2022.9.28

セージの植物学と栽培

当協会理事

木村正典

セージとその仲間の特徴や栽培方法などを、植物学の視点で解説します。

分類・名称

分類

セージは、広義にはシソ科(LamiaceaeLabiatae))サルウィア属(Salvia)植物の総称です。中義には香りや薬効などを目的にハーブとして利用する、セージと名のつくハーブの総称であり、その際には、エルサレムセージ(Phlomis fruticosa L.)などのサルウィア属以外のハーブも含まれます。狭義にはコモンセージ(Salvia officinalis L.)を指します。ここでは、「セージ」を広義や中義に用い、狭義には「コモンセージ」と称して解説します。

サルウィア属は、植物学名の国際的データベースのWorld Flora Onlineによると、986種を有します。サルウィア属の生物分類 はBentham(1836)によって、旧世界(アフロ・ユーラシア大陸)原産のものと新世界(アメリカ大陸)原産のものに分ける方法で分類されてきました。現在では遺伝子解析が進み、その全容が分子系統学的に明らかになりつつあります。最新のサルウィア属の分類についてはTOPICSをご覧ください。

サルウィア属の原産地は、半数を超える500種以上が米国南部~南米です。次いで250種以上が地中海沿岸付近であり、90種以上が東アジア原産です。日本にも、アキギリのほか、キバナアキギリ、アキノタムラソウ、ナツノタムラソウ、ハルノタムラソウ、ミゾコウジュなど10種、20種類ほどが自生しており、そのほとんどが日本固有種で、地域限定の絶滅危惧種もあります。

なお、単にタムラソウというのはキク科植物です。主なサルウィア属植物を表に示しました。コモンセージにはスパニッシュセージなどの3つの亜種が知られています。また、色変わりや斑入りなどの園芸品種もあります。

名称

属名のSalviaは、「無傷」、「安全」を意味するインド・ヨーロッパ祖語のsolwo-を起源とするラテン語のsalvusが語源とされています。salvusは、「安全な」、「健康な」、「無傷の」を意味し、英語のsafeの語源でもあります。さらに、このsalvusを語源としてsalvare(「救済する」、「治療する」の意、英語のsaveの語源)などの派生造語が誕生し、これを語源とするという解釈もあります。Salviaの語源は、solwo-をもとにしたラテン語のsalvus、ならびにその派生造語のsalvareというのが無難かもしれません。その後、Salviaを語源としてフランス語のsauge(ソウジュ)が、フランス語を語源として英語のsageが誕生しました。

コモンセージ(common sage)の学名はSalvia officinalis L.で、種小名のofficinalisは「薬用の」を意味します。英名ではほかに単にセージと呼ばれるほかガーデンセージ(garden sage)やカラナリーセージ(culinary sage)とも称され、料理用に各庭で育てられていたことがうかがえます。

サルウィア属の和名はアキギリ(秋桐)属、コモンセージの和名は薬用サルビアです。日本では一般に観賞用をサルビア、ハーブ用をセージと使い分けています。

人とのかかわりの歴史  

古代ギリシャでは、文献に4種類のセージが登場します。テオフラストス(B.C.371-287)が記述したのは、コモンセージ(Salvia officinalis L.)とグリークセージ(Salvia fruticosa Mill.)、フルーツセージ(Salvia pomifera subsp. calycina (Sm.) Hayek)と考えられています。

ディオスコリデス(A.D.40頃-90頃)は『De materia medica』の中でコモンセージ、アップルセージ(Salvia pomifera L.)、フルーツセージ、グリークセージを取り上げており、煎じ汁を服用すると利尿作用があり、創傷薬や、止血剤にもなり、悪寒や咳にもよいと記述しています。

なお、セージにSalvia の名称を最初に使ったのは大プリニウス(A.D.23-79)とされています。このように、セージは古代ギリシャ・ローマ時代から薬用とされていたほか、肉の保存や料理の香りづけなど食用にも用いられ、薬食同源で親しまれてきました。

