2024.2.3

シナモンの植物学と栽培

当協会理事

木村正典

今回は、シナモンの特徴や栽培方法などを、植物学の視点で解説します。

分類・名称

分類

シナモンは、広義にはクスノキ科(Lauraceae)キンナモムム属の総称(Cinnamomum spp.)で、中義にはそのうちのシナモンとしてスパイス利用されるものの総称であり、狭義にはセイロンシナモン(Cinnamomum verum J.Presl)を指します。

シナモンの和名は「ニッケイ(肉桂)」あるいは「ニッキ」で、広義、中義では「シナモン」=「ニッケイ」となります。しかし、狭義での和名の「ニッケイ」はCinnamomum sieboldii Meisn.を指し、セイロンシナモンはセイロンニッケイと呼ばれます。

また、中国では、シナモンのことを「肉桂」といい、広義、中義には「シナモン」=「肉桂」となります。しかし、狭義の「肉桂」はカッシア(Cinnamomum cassia (L.) D.Don)を指し、セイロンシナモンは「锡兰肉桂(錫蘭肉桂)」と呼ばれます。日本のニッケイ(肉桂)と、中国の肉桂とでは異なる植物を指しますので注意しましょう。

多くの国で、セイロンシナモンとカッシアを中心に、インドネシアンシナモン(Cinnamomum burmanni (Nees & T.Nees) Blume)やサイゴンシナモン(Cinnamomum loureiroi Nees)など数種を含めて「シナモン」の名で呼ばれています。流通量はカッシアが多いこともあって「シナモン」の名は中義で用いられていることが多い一方、狭義に自国のものを指していることもあります。単に「シナモン」や「ニッケイ」では中義なのか狭義なのかもわかりませんので、学名で確かめる必要があります。

ここでは「シナモン」を中義で用います。

クスノキ科の植物

クスノキ科は基部被子植物(原始的被子植物とも)に分類され、被子植物が誕生した初期の頃の植物を祖先とし、その後に進化した真正双子葉類と違って、受粉のための訪花昆虫はハチやチョウ、ガではなく、それらよりも古くに誕生したと考えられている甲虫やハエ、アザミウマなどです。

クスノキ科にはクロモジやアオモジ、ローレル、ローズウッド、オコテア、サッサフラス、ラヴェンサラ、アボカドなどがあり、芳香のあるものが多く、木本を中心にアジアや南米などに56属3,000種余りを有します。キンナモムム属には261種が知られており(World Flora Online)、そのうち、スパイスや薬用とされる主なものを下記に示しました。

名称

属名のCinnamomumは古代ヘブライ語のqinnāmônに類似する古代ギリシャ語kinnamōmonが語源で、cinein(巻く)とamomos(申し分ない)の合成語ともいわれており、1760年に命名されました。種小名のverumはラテン語で「本家の」の意です。

英名はcinnamonで、語源は学名と同じですが、学名よりも古く14世紀までに誕生しています。和名のニッケイ(肉桂)は中国語由来で、日本語の音読みです。中国ではキンナモムム属植物のうち、シナモンに近いものを「桂」、クスノキに近いものを「樟」と呼んでいます。

桂の中で樹皮の肉厚なシナモン類やその樹皮を肉桂(発音はròuguì)と呼びますが、狭義にはカッシアもしくはその樹皮を指します。肉桂を含めたシナモン類の樹皮を「桂皮」と称しますが、狭義にはヤブニッケイやランダイニッケイ、ジャワケイなどの樹皮を指します。

「桂」はモクセイ科のキンモクセイ(桂花)にも用いられます。

一般名のカッシアは学名(Cinnamomum cassia (L.) D.Don)の種小名由来ですが、マメ科のカッシア属(Cassia)や、旧学名がカッシア属であったセンナ属(Senna)(ハナセンナ(アンデスの乙女)など)やカワラケツメイ属(Chamaecrista)の一部をカッシアと呼んでいるので注意が必要です。

人とのかかわりの歴史

シナモンの歴史はきわめて古く、古代エジプトではセイロンシナモンとカッシアの両方がミイラの保存に用いられていました(Abdel-Maksoud, 2011)。

ディオスコリデス(A.D.40頃-90頃)の『De Materia Medica(薬物誌)』やアウィケンナ(イブン・スィーナー)(980-1037)の『Canon Medicinae(医学典範)』など、B.C.5〜19世紀の欧州を中心とする医学書12冊を調べた結果では、セイロンシナモンは11冊に掲載され、単独処方ハーブのトップ26に入っており、カッシアは、12冊全てに収載され、トップ14に入るとされています(De Vos, 2010)。

15世紀フランスの『Le Livre des Simples Medecines』(サレルノ医学校の『Circa instans』に由来する論文の翻訳)には、シナモンは、脳の機能を高め、傷を治し、寒さで弱った胃と肝臓の機能を高め、食欲回復、唇のひび割れやただれ、心臓疾患、失神に用いると記されています(Nam, 2014)。

