2018.3.1.

高血糖の食事療法

管理栄養士 / 十文字学園女子大学非常勤講師

水津彩香

高血糖とは

人は食事から取り入れた糖(ブドウ糖)を、脳や筋肉のエネルギーとして消費しており、糖は生きるために欠かせない重要なエネルギー源です。糖は体内で血液を介して運ばれますが、血液中に含まれる糖の量(血糖値)は、摂取して消費するという「需要と供給」のバランスがとれていれば、一定の範囲内の変動におさまっています。しかし、食べ過ぎや運動不足などで、食物として取り入れられた糖が体内でうまく利用されない場合、血糖値が異常に高まり高血糖となります。高血糖を引き起こす要因は、過食や運動不足以外にも、肥満や加齢、ストレス、遺伝などさまざまありますが、いずれも高血糖状態が続くことで糖尿病を発症します。

高血糖や糖尿病の初期には、なかなか自覚症状が現れませんが、症状がないからといって放置すると「網膜症」や「腎症」、「神経障害」などの合併症を引き起こし、健康的な生活を送ることが難しくなります。高血糖が引き起こす糖尿病やさまざまな合併症を防ぐためにも、日頃から高血糖になりにくい食生活を心がけましょう。

 

食事のポイント

適切なエネルギー量の摂取

高血糖を改善するためには自分自身の適切な摂取エネルギー量を把握することが大切です。食事の量を、それぞれの人に合った量にすることで肥満を予防することもできます。また、外食をする際には、料理のエネルギー表示と自身の摂取エネルギー量を比較することで、上手に選んだり、残したりする目安となります。

目標とする摂取エネルギー量は、性別や年齢、肥満度、身体活動量、血糖値、合併症の有無などを考慮し、決定しますが、ここでは糖尿病の食事療法で用いる一般的な摂取エネルギー量の計算方法を表1にご紹介します。

 

バランスのとれた食事

高血糖を改善する上で、特別な食事があるわけではありません。適切な摂取エネルギー量を守ることに加え、炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素をバランスよくとり、ビタミンやミネラル、食物繊維を欠かさないことが重要です。食事を準備する際には、主食、主菜、副菜を揃えるよう配慮することで、自然と栄養バランスのよい食事となります(表2)。

1食の目安は、主食1品、主菜1品、副菜2品です。

例えば、摂取エネルギー量が適正であっても「ラーメンとチャーハン」や「お好み焼きとご飯」といった主食(糖質)に偏った食事は、食後高血糖になりやすいため避けなければなりません。

そのほかに、乳製品や果物も毎日、摂取したい食品ですが、食べ過ぎると乳脂肪分や果物の糖分などでエネルギー過多の要因となります。1日に1回を目安に取り入れるようにしましょう。

 

規則的な食事の時間

もうひとつ、重要なことは食事の時間です。適切なエネルギー量を守り、栄養バランスのよい食事であっても、まとめてドカ食いをしたり、少量でもダラダラと食べ続けたりしては、血糖コントロールを乱すことになります。

例えば、1日に1食や2食とした場合、食事と食事の時間が開きすぎてしまい、空腹状態が続いた後に食事を摂取することになります。すると、糖の吸収速度が速くなるため、食後の血糖値が急上昇し、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンが大量に追加分泌されます。これを続けているとインスリンを分泌する臓器である膵臓に負担がかかり、やがて膵臓の機能が衰えてしまいます。

また、少量をダラダラと食べ続ける場合は、ダラダラと上がる血糖値に対して、インスリンが常に追加分泌されるため、やはり膵臓への負担が大きくなります。

膵臓の機能が低下すると、徐々にインスリンの分泌量やインスリンの作用が低下し、血糖値が下がりにくくなります。膵臓の機能は一度、衰えると元に戻るのは難しいといわれています。膵臓を守るためにも、できるだけ1日3食を決まった時間に食べるようにしましょう。

 

食物繊維の摂取

食物繊維には、水に溶ける食物繊維(水溶性食物繊維)と水に溶けない食物繊維(不溶性食物繊維)の2種類があります。特に、水溶性食物繊維は水に溶けると粘度を増し、胃の中に停滞する時間が長くなります。それによって消化吸収のスピードも遅くなるため、食べた糖の吸収を緩やかにして血糖値の急激な上昇を抑えてくれます。このことから、初めに糖質を多く含む主食から食べるのではなく、野菜類や海藻類などの副菜から食べるほうが、食物繊維の作用で後から食べる主食の糖質がゆっくり吸収されるため、望ましい食べ方といえます。

水溶性食物繊維はこんにゃくや海藻類、きのこ類、芋類、果物類、ごぼうやオクラなどの野菜類に多く含まれています。芋類や果物類には糖も含まれていますので食べ過ぎには注意が必要ですが、こんにゃくや海藻類、きのこ類などは、ほとんどエネルギーに変換されません。塩分や油の摂り過ぎにならないよう調理法に注意しながら、積極的に食べるとよいでしょう。

また、ハーブの一種であるアーティチョークには水溶性食物繊維が豊富に含まれています。ヨーロッパやアメリカでは広く食用とされており、最近は、日本でもその効果に注目が集まり、少しずつ市場に出回っています。

 

ハーブを使って高血糖改善

ハーブを料理に用いることで余分な塩分や砂糖を抑えることができます。例えば、食卓塩の代わりにハーブソルトを使うことで食塩の摂取量を減らしたり、わさびや大葉、ニンニクなど薬味を多く用いることで醤油の摂取量を減らしたりできます。塩分は摂り過ぎると、高血圧を引き起こしたり、血管の老化を進行させたりするため、高血糖の方は糖と同様に控えなければなりません。

また、植物由来の甘味料であるステビアは、血糖値を上昇させずに甘味を楽しむことができます。砂糖の代わりにコーヒーや紅茶に入れたり、料理や手作りのお菓子に活用したりすることで、食事の幅が広がります。一方で、甘味料を使い過ぎると、徐々に甘味に鈍感になることもありますので、低エネルギー甘味料であっても使用頻度を控えるのがよいでしょう。

さらに、サラシアやギムネマ、ヤーコン、グァバ葉などのハーブは、いずれも食後の血糖値上昇を抑える働きが報告されています。ハーブティーなどで日常の食生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

管理栄養士 / 十文字学園女子大学非常勤講師
水津彩香 すいづ・ さやか
2004年、東京家政大学大学院家政学研究科修士課程修了 。埼玉医科大学病院にて管理栄養士として勤務後、2007 年、JICA青年海外協力隊にて栄養士隊員としてベトナムで活動。帰国後は、区立小学校栄養職員、福井大学医学部附属病院管理栄養士などを経て、現職。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第43号 2018年3月