セージは長寿のハーブとしても知られ、「庭にセージが育っているのになぜ人は病気で死ぬのか」や、「長生きしたければ5月にセージを食べなさい」、「すべてが順調にいっているときにはセージが茂り、不幸に襲われているときはセージが枯死する」、「セージは医者にも料理人にも、台所でも地下室でも、貧富も問わず役立つ」など、健康にまつわる格言も多く伝えられています。

コモンセージには強い防腐・抗菌作用があり、ペストパンデミックの際の「4人の泥棒の酢」にもコモンタイムやローズマリー、ラベンダーとともに酢に用いられたとされています。

カルペパー(1616-54)は『Complete Herbal』で、コモンセージをローズマリー、ウッドバイン、オオバコとともに煮て蜂蜜か明礬を足したうがい薬が口腔疾患治療に用いられてきたことを紹介するとともに、内服で潰瘍や出血、頭痛、関節痛、倦怠感、無気力、胸や乳房の疾患、声がれ、咳、感染症、肝臓などによいと記載しています。また、クラリセージについて、種子(果実)が目の異物侵入を防いで白斑・赤斑をとり除くことからclear-eyeとも呼び、種子(果実)の粘液が腫瘍や棘を取り去り、種子(果実)や葉の内服が催淫、腎臓強化、月経・後産促進すると述べています。

米国西南部のアメリカンインディアンは、精神的・身体的浄化のためにホワイトセージをスマッジングなどで伝統的に用いています。

メキシコのマサテコ族では幻覚症状を引き起こすSalvia divinorum Epling & Játivaをシャーマンが呪術などで伝統的に用いてきました。

中米では、メソアメリカ文明の主食ともいわれるチアと呼ばれるSalvia hispanica L.を中心とする数種のセージが、新大陸発見以前からアステカ族などで伝統的に栽培され、粉末にして他の穀類などとともにお粥などで食されるほか儀式や薬用にも利用されてきました。近年になって、吸水させたチアシード(果実)がグルコマンナンを出すことや、オメガ3脂肪酸やフラボノイド、ミネラルなどを含有することからスーパーフードとして注目され、中南米各地で商業生産されています。

このほか新世界セージにはサルビア(ヒゴロモソウ)やブルーサルビア、メキシカンブッシュセージ(アメジストセージ)、チェリーセージ、パイナップルセージ、ローズリーフセージ、ボッグセージ、コバルトセージ、ラベンダーセージなど、世界各地で観賞に供されているものが多く、優秀なガーデニング材料に贈られる英国園芸協会(RHS)のガーデンメリット賞(AGM)を受賞するものもあります。これらはハーブとしてあまり利用されておらず、積極的な利用を期待したいです。

日本にコモンセージが渡来したのは、江戸末期とされていますが定着しませんでした。大正時代には横浜、愛知などで薬用植物としての栽培の記録があります。ハーブとして本格導入されたのは1980年代のハーブブームの時です。その一方で、日本原産のサルウィア属植物はいずれも利用されていません。

中薬で用いられるセージ

中薬では、コモンセージは用いられません。中薬大辞典(1988)によると、Salvia miltiorrhiza Bunge(丹参タンジン)の根(丹参タンジン)や、S. przewalskii Maxim.の根(甘粛丹参カンシュクタンジン褐毛丹参カツモウタンジン)、S. yunnanensis C.H.Wrightの根(滇丹参テンタンジン)を月経不順などの婦人科系疾患や肝炎、神経衰弱などの治療に、S. substolonifera E.Peter(湖広草ココウソウ)の全草(走茎丹参ソウケイタンジン)を吐血や激しい嘔吐、蜘蛛瘡(帯状疱疹後神経痛)の治療に、S. plectranthoides Griff.(四花菜葉丹参シカサイヨウタンジン)の根(紅骨参コウコツジン)を労傷による虚弱の治療に、S. plebeia R.Br.(雪見草セツケンソウ、ミゾコウジュ)の全草(茘枝草レイシソウ)を咳血(咳嗽時出血)、吐血、喉痛、扁桃炎、化膿性中耳炎、痔瘡、初期の急性乳腺炎、打撲傷、咬傷、ひきつけ、膣炎、子宮頸管炎、慢性気管炎などの治療に、S. chinensis Benth.(紫参シジン、マルバノアキノタムラソウ)の全草(石見穿セキケンセン)を肝炎や赤白帯下の治療に、S. coccinea Buc’hoz ex Etl.(朱唇シュシン)の全草(小紅花ショウコウカ)を止血や腹痛の治療に、S. cavaleriei var. simplicifolia E.Peter(血盆草ケツボンソウ)の全草(朱砂草シュシャソウ)を咳血(咳嗽時出血)や吐血、鼻血、血痢、刀傷などの治療に、S. scapiformis Hance(白補薬ハクホヤク)の全草(白補薬ハクホヤク)を虚弱乾痩や労傷疼痛などの治療に用います。