日本には樹皮が飛鳥~奈良時代に渡来し、正倉院に「桂心」の名で収納されており、カッシアとの推測もありますが樹種は不明です。江戸時代にニッケイが渡来し、幕府主導で薬用植物として薬草園での国内生産が図られ、当初は山口、石川、熊本、宮崎に、後に鹿児島、高知、和歌山、静岡など各地に普及したとされています(柳澤, 2020)。

ニッケイは樹皮があまり香らず根皮を利用します。薬用のほか、江戸時代から八つ橋(焼き菓子)や肉桂餅(求肥菓子)などの菓子原料とされました。明治以降には、薬用利用が減ってニッキ飴や饅頭など各地の名産菓子などでの利用が増えました。現在では国内生産は行われていないため、主としてカッシアを輸入して用いています。

カッシアはシナモンの中で最も強く香り、セイロンシナモンの代用とされるほか、樹皮が薬用として重要ですが、クマリン含量の高いことが問題になっています(後述)。

一方、セイロンシナモンは、クマリン含量が極めて低く、カッシアのような辛味もなく、爽やかな甘味が特徴で、菓子や料理、飲料などに広く利用されています。セイロンシナモンには、抗菌、抗寄生虫、降血糖、降圧、降コレステロール、抗酸化、アルツハイマー病の特徴であるタウ凝集・フィラメント形成を阻害、破骨細胞形成阻害、抗分泌促進、抗胃潰瘍、抗炎症、創傷治癒、肝臓保護などの作用があり、毒性や副作用は最小限であると報告されています(Ranasinghe et al., 2013)。

セイロンシナモンの樹皮(バーク)と葉(リーフ)、カッシアの茎葉などの精油はアロマセラピーでも利用されます。

中国では、紀元前から利用されており、当時の文献に記載されている「桂」はカッシア(もしくはベトナムニッケイ)、「菌桂」はインドネシアンシナモンと推定されています(真柳、1995)。

現代の中薬の主体はカッシアで、植物および樹皮を肉桂ニッケイと呼び、栽培5~6年目の幼樹の幹皮を巻いた厚さ1~3mmのものを「官桂カンケイ菌桂キンケイ桂通ケイツウ)」、10年ものの幹皮を日干しした厚さ3~6mmのものを「企辺桂キヘンケイ清化桂セイカケイ)」、老樹の地上30cmに切れ目を入れて幹皮を環状に剥がして乾かした厚さ約4mmのものを「板桂バンケイ桂楠ケイナン)」、官桂のコルク層を取り除いたものを「桂心ケイシン」、官桂の塊片を「桂砕ケイサイ」と言います。

形態・成分

形態

クスノキ科は、単子葉に似て、花冠と萼の区別が明瞭でなく、花被片(花弁と萼片)や雄しべの数が三数性(3の倍数)を示します。葉は革のように固い革質かくしつで、向軸こうじく面(表面)のクチクラが厚く光沢のある常緑照葉樹の多いほか、各器官の精油細胞に精油を含有して芳香を有するものの多い特徴があります。

キンナモムム属の葉には、三行脈が多いほか、互生で、葉の出る開度が180度→90度→180度→270度を繰り返すコクサギ型葉序と呼ばれる特異な着き方をするものの多い特徴があります。水平に伸びた枝では重力の関係か葉柄がねじれて180度反対側に二列に並びますが、縦に伸びた枝では十字対生のように見え、実際に対生のところもあります。コクサギ型葉序は、らせん型葉序(互生)と十字対生と近接していることが報告されており(Yonekura et al., 2019)、互生から対生への進化の途中とも考えられます。

一般に樹木の茎(幹や枝)は、外側からコルク層、コルク形成層、コルク皮層、皮層、師部、維管束形成層、木部の順に配列しており、維管束形成層の外側を「樹皮」、内側の木部を「材」と称します。

また、コルク層からコルク皮層までを周皮といいます。樹皮を外樹皮、内樹皮に分ける場合、機能しなくなった師部から外側を外樹皮、機能している(生きている)師部を内樹皮と呼びます。外樹皮と材はほとんどが死んだ細胞ですので、師部周辺のみで生きていることになります。鹿などは樹皮を維管束形成層まで食べるため、維管束が作れなくなり枯死します。

クスノキ科の樹皮の精油細胞はコルク皮層、皮層、師部に散在し、機能していない細胞層にも存在します。

セイロンシナモンは、コルク層を除去して、コルク形成層から維管束形成層までの間を利用します。カッシアも同様ですが、コルク層を着けたものも流通します。これらは、立ち木の樹皮を剥ぐ場合、維管束形成層まで剥ぐと枯死してしまうので注意が必要です。

成分

セイロンシナモンに含まれるポリフェノールとしては、バニリン酸、カフェ酸、没食子酸、プロトカテク酸、p-クマル酸、フェルラ酸などが報告されています(Muchuwetiet et al, 2007; Nabavi et al., 2015)。

