2017.12.1

【ホーソン】
日々の健康維持に使う、心臓のためのハーブ

JAMHA認定ホリスティックハーバルプラクティショナー、ハーバルプラクティショナー。

わかばやしなつみ

私が数年前に1年ほど住んでいたドイツでは、5月頃に遠目には桜に似た白い小さな花をぎっしりと咲かせる木をよく見かけました。桜かな?と思って近づいてみてみると、一緒に芽吹いていた葉の形が桜とは異なって、ホーソンだとわかります。

ちなみに、ドイツで春の到来を祝う5月に行われるお祭りでは、メイポールという柱を立てます。これはホーソンの木で作られるそうです(モミや杉、白樺を使うこともあるそうです)。このメイポールの下でマイボーレというハーブ主体の飲み物を飲むそうですが、多くの人たちは白ワインやビール、春らしい生のフルーツをふんだんに使った鮮やかな色のサングリアを飲んでお祭りを楽しんでいました。日本よりも期間も長く、夜の時間も長い冬を越え、春の喜びを植物とともに祝います。植物療法をはじめとした自然療法が生活に根づいた、ドイツらしさが感じられるお祭りです。そんなドイツでは、オーガニックショップや専門店、薬局(アポティケ)に行くとほぼ必ずホーソンのハーブティーやチンキ、ジュース、サプリメントが容易に手に入ります。ホーソンに限らず、多様なハーブ関連の商品がいろいろとあり、日本で生まれ育ったハーバリストとしては、うらやましい光景がいたるところに広がっているのです。もちろん、ドイツ人がみなハーブを生活の中に取り入れているというわけではありませんでしたが、いろいろな場所でたくさんのハーブ関連のものを目にするということは、それだけ需要があるということでもあるのでしょう。実際に住んでみたことで知る・経験することも多い貴重な期間でした。

ホーソンなどの木で作られたドイツのメイポール
ドイツで購入したホーソンのチンキ

さて、ホーソンは心臓のためのハーブといわれますが、そのニックネームからやや高齢者向きのハーブと思われることも多いようです。実際、老化によって心機能の低下は進みますので、ホーソンは年齢を重ねるとともに必要とする方が増えるハーブですが、心臓にトラブルを抱えている方に限らず、豊富なフラボノイド類によって生活習慣病予防や、ストレスケア、アンチエイジングにも利用が可能です。ぜひ日々の健康維持のためにもお使いいただきたいものです。今回、こちらで紹介するブレンドの割合はあくまで目安です。お好みで量や割合を変えたり、その他のハーブをプラスすることも可能です。いずれもチンキをつくって活用してもよいでしょう。

今回はCrataegus monogynaの花と葉を主体とするハーブティーのブレンド例をご紹介します。ホーソンは果実も使用しますが、以前ドイツで薬剤師やハイルプラクティカー(自然療法士)から、実の場合はサプリメントやジュースなどを活用することを勧められました。ハーブティーでは、果実から成分の抽出がしっかりできないためです。もちろん、果実を含むハーブティーを利用していただいても構いません。

なお、ここであげている不調で、疾患によって生じている状態(むくみ、動悸など)の場合や、心臓の機能低下、心臓疾患などは治療が必要な場合もありますので、安易に自己判断せず、必ず医師に相談の上使用してください。


むくみの軽減に

ホーソン2、スギナ1、エルダーフラワー1

ホーソンは心臓のポンプ作用を高める働きに期待できるハーブです。心臓から動脈に送り出された血液が末梢に届き、静脈を通って心臓へ戻る力が弱くなり、同時に水分代謝がうまく働かなくなることによって四肢のむくみが生じやすくなります。そこで、穏やかな利尿作用を促すスギナとフラボノイドが豊富なエルダーフラワーを併せることで、相乗効果に期待します。

冬場はブーツの季節。夕方頃にはブーツが入らない!と焦る前に、午後の休憩に1杯召し上がってはいかがでしょうか。

冷えの改善に

ホーソン2、エルダーフラワー1、ルイボス1

身体を冷やさないことは健康を維持するためにとても大切なことです。とはいえ、気温の下がる冬だけでなく、エアコンなどの空調によって夏も身体が冷えやすい環境にあり、結局1年中冷えているという方も少なくありません。

ホーソンによる心臓への働きかけは血流の改善にも期待できるということで、温めることが得意なエルダーフラワーや、代謝を促進するルイボスなど、相乗効果をもたらすハーブとブレンドします。このブレンドティーは必ず温かいものを召し上がってください。

血管を健やかに保つ

ホーソン2、グリーンティーまたはルイボス2

ホーソンにはOPCという抗酸化力の高い成分が含まれますので、血管の硬化(動脈硬化)を防ぐことに期待ができます。同時に健康的な血管は血流を促し、代謝を支えます。さらにグリーンティー(緑茶)には高い抗酸化力をもつエピガロカテキンガレートが含まれるため、相乗効果によってアンチエイジングに期待ができますが、同時にカフェインが含まれますので、気になる方は避けてください。その場合、同じく抗酸化に期待ができるルイボスをブレンドしてもよいでしょう。

ストレス状態のときに

ホーソン2、オレンジフラワー1、ジャーマンカモミール1、パッションフラワー1

さまざまなストレッサーによって影響を受けやすい現代社会に生きる私たちにとって、ハーブティーを活用することは、ハーブの成分からのアプローチ以外にも、香りや飲用するためのちょっとしたリラックスタイムなどがストレス状態の軽減に相乗効果をもたらしてくれます。これは強いストレス状態で胸から喉の間がつっかえる感覚や、圧迫感などを感じたときに意識的にリラックスするためのブレンドです。オレンジフラワーやジャーマンカモミールの優しい香りが心を穏やかにし、さらにホーソンやパッションフラワーをより飲みやすくしてくれます。

動悸を安定させる

ホーソン2、ペパーミント2

日々の生活の中で、少しの活動でも息苦しさや動悸を感じる方は、ホーソンを日頃から取り入れてはいかがでしょうか。運動不足から、駅まで歩くだけで息切れが…という日常の小さな不調にも、ハーブティーの飲用を続けながら徐々に運動量を増やしていくことで、心臓への負担を軽減することに期待ができます。

ホーソンは長期にわたって使用が可能なハーブですから、ペパーミントのすっきりした味をプラスすることで、夏には冷たくしてもおいしく召し上がっていただけます。

ドイツでは簡単に入手できるホーソンのハーブティー

20代前半から本格的に始めたハーブ生活もようやく10年を超えました。ドイツでの生活や日本でのハーバリストとしての活動を踏まえ、いつでも妊娠できる準備をしておこうと、日頃からハーブや精油を楽しみ、活用することで身体を整えてきました。幸いにも、望んだタイミングで昨年第一子を妊娠する機会に恵まれましたのは、これまでホーソンをはじめとしたさまざまなハーブを多用しながら、心と身体を地道に整えてきたことが功を奏したと思っています。ハーブを日々の生活に取り入れることで、一人でも多くの方が幸せに満ちることを願っています。

JAMHA認定ホリスティックハーバルプラクティショナー、ハーバルプラクティショナー。
わかばやしなつみ わかばやし・なつみ
JAMHA認定ホリスティックハーバルプラクティショナー、ハーバルプラクティショナー。AEAJ認定アロマインストラクター、アロマセラピスト。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第42号 2017年12月