形態・成分  

サルウィア属植物には一年草から多年草、小低木まであります。

コモンセージは草丈40~80 cmの常緑木本で、基部が木化し、先端付近の茎は特に軟毛に覆われて白っぽく見えます。葉身はやや肉厚の長楕円形で、表面に凹凸のあるのが特徴です。葉色はセージグリーンと呼ばれる独特な白緑色~青灰色です。花は輪散花序で初夏から夏に咲き、1花の開花期間は2~3日です。萼も花冠も筒状で、花冠は薄紫色の2唇形の唇花です。果実は4分果となる痩果そうかで、一般には種子として扱われます。

セージの精油は、ほかのシソ科植物同様、花や葉、茎の「腺毛」に蓄えられており、腺毛が壊れることで香りを放ちます。これは外敵からの防御手段と考えられ、新葉付近の茎葉や葉の背軸面、花などの大切な部位や虫のつきやすい部位に多く分布します。乾燥しても壊れません。なお、サルウィア属には腺毛を持たずに香らないものもたくさんあります。

口腔ケアや抗炎症、抗酸化、抗がん、脳障害予防、血糖値改善などで注目されるコモンセージの精油成分は、α-ツヨン、β-ツヨン、カンファー、1,8-シネオール、ボルネオール、β-カリオフィレン、カンフェン、α-ピネンなどです。

一方、抗うつ、抗炎症、抗菌、ストレス解消、更年期障害緩和、月経痛軽減などに用いられるクラリセージの精油成分について、産地の異なる11の論文をまとめた総説では、主成分である酢酸リナリルは、11%(トルコ産)~57%(ブルガリア産)、平均31%であり、リナロールは、9%(トルコ産)~40%(インド産)、平均23%、特徴的成分であるスクラレオールは0.06%(セルビア産)~15%(ドイツ産)、平均3%と報告されています。

性状と栽培   

コモンセージは種子か挿し木で繁殖します。種子繁殖の場合、発芽適温は25℃で、発芽まで1~3週間を要し、発芽率は40~60%程度です。挿し木繁殖の場合、真夏、真冬を避け、挿し穂の長さを10~15 cmとし、下半分の葉を除去、各葉身を基部の1~2cm残して切り蒸散面積を小さくします。挿し床には無肥料の赤玉土を用い、挿し穂の半分を土に挿し、3~4週間して完全に根の出た時点で栄養のある土に定植します。

コモンセージは地中海沿岸の乾燥地原産で、過湿を嫌いますので、植え付けの際には、株元だけは赤玉土などで水はけをよくするのがおすすめです。多肥にすると、根がダメージを受けたり、茂りすぎて自滅したりしますので、元肥を控えめにし、葉の色が悪くなってきたら、油かすやボカシ肥などを追肥するようにします。2年目以降は年に1回、春先に完熟堆肥やボカシ肥を株から10cm程度離してドーナツ状に施すとよいでしょう。

寒さには強く気温氷点下30℃になる地域でも雪の下であれば越冬可能です。一方で、夏の蒸れには弱いため、梅雨明けまでに剪定を兼ねて収穫したり、挿し木をしたりして株をコンパクトにしておくとよいでしょう。