セイロンシナモンの精油成分は部位により異なり、樹皮の主成分はシンナムアルデヒドで、水蒸気蒸留で90%、ソックスレー抽出で62~73%ととする報告があります(Wong et al., 2014)。樹皮中のシンナムアルデヒド含有率については、セイロンニッケイよりもカッシアで高く、ニッケイの根皮で低いとされています。

セイロンシナモンでは、ほかにβ-カリオフィレン、安息香酸ベンジル、リナロール、オイゲニルアセテート、シンナミルアセテート、オイゲノールなどを含有します。

一方、葉にはオイゲノールを80%以上含有し、果実にはシンナミルアセテートとカリオフィレンを主成分とすることが知られています(Nabavi et al., 2015)。また、花にはシンナミルアセテート42%、トランス-α-ベルガモテン8%、カリオフィレンオキサイド7%を含有することが報告されています(Jayaprakasha et al., 2000)。

カッシアでは、樹皮の収油率が1~5%(平均3%)、葉の収油率が0.4~1.6%(平均1%)であり、主成分のシンナムアルデヒド含有率は、樹皮で61~91%(平均77%)、葉で40~86%(平均67%)とする報告があります(Krishnamoorthy et al., 1999)。

精油の収油率や成分組成と樹齢(5年、12年、20年)との関係について、インドネシアンシナモンでは、収油率は、葉では樹齢5年で1.3%でその後減少して樹齢20年で半減、幹樹皮では樹齢12年で3%と最も高く、樹齢20年で2%と低下、シンナムアルデヒド含有率は、樹齢12年で幹樹皮で82%、葉で84%と最も高く、樹齢20年では幹樹皮で76%、葉で68%と最も低いことが報告されています(Fajara et al., 2019)。

カッシアではクマリン含量の高いことが問題になっています。クマリンには過剰摂取によって肝毒性や癌を引き起こす可能性があるとされ(AFC, 2004)、耐容一日摂取量(TDI;毎日摂取しても健康被害の起こらない一日当りの最大摂取量)は欧州食品安全機関( EFSA )では0.1mg/kg体重/dayとされています(Abraham et al., 2010)。

ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR, 2004)では、カッシア粉末1kg当り2.1~4.4g(0.2~0.4%)のクマリンを含有するとし、小さじ1杯(5 g)で10.5~22 mgと、体重50 kgの人のTDI(5mg)を超えることになります。

セイロンニッケイのクマリン含量はごく僅かで、インドネシアンシナモンでは0.003%と、セイロンシナモン(0.0017%)よりやや高いことが報告されています(Tisnadjaja et al., 2020)。

Sproll et al.(2008)はドイツ国内のシナモンクッキーの85%が2~88 mg/kg(平均25 mg/kg)のクマリン含量であり、ドイツ国内で流通する粉末シナモンの大部分がカッシアもしくは特定されていないとしています。

Blahová and Svobodová(2012)は、チェコの粉末シナモンのクマリン含量は平均3.9 g/kgであり、表示はないもののいずれもカッシアであることは明らかだとしています。

岩崎ら(2008)は、日本に流通するカッシアのクマリン含量は3.3 g/kgでセイロンシナモンの200倍以上あること、菓子中では焼き八つ橋で41 mg/kg、ビスケットで2~5mg/kg、ニッキ飴で4 mg/kgと低いこと、シナモンサプリメントでは2カプセル(約1 g)当り2.2~3.7 mgであること、体重50kgの人のTDI(5mg)に相当する量としては、スパイスとしてのセイロンシナモンで360 g、カッシアで0.9~8.6 gであり、菓子では焼き八つ橋14~29枚、ビスケット130~970枚、ニッキ飴284粒相当でほとんど問題にならないことを報告し、サプリメントでは表示摂取目安量がTDIの44~74%で、サプリメントとシナモン含有食品とを合わせて摂取するとTDIを超える可能性があるとしています。

性状と栽培

スリランカを中心とする産地では播種による実生みしょう繁殖ですが、日本では種子を入手しにくいので苗木を購入して育て、その後は挿し木、取り木などで繁殖します。

樹皮の収穫はカッシアでは樹齢5~15年の幹や枝で行い、伐採して、もしくは立木のまま樹皮を剥いで収穫し、薄いものから厚いもの、巻いたもの、コルク層の着いたもの、塊片、粉末など様々な形態で流通します。

一方、セイロンシナモンは播種から最初の収穫まで3~5年待ち、樹高2m、幹径2cm以上になったら、地際から15cmのあたりで切って収穫します。といっても切り倒しておしまいではなく、切り株からひこばえ(萌芽)を立ち上げるコピシング(coppicing;萌芽更新ほうがこうしん)という技術で、切り株からひこばえを8~12本立ち上げます。萌芽して2年経った幹を収穫し、1年目のものは翌年収穫に回します。2年目のものを切るとまたひこばえが発生しますので、毎年の収穫が可能になります。セイロンシナモンはカッシアに比べて細くて若い幹を収穫するため、樹皮を薄く密に重ねて巻くクイル(quill)生産に向いています。棒状のものはスティックとも呼ばれますが、そのほかにも破片(チップ)や粉末(パウダー)、精油(オイル)も流通します。

