科学協同組合)モノグラフでは、ダンディライオンの主要成分として①オイデスマノリド型(eudesmanolid type)セスキテルペンラクトン化合物、②炭水化物(特にイヌリン)、③トリテルペン化合物(Taraxasterol)、④γ-ブチロラクトン配糖体(Taraxacoside)、⑤ミネラル (特にカリウムとカルシウム )などを記載しています。①はタラキサシンと命名されていた苦味質で Tetrahydroridentin Bと Taraxacolide glucosideなどです。②のイヌリンは春期は2%ほどですが秋期は40%にも達します。③の Taraxasterolは5環性トリテルペンアルコールです。④は p-ヒドロキシフェニル酢酸誘導体です。⑤のカリウムは1.8.2.6%も含有します。①③④の構造式を図1に示します。 

この他にダンディライオンには .β-シトステロールやスティグマステロールなどのフィトステロールやカフェ酸などのフェノール酸などを含みます。

図1 ダンディライオンの成分の構造式

ダンディライオンのイヌリンの機能性

 
イヌリンという名前はキク科のイヌラ Inula heleniumの根から抽出されたことによります。イヌリンは果糖にブドウ糖が2.100以上も連なった構造をした水溶性食物繊維です。イヌリンはヒトの消化酵素では分解されず大腸に届いて腸内細菌の栄養源になります。その結果、ビフィズス菌などの有用菌が優勢となり腸内環境を改善します。また、カルシウムなどのミネラルの腸管からの吸収を高めることが知られています。さらに腸内細菌による代謝の過程で短鎖脂肪酸が生成します。最近の研究では酪酸などの短鎖脂肪酸は腸のバリア機能を向上させることでアレルギーや関節リウマチ、糖尿病などを招くリーキーガットシンドローム (腸粘膜浸漏症候群 )の改善にも役立つことが明らかになっています。イヌリンはたいへん有用なプレバイオティクスなのです。

ダンディライオンの機能性と適応

ダンディライオンは欧州の伝統的植物療法においてネトルやバーチ(白樺)などと同様に春先に集中的に摂取して体質改善を進める春季解毒療法に欠かせないハーブとして知られます。また抗悪液質のハーブとしても知られますが、この場合の悪液質はがん悪液質の「筋肉(タンパク質)の減少を伴う体重減少」という意味ではなく現代風にいえば「生体内の酸化、糖化、慢性炎症状態」といってよいでしょう。ヒトは xenobiotics(異物)を主に肝臓で解毒(代謝)し、お通じや尿で排泄しますが、ダンディライオンの多様な成分は強肝・利胆(肝での胆汁分泌促進と胆での胆汁排出促進)・緩下・利尿といった作用により解毒のプロセスを促進させるのです。さらには腸管のバリア機能の向上と腸内環境の改善は体内への異物の侵入を防ぐと共に一度腸内に捨てた物質の再吸収(腸肝循環 )を防ぎます。こうした作用機序によりダンディライオンは消化不良(特に脂質)や便秘、アレルギーや関節リウマチ、肝障害や糖尿病予防に用いられます。

ダンディライオンのエビデンス

ここではダンディライオンとイヌリンの臨床研究を紹介します。イタリアで行われた研究では食欲減退、活力低下、黄疸など典型的な症状をもつ12人の肝臓疾患患者が1日当たり5mLのダンディライオンエキスの摂取を20日間続けることにより11人の血中コレステロール値が相当量、低下しました。また別の研究ではダンディライオンエキスが肝炎、肝臓の肥大、黄疸、胆汁分泌の低下による消化不良に効果的であることが実証されました。イヌリンでは健常男性12名(イタリア人平均23.3歳)を対象にイヌリン9gを含有するシリアルを4週間摂取した結果、血清総コレステロールおよび中性脂肪が減少し腸内環境が改善しました(PMID:10509770)。また便秘症の高齢女性35名(ドイツ人平均76.4歳対象群17名)を対象とした二重盲検無作為化比較試験においてイヌリン1日20gを8日間摂取し、さらに1日40gを19日目まで摂取したところ腸内環境と便通が改善しました(PMID:9129468)。

ダンディライオンの安全性と薬物相互作用

 
『メディカルハーフ安全性ハンドブック第2版』AHPA(米国ハーブ製品協会)編集(東京堂出版)によるとダンディライオンの安全性のクラス分類は1(適切に使用する場合、安全に摂取することができるハーブ)に、相互作用のクラス分類は A(臨床的に関連のある相互作用が予測されないハーブ)に分類されています。ただしダンディライオンには胆汁分泌促進作用があるため胆石のある人には注意が必要であるとされています(Mills and Bone 2005;Schutz et al.2006;Wichtl 2004)。
 
なおダンディライオンの(根ではなく)葉には接触皮膚炎が報告されていてセスキテルペンラクトン化合物に起因したものとされています(Guin and Skidmore 1987)。  またラットによる動物実験ではダンディライオンの根2%の茶剤には薬物代謝酵素 CYP2E1の阻害作用が認められました(Maliakal2001)。マウスによる動物実験ではダンディライオンの葉や根は利尿作用や尿中カリウムの増加が報告されています(Hook et al.1993)。

おわりに

 
最近はコーヒーの健康効果が報道されていますが、カフェインの摂りすぎはエネルギーの空ぶかし状態ですから注意が必要です。ダンディライオンは作用が緩和なので日常的な健康茶としてお茶代わりに飲むことをおすすめします。淹れ方は乾燥根およそ2gを熱湯200mLで3分間抽出します。なお乾燥根を軽く焙煎したほうが飲みやすくなります(フライパンではなく豆を炒る手網で自家焙煎します)。たんぽぽミルクティーの作り方は焙煎した根3gを熱湯60mLで5分間以上(できるだけ濃く)抽出し、牛乳140mLを加えて再加熱します。シナモンやクローブ、レモンピールなどでカプチーノスタイルにしてもおいしく楽しめます。ダンディライオンを特におすすめしたいのは油料理やヘビーな料理を食べると腹痛や頭痛を起こす人です。エストロゲン過剰の場合に肝臓でのクリアランス (代謝と排泄 )が促進されるので月経前症候群に効果的な場合もあります。授乳婦の催乳の目的にはフェンネルとブレンドするとよいでしょう。また全身のトーヌス(筋肉の張力)を高めるので加齢に伴うフレイルの予防にも有用です。ご家族みんなでお楽しみください。

グリーンフラスコ代表
林真一郎 はやししんいちろう
日本メディカルハーブ協会副理事長。薬剤師。臨床検査技師東邦大学薬学部卒。調剤薬局勤務を経てハーブショップ『グリーンフラスコ』開設。アロマやハーブなどがもつ植物のちからやコミュニケーション効果を個人の健康や社会の健康に生かす方法を提案している。日本赤十字看護大学大学院非常勤講師。著書に『ハーブと精油の基本事典』(池田書店)、『植物力をくらしに活かす緑の医学』『高齢者介護に役立つハーブとアロマ』(東京堂出版)。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第47号 2019年3月