近年、ヨコバイの被害が多発しています。ヨコバイの被害は7年ほど前に関東のローズマリーで出始めて以降、シソ科ハーブ全般に、各地に拡大しています。ヨコバイに吸われた跡が斑点のように白くなり、ひどくなると葉全体が白っぽくなってしまいます。黄色の粘着板を設置したり、重曹と防虫ハーブチンキなどを水で希釈したものを葉裏に散布したりしましょう。また、冬と真夏には卵で過ごすのか、成虫が見られませんので、この間に被害のある葉を卵ごと取り除くのも効果的です。

精油成分を増加させるには日当たりのよい場所で十分に光合成させるようにします。

香りは先端部分の若い葉に最も多いので、茎の先端を摘み取って収穫することで側枝が発達し、枝数と葉数が増えます。

コモンセージの葉にいるヨコバイ。葉の白い不規則な斑点はヨコバイの吸汁による食害痕。

TOPICS ローズマリーはサルウィア属なのか?

セージはこれまで、コモンセージなど地中海原産のものを旧世界セージ、チェリーセージなどアメリカ大陸原産のものを新世界セージとして分けていましたが、近年サルウィア属植物のDNA解析が急速に進み、新たな見解が誕生しています。その中にローズマリーのサルウィア属問題があります。

ローズマリーの学名について、World Flora Online (WFO)ではRosmarinus officinalis L.を採用(Salvia rosmarinus Schleid.をシノニム(異名)欄にごく最近まで掲載)していますが、WFOの運営母体のキューガーデンもミズーリ植物園もニューヨーク植物園も近年Salvia rosmarinus Spenn.に変更しています。日本のY’Listは命名者の異なるSalvia rosmarinus Schleid.を採用しています。

学名変更のきっかけの一つにWalkerらの論文(2004)があります(図1)。彼らはDNA解析でサルウィア属を3つのclade (同じ祖先をもつグループ) に分け、コモンセージはチェリーセージよりもローズマリーに近いことを発表しました。私はこの論文を読んだ時、ローズマリーの学名が変わるとは考えず、チェリーセージのなかまがいずれ属名変更されるのではと思いました。しかし、2017年にDrewら(※1)がサルウィア属にローズマリーやロシアンセージなど数種を組み込む論文を発表、それ以降、ローズマリーをサルウィア属とする見解が広まっています。Drewも執筆者に加わっているRoseらの2021年の論文から主な種を抜粋して掲載しました(図2)。

なんと、WFOはごく最近になってSalvia rosmarinus Schleid.の学名を新たに採用しました。なんとなんと、それはローズマリーの学名変更ではなく、ローズマリーとは別種としての採用です。つまり、WFOはローズマリーの学名をこれまで通りRosmarinus officinalis L.とし、それとは別種として新たにSalvia rosmarinus Schleid.を採用しています。

それに伴い、Rosmarinus officinalis L.のシノニム欄からSalvia rosmarinus Schleid.を削除しています。WFOには命名者の異なるSalvia rosmarinus Spenn.の学名は掲載されていません。これら命名者違いが別種なのか、Salvia rosmarinus Schleid.は一体何ものなのかを含めて、ローズマリーの学名についてはWFOに従うとして、もう少し注意深く様子を見る必要がありそうです。

(※1)Drew, B. T., González-Gallegos, J. G., Xiang, C.-L., Kriebel, R., Drummond, C. P., Walker, J. B. & Sytsma, K. J. 2017. Salvia united: The greatest good for the greatest number. Taxon, 66(1). 133-145.