スリランカでは年2回収穫します。日本でのコピシングの最適時期は、根が水を吸い上げる直前の2~3月で、4~10月では枯死率が高くなります。コピシングは単幹たんかん(一本立ち)から株立ち樹形を作る時や、里山管理(薪生産)、備長炭生産(ウバメガシ管理)などにも用いられます。切る位置が高くなるとポラード(pollard;台伐だいぎり萌芽)と呼ばれ、北山杉のような台杉だいすぎや、葉の収穫を目的とするクワやオオシマザクラの栽培などで用いられています。

引用文献

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主要なCinnamomum(キンナモムム属)植物 学名はWorld Flora Online(WFO)に従った。

学名/Cinnamomum austrosinense Hung T.Chang
学名のラテン語読み/キンナモムム・アウストゥロシネンセ 
種名の意味/中国南部の
一般名/カナンニッケイ(華南肉桂)、華南桂、牡丹葉桂皮、False cassle-bark
原産・分布/台湾、中国南東部原産
特徴・利用/
この学名はWorld Flora Onlineには記載がない。樹高16mの常緑高木。葉長8~16cm、葉幅3~8cmの長楕円形で大きい。3行脈。樹皮は桂皮同様に薬用に、桂皮油は香料原料に、葉の粉末はお香原料に、果実は風邪や腹痛に用いる。

学名/Cinnamomum bejolghota (Buch.-Ham.)Sweet 
学名のラテン語読み/キンナモムム・ベヨルゴータ
主なシノニム/Cinnamomum obtusifolium (Roxb.) Nees
一般名/ベトナムニッケイ(越南肉桂)、ベトナムケイ(越南桂)、鈍葉樟(ドンヨウショウ)
原産・分布/ヒマラヤ、中国南部~インドシナ半島原産
特徴・利用/
樹高25mに達する常緑高木。ミャンマー、タイ、ベトナムでは自生する一般的なシナモン。標高600~1800mに自生。葉は新葉で赤味を帯び、成葉で光沢を帯びる。葉長10~22cm、葉幅4~6cmの楕円形。樹皮はベトナム桂皮の名で桂皮の代用とされる。中国では「鈍葉樟(ドンヨウショウ)」と呼ばれ、中薬では枝皮を「山肉桂(サンニッケイ)」と呼び疼痛、下痢、リウマチ、無月経、ヘビの咬傷、骨折、出血に用いる。

学名/Cinnamomum bodinieri H.Lév.
学名のラテン語読み/キンナモムム・ボディニエリ
種名の意味/仏の植物学者Émile-Marie Bodinierへの献名
一般名/猴樟(コウショウ)、香樹(コウジュ) 
原産・分布/中国原産
特徴・利用/
樹高16mの常緑高木。葉は互生し、葉長8~17cm、葉幅3~10cmの卵形。3行脈ではなく、側脈は4~6対で互生。中国では「猴樟(コウショウ)」と呼ばれ、中薬では根皮や茎皮を「猴樟(コウショウ)」と、果実を「猴樟果(コウショウカ)」と呼んでいずれも呼んで駆風、鎮痛に、茎皮はやけどに用いる。

学名/Cinnamomum burmanni (Nees & T.Nees) Blume
学名のラテン語読み/キンナモムム・ブルマンニ
種名の意味/ビルマの
主なシノニム/Cinnamomum macrostemon Hayata
一般名/インドネシアンシナモン、ジャワケイ(爪哇桂)、インドグス(印度楠、印度樟)、タイナンニッケイ(台南肉桂)、Indonesian cinnamon, Batavia cinnamon, Batavia cassia, Padang cassia, korintje, kayu manis, 陰香(インコウ) 
原産・分布/インドネシア原産。中国南部からマレーシア、インドネシア(特にスマトラ島、ジャワ島)で広く栽培。
特徴・利用/
樹高20mに達する常緑高木。葉は革質で葉長6~10cm、葉幅2~4cmの長楕円形~卵形。樹皮にはケイヒアルデヒド、オイゲノール、サフロールなどを、葉にはオイゲノールやリナロールなどを含む。シナモンとして欧米に輸出される。中国では「陰香(インコウ)」と呼ばれ、中薬では樹皮を「桂皮(ケイヒ)」や「陰香皮(インコウヒ)」と呼び食欲不振や腹脹、水瀉、疼痛、リウマチ、打撲・捻挫などに、葉を「陰香葉(インコウヨウ)」と呼びリウマチや腹痛、下痢などに、根を「陰香根(インコウコン)」と呼び心痛、胃痛に用いる。ジャワニッケイと呼ばれる植物は本種のほかにも数種あり、Cinnamomum javanicum Blumeもその一つ。

