九州地区イベント報告 有形文化財で楽しむ津屋崎の藍染イベント
日程:2022年7月23日(土) 会場:津屋崎千軒民俗館 藍の家(福岡県福津市)
茹だるような暑さが続いた日、天気は当然晴れ35℃予報。今日のコースは、楽しみにしていた「藍と共に日本の文化や暮らしをたどりながら、藍の生葉たたき染め体験」。
津屋崎千軒の代表的な建物の「藍の家」は、白い漆喰の塗り込め壁で両端に防火壁うだつが作られ、軒下と土間のある格子戸が美しい建物だ。120年前の建築とは思えないほどで、国の登録有形文化財に指定されている。
ひんやりとした風の通る三和土の広い土間に入るとなぜかほっとする感じがした。脊振の祖父宅を思い出させるのだ。見事な建具や欄間。藍の家代表の古閑さんの名物“流れるような説明”を受け、至る所に大工の知恵と仕掛けがあることを知った。何度へぇと言ったことか、とても楽しい。今日はこの場所で藍染ができる。
当時津屋崎は海上交通の拠点として栄えていたとのこと。その中でもひときわ風格のある建物の創業140年豊村酒造を見学した。入り口には漆喰の壁に杉玉。魔除けだろうか龍2柱が睨みを効かせている。綺麗に磨き上げられた内部には、吊り下がった動く神棚や季節によって様変わりできる建具の仕掛けがあり、大変興味深い。現物を残してくれて有難うと言いたい。
千軒の町並みや路地裏を散策した後は、お待ちかねのお昼、ホールフードマスター中島美香さんの素材にこだわった弁当。中でも気に入ったのは風味よくおいしかったトウモロコシおにぎりと藍葉入りがめの葉まんじゅう。黙食ではあったが、彩りよく見て楽しんで、香って楽しみ、食感味わう、贅沢な時間だった。
午後からは、いよいよ藍染め。今回藍染めに使うのは、近くの小学生が育てた摘みたて新鮮な蓼藍の葉と用意してあった藍(すくも)発酵染料。
布に、並べた葉を挟んで叩くことで、表裏に染めることができる。
この時期にしかできない染め方で貴重な体験でうれしい。グラデーションに藍を染め重ねて…と、完成図は頭にある。瓶底でトントンと藍の葉を叩く音と時折吹き抜ける風を感じながら皆さんしばし集中。津屋崎藍いろの会の柴田先生と竪山先生の締め方アドバイスが決まり、デザインが形となってゆく。
藍の成分は水に溶け、分解、酸化して青いインジゴができる。うまく染められるか、藍との勝負だ。タイマーを読み上げながら模様に合わせて2段階3段階と染め濯ぎを繰り返し進める。
最後にたっぷりの水で濯ぎ広げると、あちこちで歓声が上がり楽しい鑑賞会となった。想像は現実に。なんて素敵な時間、そして空間。
感動である。おかげで暑さも吹き飛ばしあっという間の1日、楽しいひとときだった。
蓼藍の葉
最後にスタッフの皆様、コロナ禍でも楽しめるよう、随所に工夫され暑い中ご準備いただき厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第66号 2023年12月