表.主なサルウィア属(Salvia)植物。

コモンセージとその亜種 旧世界セージ(地中海沿岸原産)

学名 Salvia officinalis L.    
種小名などのラテン語読み オッフィキナリス
種小名などの意味 [薬用の]
一般名 コモンセージ(common sage) 、ガーデンセージ(garden sage), カラナリーセージ(culinary sage), Dalmatian sage, true sage
観賞用園芸品種として、’パープル’ (’Purpurascens’, ‘Purprea’)、ゴールデン(’Icterina’, ‘Aurea’)、トリカラー (’Tricolour’)などがある。常緑亜低木。樹高40〜80cm。料理では肉の臭い消しに用いられる。特にドイツやイタリア、英国などで、肉料理やフリッター、スープなどによく用いられる。中世からの「コールドセージ」ソース、イタリアの「サルティンボッカ」や「トルテッローニ」、英国の「セージダービー」チーズや「リンカンシャーソーセージ」、トルコのセージティーなどにはセージが欠かせない。ドイツではお祭りや遊園地などで乗り物酔いを防ぐとしてセージケーキがかつて定番だった。精油の主成分のツヨンには防腐・殺菌作用のほかに神経毒性もあり、エストロゲン様作用もあるため、乱用に注意。中世では妊婦に用いられていた。出産時ならよいが妊娠初期などは流産のリスクがあるので禁忌。     

学名 Salvia officinalis subsp. gallica (W.Lippert) Reales, D.Rivera & Obón        
種小名などのラテン語読み オッフィキナリス・ガッリカ
種小名などの意味 [フランスの]
一般名 Sauge de France〔仏;フレンチセージの意〕
コモンセージの亜種。フランス南部を中心にドイツ、スイス、イタリアに自生。スペインにも導入される。常緑亜低木。草丈20~80cm。コモンセージに似るが、小型で葉がやや細く、花数も少ない。花はやや薄い紫色。

学名 Salvia officinalis subsp. lavandulifolia (Vahl) Gams        
種小名などのラテン語読み オッフィキナリス・ラワンドゥリフォリア
種小名などの意味 [ラベンダーの様な葉の]
一般名 スパニッシュセージ(Spanish sage)
コモンセージの亜種。スペイン南東部~仏南部、モロッコ~アルジェリア北部の地中海沿岸の岩場に自生。常緑草本もしくは亜低木。草丈30~50cm。葉は披針形で長さ5cm。花は淡青紫色で6~8個がややまばらに着く。葉に腺毛があって香るが萼には腺毛がない。氷点下10℃まで生育可能。薬用、香料原料用、食用、観賞用。精油生産に野生のものを利用するほかスペインで小規模に栽培もされる。

学名 Salvia officinalis subsp. oxyodon (Webb & Heldr.) Reales, D.Rivera & Obón     
種小名などのラテン語読み オッフィキナリス・オクシオドン
種小名などの意味 [強歯のある]
コモンセージの亜種。スペイン南部の乾燥地原産。常緑亜低木。花は薄桃色で4~6個と少なくまばらに着生。氷点下18℃まで生育可能。コモンセージよりも強靭。薬用、料理用。

その他の地中海沿岸原産セージ 旧世界セージ(地中海沿岸原産)

学名 Salvia fruticosa Mill.      
種小名などのラテン語読み フルティコサ
種小名などの意味 [低木状の]
一般名 グリークセージ (Greek sage)、 salvia de jardín〔仏;ガーデンセージの意〕
地中海東部沿岸原産。イタリア南部(クレタ島を含む)、アルバニア、ギリシャ(クレタ島、エーゲ海を含む)、キプロス、トルコ、シリア、レバノン、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンに自生するほか、古代に地中海西部沿岸、カナリア諸島、マデイラ島に渡来。常緑亜低木。温暖地では樹高1~2mにも達する。茎葉は軟毛に覆われ、若い部分はべたつく。葉は単葉のほか、葉は地域による変異も大きく、3~5葉もみられるがこの場合の側小葉は小さい。また、葉縁が波打つものもある。花は白みがかった淡桃色。氷点下7℃まで生育可能。古代ギリシャ時代から薬用とされる。伝統医療として、風邪、インフルエンザ、咳、リウマチ性疾患、胃腸潰瘍、心臓・循環器系疾患、腎疾患、胆石、食欲不振、傷、腫れなどの治療に用いられる。商業的精油生産も行われ、精油の主成分は1,8-シネオール(40~60%)、ツヨン(5~6%)、カンファ―(2~24%)とする報告がある。