学名/Cinnamomum camphora (L.) J. Presl
学名のラテン語読み/キンナモムム・カンフォラ
種名の意味/樟脳の、樟脳に似た香りのする
一般名/クスノキ(楠木、樟木)、クス(樟、楠)、カンファ―トゥリー、camphor tree、 樟(ショウ)
原産・分布/東アジア原産。関東以南に自生し九州に多い。
特徴・利用/
樹高30mに達する常緑高木。台湾には樹高40mを超える巨木がある。日本にも各地に巨樹がある。葉は互生、卵形、革質、3行脈で、葉脈の分岐点にダニ室を有する。全草に樟脳の香りがある。枝葉を蒸留して得られる結晶が樟脳(カンファー)で、防虫剤として重要。かつて本種の亜変種ともされたホウショウ(芳樟)は樟脳をほとんど含まずリナノール含有量が高い。中国では樟(ショウ)と呼び、中薬では木材を「樟木(ショウボク)」と呼んで胃痛、脚気、痛風、疥癬、打撲傷、ムカデの咬傷に用いる。

学名/Cinnamomum cassia (L.) D.Don
学名のラテン語読み/キンナモムム・カッシア
種名の意味/皮を剥ぐ
主なシノニム/Cinnamomum aromaticum Nees
一般名/カッシア、カシア、チャイニーズシナモン、シナニッケイ(支那肉桂)、トンキンニッケイ(東京肉桂)、ケイ(桂)、肉桂(ニッケイ、Cassia, Chinese cassia, Chinese cinnamon
原産・分布/中国南部~インドシナ半島に自生し栽培される。
特徴・利用/この学名はWorld Flora Onlineでは未チェック状態。種小名のcassiaは皮を剥ぐの意の古代ヘブライ語のgastaに基づき、最終的には中国語を起源とするともいわれている。高さ17mに達する常緑高木。樹皮を肉桂や桂皮、カッシア、カシアなどと呼んで薬用やスパイスに利用される。単にシナモンの名で流通しているものが多いので注意。シンナムアルデヒドを80%程度含有する。産地によって広南桂皮、東興桂皮などと呼ばれる。中薬では樹皮を「肉桂(ニッケイ)」(桂皮とも)と呼んで四肢の冷え、脈の衰弱、亡腸、虚脱、腹痛、下痢、無月経などに、茎葉を蒸留した精油を「肉桂油(ニッケイユ)」と呼んで肉桂同様に内服もしくはリウマチなどに外用する。

学名/Cinnamomum chekiangense Nakai
学名のラテン語読み/キンナモムム・ケキアンゲンセ
種名の意味/中国浙江省産の
主なシノニム/Cinnamomum japonicum Siebold ex Nakai、Cinnamomum tenuifolium (Makino) Sugim.、 Cinnamomum yabunikkei H.Ohba、Cinnamomum pedunculatum var. tenuifolium Makino
一般名/ヤブニッケイ(藪肉桂)、マツラニッケイ(松浦肉桂)、ウスバヤブニッケイ(薄葉藪肉桂)、クスタブ(樟椨)、クロダモ(黒梻)、Japanese cinnamon、天竺桂(テンジクケイ)、山桂(サンケイ)、野桂(ヤケイ)
原産・分布/日本(福島以南)、台湾、韓国済州島、中国
特徴・利用/
樹高15mに達する常緑高木。葉はやや革質で、葉長9~12cm、葉幅3~5cmの長楕円形。3行脈で、葉脈が葉縁まで達しない点でニッケイと見分けられる。ニッケイほど香らない。葉の背軸面がシロダモほど白くなく、葉脈も盛り上がっていない点でシロダモと見分けられる。6月に開花。果実は直径1~2cmの球形で黒熟する。沖縄にはシバニッケイやマルバニッケイとの雑種と考えられるものも自生。建材や薬用に。種子から香油や蝋を。中国では「天竺桂(テンジクケイ)」と呼ばれ、中薬では樹皮を「桂皮(ケイヒ)」と呼び、腹冷胸満、嘔吐噎膈、リウマチ、打撲による血の鬱滞、痔の出血に用いる。

学名/Cinnamomum citriodorum Thwaites
学名のラテン語読み/キンナモムム・キトゥリオドルム
一般名/マラバールシナモン、Malabar cinnamon
原産・分布/西インド、スリランカ原産
特徴・利用/
種小名の通りレモンの香りがする。シンナムアルデヒドを45%含有する。

学名/Cinnamomum daphnoides Siebold & Zucc.
学名のラテン語読み/キンナモムム・ダフノイデス
種名の意味/ジンチョウゲ属Daphneに似た
主なシノニム/Cinnamomum brevifolium Miq., Cinnamomum maruba Meisn., Cinnamomum sericeum Siebold ex Lukman.
一般名/マルバニッケイ(丸葉肉桂)、コバノヤブニッケイ(小葉の藪肉桂)、コウチニッケイ(高知肉桂)、トサニッケイ(土佐肉桂) 
原産・分布/日本固有種。九州~トカラ列島に自生
特徴・利用/
樹高10mに達する常緑亜高木。葉は革質で葉長3~7cmの倒卵形で先端が丸い。3行脈。葉の向軸面に毛が散生する。また、葉の背軸面には軟毛が密生してビロードのよう。5~6月に開花。果実は直さ9mmの楕円形でドングリの様なパンツを履き、やがて黒塾する。樹皮、葉に芳香がある。島嶼部では海岸低木林を形成。奄美~慶良間にはシバニッケイとの中間タイプとされるケシバニッケイも自生。

