2018.3.1.

【イタリアのハーブ事情】パドヴァとヴェネツィアを訪ねる

日本メディカルハーブ協会 国際情報委員

加藤絹子

今まで何気なく飲んでいたハーブティーに託された、たくさんの物語

ヴェネツィアから西に約30km、ヴェネト州パドヴァ。落ち着いた緑の街並みに歴史の重みと装飾の美しさ、Cafeに座りながら、街行く人々を夕暮れまでぼんやり眺めていたい。この街にあるパドヴァ大学は、1222年に創立。医学や自然科学の分野で名を馳せ、ガリレオやダンテ、ペトラルカが教鞭をとり、コペルニクスが学んだことでも有名です。

この5月にJAMHAのハーブツアーでも訪ねるパドヴァ植物園はヴェネツィアの保護を受けつつ、1545年にジュスティーナ修道院の一部を植物園にすることで開園しました。研究目的の大学付属施設の植物園としては世界で最も古い、世界中から集められた植物を見ることができる“緑のテーマパーク!”多くの人の手を借りて、地球の裏側から運ばれた植物が目の前いっぱいに広がります。今ではおなじみの野菜や植物の研究を、植物学者や医師を含む専門家がつまびらかにこの植物園で続けてきたのですね。

そんな思いでさっきまで飲んでいたハーブティーを見つめたとき、歴史など専門的な見地、農園の人々、運ぶ人……なんとたくさんの人やモノや場所を経由して一杯のハーブティーにつながることか!じんわりと温かい思いがしてきます。

パドヴァ植物園はイタリアのほかの植物園とどのような点で違うのか。ひとつには空間づくりがあげられます。入園して歩き始めると、徐々に450年前にタイムスリップしたような印象を受けるでしょう。ハーブと人類の歴史は長く、当初から植物を仲間や自らの健康、儀式のために活用してきました。過去と今を結びつけ、よく知るハーブ、珍しいものも含め、薬効や伝統、文化の一部としてハーブを見つめ学び直す植物園です。

ガーデニング、ハーブ栽培する人にも楽しい植物園です。園内はたくさんの植物であふれ、植物がひとつひとつの「点」ではなく、ほかの植物と流れる「線」として植えられています。歴史ある建築物と交わう巧みさは、緑のテーマパークのクライマックスの盛り上がりの巧みさを感じることでしょう。日々の暮らしにハーブをもっと活用するために、パドヴァの植物園で観た一画を参考にMyハーブガーデンを作ってみませんか。料理用のハーブは種子から簡単に発芽させられ、愛情込めて育てているとすぐに使ってみたくなってしまいます。

フリッジェンドマンジャンド

直訳すると、“揚げながら、食べながら”という意味でしょうか。“揚げたてが一番おいしい”。家庭料理の楽しさは、みんなでワイワイ、つまみ食いがあったり、子どもが料理する母親の横にくっついて、おしゃべりしながら、野菜の皮を剥きながら、作りながら食べて、食べながら作ることかもしれませんね。20代、私がイタリア留学していたときも、各家庭、料理はほとんどそうして賑やかに作られていました。一番楽しい思い出は、日曜日の昼家族全員が集まって、大きなダイニングで長~い昼食を楽しむこと。毎週のように日曜日の早朝は、お父さんと釣りに出かけたり、霧の中、山にハーブを取りに登ったり…。効率よくスーパーで買ってくるのもありだけど、ドタバタせずに楽しい気持ちで作れば、味にもきっと違いが出るに違いないですよね。

バジル、ボリジ、セージ、タイム、オレガノ、ローズマリー、クレソン、イタリアンパセリなど。日本の食卓でも使われる身近なハーブ、珍しいハーブ、ミックスハーブも含めるとイタリアンキッチンハーブは約150種類あるそうですが、イタリア料理にハーブは必須!ハーブがあれば、シンプルな料理もおいしくなります。

留学中、朝食を除く毎日2食、借りていた部屋の大家さんや友人の家でほとんど食べていました(4年間も(笑))。イタリアのお母さんたちが作る手料理は本当においしいし、飽きることがない。どの家庭でも私が男性並みに食べるので「うちの家庭料理は日本人の味覚によく合うのだ」と、料理を競い、張り合っていたようです(笑)。イタリア料理のレシピは簡単なので、最初は教わったように作ってみて、あとは自分なりにアレンジしてみる。大切なのは食べる人の顔を思い浮かべて作ったり、愛情いっぱい楽しい気持ちで作ることです。忘れることのできないイタリアの「おふくろの味」。シンプルなイタリアの家庭料理が恋しくて、今回のツアーでも、パドヴァでハーバルクッキングを開催することになりました。キッチンにみんなで集まって、先生を囲みながら、にぎやかに勉強しつつ、ワインも飲んで、たらふくおいしいものを食べましょう!イタリア料理にはご飯のおかずにピッタリ合うものもたくさんありますし、イタリアのおふくろの味と皆さんの家庭料理をミックスさせて、帰国後、各家庭「イタリア風おふくろの味」が作れたらいいですね。絶対おいしくできますよ。

料理を作るのが好きだと食材にも興味が湧いて、旅に出ても市場を見るのが楽しみになります。ヴェネツィアの朝市には野菜、果物、ハーブが押し合いへし合いズラリと並び、美しく興味深いものです。生活している人たちに交じって、魚市場や加工肉のお店を訪ねてみたり、旅行者であることを残念だなんて思わないで、食材って、こんなにたくさん種類があるんだ!と、そんな乗りで楽しんでしまいましょう。

日本メディカルハーブ協会 国際情報委員
加藤絹子 かとうきぬこ
ミュージカルの舞台から始まり、大河ドラマなど多数の TV、舞台、ドキュメンタリーの語り、CM など積極的にマスコミ活動を広げた後、チベット体操講師として国内外の女性から支持されている。世界中のさまざまな地域への渡航、居住経験などから、アーユルヴェーダ、植物学を中心としたオルタナティブな療法を学び、2008 年スリランカ伝統医学協会認定アーユルヴェーダインストラクターの資格を取得。インド、スリランカ開催のアーユルヴェーダシンポジウムへの参加をはじめ自然との共存、心身の健康を多岐にわたり提案している。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第43号 2018年3月