学名 Salvia nemorosa L.        
種小名などのラテン語読み ネモローサ
種小名などの意味 [森林生の]
一般名 ウッドランドセージ (woodland sage), モリノヒゴロモソウ (森の緋衣草), Balkan clary, blue sage, wild sage
欧州中央部~西アジア原産。多年草。’Amethyst’、’Blauhügel’ (Blue hill)、 ‘Caradonna’、 ‘Lubecca’、 ‘Mainacht’ (May night)、 ‘Ostfriesland’ (’East Friesland’)、’Porzellan’ (Porcelain)、’Tänzerin’ (Dancer)、’Viola Klose’がRHSのAGMを受賞。草丈60cm。氷点下18℃の地域でも生育可能。花冠は品種によって紫、青、白、桃など様々。トルコでは伝統的に止血に使用。

学名 Salvia pomifera L.       
種小名などのラテン語読み ポミフェラ
種小名などの意味 [リンゴの果実を持った]
一般名 アップルセージ (apple sage)、apple-bearing sage, Cretan sage, Crete sage, mountain sage
常緑木本。クレタ島、ギリシャ南部原産。樹高1.2mに達する。グリークセージに似て茎葉が軟毛に覆われ、葉には地域による変異が大きく、葉が槍形で縁の波打つものもある。花序は穂状に近く密生する。萼は赤茶~赤紫色でよく目立つ。茎葉と花序に腺毛がある。花冠は白っぽい淡紫青色。精油成分は、β-ツヨン(51%)、α-ツヨン(16%)、1,8-シネオール(7%)とする報告や、ツヨン(60~80%)1,8-シネオール(10%)、カンファ―(4%)とする報告がある。葉を料理やハーブティー、薬用とされる。アップルセージの名はタマバチによって茎に作られた半透明のゼリー状の虫こぶに由来し、虫こぶは砂糖漬けなどで市販されている。

学名 Salvia pomifera subsp. calycina (Sm.) Hayek        
種小名などのラテン語読み ポミフェラ・カリキナ
種小名などの意味 [顕著な萼を持った]
一般名 フルーツセージ (fruit sage)
アップルセージの亜種。ギリシャ、トルコ西部原産。樹高1 mの落葉低木。葉はやや幅広の披針形~長楕円形で縁が波打つ。花序は密生し、萼は赤紫色、花冠は淡青紫色。氷点下10℃まで生育可能。精油成分は、α-ツヨン(20%)、β-ツヨン(36%)、ミルセン(6%)とする報告や、β-ツヨンが6~60%で、抗真菌性が報告されている。

学名 Salvia pratensis L.
種小名などのラテン語読み プラテンシス
種小名などの意味 [草原生の]
一般名 メドウセージ (meadow sage)、 メドウクラリー (meadow clary)
地中海沿岸原産。多年草。bertolonii, haematodes, laciniosa, pozegensisの4亜種がある。’Atroviolacea’, ‘Baumgartenii’, ‘Lupinoides’, ‘Mitsommer’, ‘Rosea’, ‘Rubicunda’, ‘Tenorii’, ‘Variegata’などの観賞用園芸品種がある。亜種haematodesと品種’Indigo’はRHSのAGMを受賞。草丈1.5m。花冠は青紫色で、白や桃色、空色など多くの園芸品種がある。花冠、萼は腺毛だらけ。茎葉も腺毛があって精油を含有。氷点下20℃になる地域でも生育可能。クラリセージ同様、吸水種子がゼリー物質を出すことから目ボウキの様に利用。葉はコモンセージの代用として料理に用いるほか、ビールやワインの香りづけや口腔ケアにも用いられる。