学名/Cinnamomum doederleinii Engl.
学名のラテン語読み/キンナモムム・ドエデルレイニイ
種名の意味/生物学者Ludwig H. P. Döderleinへの献名
一般名/シバニッケイ(柴肉桂)、ヒメニッケイ(姫肉桂)
原産・分布/北米東部原産。奄美大島以南に自生
特徴・利用/
樹高2~8mとやや小ぶりな常緑小高木。葉は革質で葉長3~7cm、葉先が尖って背軸面はマルバニッケイほど白くない。3行脈が目立ち、葉縁はやや反り返る。梅雨時に葉腋にやや黄色~黄緑色を帯びた小花を開花。果実は楕円で黒熟する。主成分はl-リナロールで45%含有するという報告がある。近縁のマルバニッケイよりも南に分布。

学名/Cinnamomum dubium Nees
学名のラテン語読み/キンナモムム・ドゥビウム
種名の意味/疑わしい、不確実の
一般名/ワイルドシナモン、wild cinnamon、wal kurundu[シンハラ語] 
原産・分布/スリランカ原産。インド、ミャンマーにも自生
特徴・利用/
樹高5mの常緑小高木。葉は互生、対生が見られ、葉長2~9cm、葉幅1.5~4cmで基部の膨らんだ卵状披針形で先端が細長い。3行脈。葉にマンゴーの様な香りがある。木材としても利用されている。

学名/Cinnamomum heyneanum Nees
学名のラテン語読み/キンナモムム・ヘイネアヌム
種名の意味/植物学者Benjamin Heyneへの懸命
主なシノニム/Cinnnamomum burmanni var. angustifolium (Hemsl.) C.K.Allen
一般名/狭葉陰香(キョウヨウインコウ)
原産・分布/中国中南部ベトナム、インド原産
特徴・利用/
樹高5~7mとやや小ぶりの常緑樹。枝が細い。葉も葉幅2cm程度と葉長11~14cmと細長く、3行脈が目立つ。茎葉から精油を採る。雲南省ではサフロール98%タイプ、樟脳50%・サフロール20%タイプ、樟脳35%・シネオール34%タイプのケモタイプが産出される。中国では「狭葉陰香(キョウヨウインコウ)」と呼ばれ、中薬では根と葉を「順江木(ジュンコウボク)」と呼んでリウマチや打撲、骨折に用いる 。

学名/Cinnamomum iners (Reinw. ex Nees & T.Nees) Blume
学名のラテン語読み/キンナモムム・イネルス
種名の意味/役に立たない、つまらぬ
一般名/イヌニッケイ(犬肉桂)、タイニッケイ(泰肉桂)、ジャワニッケイ(爪哇肉桂)、ワイルドシナモン、wild cinnamon
原産・分布/東南アジア~インド原産
特徴・利用/
樹高20mに達する常緑高木。葉は葉長12~35cm、葉幅6~9cmと大きく、楕円形。3行脈。花は葉腋に着生する。果実は卵形で黒熟する。香りは弱いがタイではタイ桂皮としてシナモンの代用で流通するほか、葉もスパイス利用される。樹皮は解熱、根や葉は胃腸障害やリウマチなどに用いられる。ジャワニッケイと呼ばれる数種の一つ。

学名/Cinnamomum insulari-montanum Hayata
学名のラテン語読み/キンナモムム・インスラリ・モンタヌム
種名の意味/島の山の
主なシノニム/Cinnamomum acuminatifolium Hayata、Cinnamomum pseudoloureirii Hayata
一般名/タイワンニッケイ(台湾肉桂)、タイワンヤブニッケイ(台湾藪肉桂)、ミヤマクスノキ(深山楠木)、ホソバクスノキ(細葉楠木)Taiwan cinnamon、montain cinnamon tree、台灣肉桂
原産・分布/台湾固有種。日本、中国、韓国でも見れらる
特徴・利用/
常緑樹。葉は互生し、葉長6~11cm、葉幅2~3cmで楕円状披針形で先端が槍状に尖る。3行脈だがそれほど明瞭ではない。花は葉腋に3~6個着生し4~5月に開花。果実は楕円体で12×7mmで9~10月に結実。シナモンの香りがする。台湾全域の標高500~1900mに自生。茎から、β-シトステロールとスチグマステロールの混合物、クマリン、シンナミルアルコール、桂皮酸、 p-ヒドロキシ安息香酸、ケンフェロール、ケンフェリトリンが抽出されている。

