マウスにおけるCYP2E1/Nrf2/HO-1およびNF- κ Bシグナル伝達経路の制御によるエタノール誘発肝障害に対するタラキサステロールの保護効果

ペンタシクロトリテルペン化合物であるタラキサステロールは、中国伝統的な薬草であるTaraxacum属(キク科タンポポ属)の植物から単離された主な活性成分の1つである。
今回紹介する研究の目的は、マウスにおけるエタノール誘発肝障害に対するタラキサステロールの保護作用とその基礎的なメカニズムを評価することである。
ICRマウスを対象とし、5%エタノールを含むLieber-DeCarli飼料を10日間与えた後、胃内投与により20%エタノール(5 g/kg BW)を単回投与した。マウスには毎日タラキサステロール(2.5、5、10 mg/kg)を胃内投与、ポジティブコントロールとしてチオプロニンを用いた。
マウスの肝臓の状態指数としては、血清中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、トリグリセリド(TG)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン-6(IL-6)を検出した。また、肝臓中の活性酸素種(ROS)、マロンジアルデヒド(MDA)、グルタチオン(GSH)の含量とスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性を測定した。肝組織の病理組織学的変化は、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色により観察した。肝組織における肝チトクロームP450 2E1(CYP2E1)、核内赤血球2関連因子2(Nrf2)、抗酸化タンパク質ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)、核内因子κB(NF-κB)シグナル伝達経路のタンパク質発現レベルは、免疫組織化学およびウェスタンブロット法により検出した。
その結果、タラキサステロールは、エタノールによる肝指数、血清中のALT、AST、TG値、肝臓中のTGおよびMDA含量の上昇、肝ROS産生を有意に抑制し、エタノールによる肝GSH値およびSOD活性の低下を抑制したことを確認した。また、タラキサステロールは、エタノールによって誘導される炎症性サイトカインTNF-αおよびIL-6の分泌を有意に抑制した。さらに、タラキサステロールは、エタノール誘発肝障害マウスの肝組織病理学的変化を改善した。そして、タラキサステロールは、エタノール誘発マウスの肝臓組織において、エタノール誘発によるCYP2E1の発現上昇を有意に抑制し、エタノール誘発によるNrf2およびHO-1の発現低下を上昇させ、抑制性κBα(IκBα)の分解およびNF-κB p65の発現レベルを抑制することが明らかになった。
これらの結果より、タラキサステロールが、CYP2E1/Nrf2/HO-1およびNF-κBシグナル伝達経路を介して抗酸化ストレスおよび抗炎症反応を発揮することにより、マウスのエタノール誘発肝障害に対して保護する作用を有することが示唆された。
〔文献〕Xu L, Yu Y, Sang R, Li J, Ge B, Zhang X. Protective Effects of Taraxasterol against Ethanol-Induced Liver Injury by Regulating CYP2E1/Nrf2/HO-1 and NF-kappaB Signaling Pathways in Mice. Oxid Med Cell Longev. 2018 Sep 23;2018:8284107. doi: 10.1155/2018/8284107.