学名/Cinnamomum javanicum Blume
学名のラテン語読み/キンナモムム・ヤワニクム
種名の意味/ジャワ島の
一般名/ジャワニケイ(爪哇肉桂)、ジャワケイ(爪哇桂) Batavia cinnamon、Batavia cassia、Padang cassia、korintje、kayu manis、陰香(インコウ) 
原産・分布/インドネシア、マレーシア原産。中国南部~ベトナムにも分布
特徴・利用/
樹高20mに達する常緑高木。葉長11~25cm、葉幅5~12cmの長楕円形で大型。先端まで延びるはっきりした3行脈で、脈に垂直に細かい横じわのような葉脈が多数あって大判小判のよう。建材のほか、民間療法では腹痛や堕胎、糖尿病、皮膚病などに用いられるほか、根の煙を除霊に、根の煎剤を疲労や胸痛に用いる。近年、高い抗酸化作用や抗菌作用を有することなどが研究されている。

学名/Cinnamomum kotoense Kaneh. & Sasaki
学名のラテン語読み/キンナモムム・コトエンセ
種名の意味/台湾紅頭嶼の
一般名/コウトウニッケイ(紅頭肉桂)、蘭嶼肉桂
原産・分布/台湾南部蘭嶼原産
特徴・利用/
常緑高木。樹高15m。香りはほとんどない。原産地は台湾南東沖の蘭嶼(らんしょ)で、かつて紅頭嶼(こうとうしょ)と呼ばれた。台湾では絶滅危惧種。観葉植物として流通しており、主として観賞に供される。

学名/Cinnamomum loureiroi Nees
学名のラテン語読み/キンナモムム・ロウレイロイ
種名の意味/ポルトガルの宣教師で植物学者João de Loureiroへの献名
一般名/サイゴンシナモン、ベトナムシナモン、ベトナムカッシア
原産・分布/東南アジア原産
特徴・利用/
常緑高木。主としてベトナム中部のクアンガイ省で生産される。シンナムアルデヒドを25%含有し、ベトナムではカッシアの代用とされ輸出もされる。フォーの香りづけにも。カッシアに次いでクマリン含量が高い。1980年代以前には、本種が日本のニッケイとされていたため、古い資料ではニッケイの学名に本種の学名があてられている。

学名/Cinnamomum osmophloeum Kaneh
学名のラテン語読み/キンナモムム・オスモフロエウム
種名の意味/香りのよい樹皮の
一般名/ニッケイモドキ(肉桂擬)、seudocinnamomum、 indigenous cinnamon
原産・分布/台湾固有種
特徴・利用/
常緑木本。葉長8~12cm、葉幅3~5cmの卵状披針形。樹皮および茎葉から精油を採る。精油の主成分はt-シンナムアルデヒド、カリオフィレンオキシド、l-ボルネオ―ル、l-ボルニルアセテート、オイゲノールなど。消化不良、下痢、風邪、月経不順、炎症などに薬用とされる。呉家皮酒の主原料で桂皮茶にも用いられる。

学名/Cinnamomum parthenoxylon (Jack) Meisn.
学名のラテン語読み/キンナモムム・パルテノクシロン
種名の意味/処女の木
主なシノニム/Cinnamomum porrectum (Roxb.) Kosterm
一般名/ガジスグス(ガジス樟)、Selasian wood、saffrol laurel、 Martaban camphor wood、yellow cinnamon、黄樟(オウショウ)、樟木樹(ショウボクジュ) 
原産・分布/南アジア~東南アジア原産
特徴・利用/
樹高25mに達する常緑高木。樹皮が黄灰色。葉は互生で革質、葉長6~12cm、葉幅3~6cmの楕円状卵形。3行脈ではなく側脈が6~8対互生する。建材利用されるほか、樹皮をスパイス利用、茎葉から精油生産される。種子の油脂が石鹸製造に用いられる。カンボジアやベトナムなどでサフロールや樟脳、精油生産のための伐採で絶滅が懸念されている。中国では「黄樟(オウショウ)」と呼ばれ、中薬では根や茎を「香樟(コウショウ)」と呼んで胃腸炎や百日咳、痢疾に、葉を「香樟葉(コウショウヨウ)」と呼んで止血に、果実を「香樟果(コウショウカ)」と呼んで感冒、麻疹、百日咳、痢疾に用いる。

学名/Cinnamomum pseudopedunculatum Hayata
学名のラテン語読み/キンナモムム・プセウドペドゥンクラトゥム
種名の意味/偽の花柄のある
主なシノニム/Cinnamomum scrobiculatum (Meisn.) Nakai
一般名/オガサワラヤブニッケイ(小笠原藪肉桂)、コヤブニッケイ(小藪肉桂)
原産・分布/小笠原に自生する固有種
特徴・利用/
樹高5~6mの常緑小高木。ヤブニッケイに似るが、小型で葉もヤブニッケイよりも明らかに小さい。葉には光沢があり3行脈はそれほど鮮明ではない。葉の背軸面は白味を帯びる。花序は枝先に腋生。花は黄緑色で3~5個着生。果実は黒塾する。日当たりのよい林の縁に生える。芳香があり、オチャノキと呼ばれかつては葉を茶の代用にした。

学名/Cinnamomum sieboldii Meisn.
学名のラテン語読み/キンナモムム・シエボルディイ
種名の意味/シーボルトへの献名
一般名/ニッケイ(肉桂)、オキナワニッケイ(沖縄肉桂)、カラキ、カラギ、カラケ、ニッキ  
原産・分布/中国南部~ベトナム原産
特徴・利用/
樹高15mの常緑高木。根や幹の皮に芳香があり、主として根皮が用いられる。日本産の肉桂(ニッケイ、ニッキ)は本種の根皮で、江戸後期に渡来し、かつては和歌山、高知、熊本、鹿児島などで盛んに栽培され、薬用や菓子の香りづけとして重要であった。現在ではほとんど生産されていない。日本には徳之島と沖縄本島、久米島、石垣島に自生。沖縄では葉を薬用酒や健康茶、スパイスとして利用。

学名/Cinnamomum subavenium Miq.
学名のラテン語読み/キンナモムム・スバウェニウム
主なシノニム/Cinnamomum chingii F.P.Metcalf, Cinnamomum randaiense Hayata
一般名/ランダイニッケイ(ランダイ肉桂)、シマニッケイ(島肉桂)、ナガミグス(長実樟)、細葉香桂(サイヨウコウケイ) 
原産・分布/中国~東南アジア、南アジア原産
特徴・利用/
樹高30mに達する常緑高木。葉は革質で葉長4~14cm、葉幅1~6cmの披針形で3行脈。葉をスパイスに。葉の精油に抗菌、抗酸化作用が報告される。「Medang(メダン)」の名で木材利用される。台湾ではメラニン生成酵素のチロシナーゼ生成阻害物質が確認され安全で効果的な美白作用が発表された。中国では「細葉香桂(サイヨウコウケイ)」と呼ばれ、中薬では樹皮を「桂皮(ケイヒ)」と呼びヤブニッケイやジャワニッケイと同様に用いる。

学名/Cinnamomum tamala (Buch.-Ham.) T. Nees & Eberm.
学名のラテン語読み/キンナモムム・タマラ
種名の意味/インド南部カンナダ語でTamaalaと呼ばれる
一般名/タマラニッケイ、インディアンベイリーフ、インドシナモン、マラバールリーフ、Indian bay leaf、Indian cassia、 Indian bark、Malabar leaf、malabathrum、柴樟(サイショウ)
原産・分布/中国南部、ヒマラヤ~インド原産
特徴・利用/
樹高20mに達する常緑高木。葉は葉長7~15cm、葉幅3~6cmの卵状楕円形で3行脈。幼葉はピンクに色づく。南アジアでは乾燥葉をスパイスとして料理やティーに。ベニバナと共に、ブータンのツェリンマ茶の主原料。樹皮はシナモンの代用にも。精油も流通する。ネパール産の葉にはリナロール55%、α-ピネン10%、シメン6%、β-ピネン4%、リモネン3%、シンナムアルデヒド3%を含むという報告がある。中国では「柴樟(サイショウ)」と呼ばれ、中薬では樹皮や葉を「三条筋(サンジョウキン)」と呼び、出血、打撲傷、骨折、やけどに用いる。

学名/Cinnamomum verum J. Presl
学名のラテン語読み/キンナモムム・ウェルム
種名の意味/本家の
主なシノニム/Cinnamomum zeylanicum Blume
一般名/シナモン、セイロンシナモン、セイロンニッケイ(錫蘭肉桂)、true cinnamon、Ceylon cinnamon、true cinnamon tree
原産・分布/スリランカ、マレーシア原産
特徴・利用/
樹高10mの常緑高木。原産地のスリランカの旧名からセイロンシナモンと呼ばれる。樹皮は「セイロン桂皮」とも呼ばれ、スティック状に密に巻いたクイルを生産。クイルの直径と重量当たりの本数によって格づけされるほか、樹皮片もチップやフェザリングなど何段階かに分けられて流通する。直径6mm以下をアルバ、16mm以下をコンチネンタル、19mm以下をメキシカン、32mm以下をハンブルグと呼ぶ。薬用にも用いる。樹皮などを蒸留して桂皮油を、葉を蒸留して桂葉油を得る。

学名/Cinnamomum wilsonii Gamble
学名のラテン語読み/キンナモムム・ウィルソニイ
種名の意味/英国のプラントハンターE.H.Wilsonへの献名
一般名/川桂(センケイ)、紫桂(シケイ)、臭馬桂(シュウバケイ)、Wilson’s camphor-tree
原産・分布/中国南部原産
特徴・利用/
樹高25mに達する常緑高木。葉は革質で葉長8~15cm、葉幅3~5cmの長卵形で3行脈。茎葉と果実をスパイスに。樹皮や葉や果実から精油生産され石けんなどの香料原料に。樹皮の精油にはフェランドレン、オイゲノール、桂皮アルデヒド、メチルオイゲノールなどが含まれる。中国では「川桂(センケイ)」と呼ばれ、中薬では樹皮を「桂皮(ケイ)」と呼びヤブニッケイなどと同様に用いる。

当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第66号 2023年12月