学名 Salvia sclarea L.      
種小名などのラテン語読み  スクラレア
種小名などの意味 [硬い]
一般名 クラリセージ(clary sage)、オニサルビア(鬼サルビア)
地中海沿岸~中央アジア原産。二年草もしくは常緑多年草。’Turkestanica’(バチカンクラリ)などの品種がある。二年目に開花し、場合によっては多年化するが短命。草丈1~1.6m。葉長20cm、葉幅12cmと大きく、有毛。苞葉が発達して花冠と同様の色に色づく。茎葉と花序に腺毛を有し、若い部分い多い。精油成分は、酢酸リナリル45~75%、リナロール10~20%のほか、ゲルマクレンD、カリオフィレン、スクラレオールなどを含有する。香料原料として、イギリス、フランス、ロシアで商業栽培される。精油はアロマセラピーで、不安や恐怖の緩和のほか、不眠、PMS、月経不順などに用いられるほか、お酒や調味料、ジャムなどの香りづけに利用される。コモンセージ同様にエストロゲン様作用があるが、クラリセージはスクラレオールによる作用のため、コモンセージのツヨンのような神経毒性がないので使いやすい。葉は、健胃、制汗、収れん、鎮痙、通経、防腐など作用があり、痙攣、中耳炎、下痢などに用いられる。吸水種子がゼリー物質を出すため、目のごみを取るなど、目ボウキの様に用いられ、「clary eye」と呼ばれることをカルペパーが記載している。

学名 Salvia verbenaca L.         
種小名などのラテン語読み ウェルベナーカ
種小名などの意味 [バーベナに似た]
一般名 ワイルドクラリ (wild clary), ワイルドセージ (wild sage), ミナトタムラソウ (港田村草)
地中海沿岸、英国、コーカサス原産。日本に帰化している。和名は清水港で最初に確認されたことに由来。多年草。’Alba’, ‘Purple Rain’などの園芸品種がある。芳香があり、ティーや料理に用いられる。

学名 Salvia verticillata L.         
種小名などのラテン語読み ウェルティキルラータ
種小名などの意味 [輪生の]
一般名 ライラックセージ (lilac sage), whorled clary
欧州~西アジア原産。多年草。草丈90cm。

学名 Salvia viridis L.        
種小名などのラテン語読み ウィリディス
種小名などの意味 [緑色の]
一般名 ペインテッドセージ (painted sage), ムラサキサルビア、annual clary, orval, bluebeard, wild clary, green-topped sage
地中海沿岸~コーカサス~イランに自生。一年草。’Blue’, ‘Blue Denim’, ‘Blue Monday’, ‘Colour Blend’, ‘Marble Arch Blue’, ‘Marble Arch Mix’, ‘Marble Arch Rose’, ‘Oxford Blue’, ‘Pink Sunday’, ‘White Swan’などの多くの観賞用園芸品種がある。草丈60cm。最大の特徴は花序の先端に苞葉が大きく発達して色づくこと。地上部に腺毛があって香る。野生種は苞葉は緑色で学名の由来に。葉を料理や口腔ケアに、精油をワインやビールの香りづけに用いる。

日本原産種とその変種 旧世界セージ(アジア原産)

学名 Salvia japonica Thunb. 
種小名などのラテン語読み ヤポニカ
種小名などの意味 [日本の]
一般名 アキノタムラソウ (秋の田村草)
東アジア原産で、日本の本州~沖縄、朝鮮、中国の草原に分布。多年草。かつて本種の品種(form)とされたシロバナアキノタムラソウ (白花秋の田村草)、マルバノアキノタムラソウ (丸葉の秋の田村草)、ケブカアキノタムラソウ (毛深秋の田村草)は現在は本種と同種扱い。草丈80cmに達する。葉は単葉~羽状複葉と変異の幅が広い。秋7~11月に開花。花冠は薄紫色。

学名 Salvia japonica var. formosana Murata
種小名などのラテン語読み ヤポニカ・フォルモサナ
種小名などの意味 [台湾の]
一般名 タイワンタムラソウ (台湾田村草)、 Formosan sage
台湾固有種。多年草。

学名 Salvia japonica var. multifoliolata E.Peter  
種小名などのラテン語読み ヤポニカ・ムルティフォリオラータ
種小名などの意味 [多数の葉の]
一般名 中国原産、広東、四川固有種。草原に自生。下部葉は2~3回羽状複葉。

学名 Salvia japonica f. polakioides (Honda) T.Yamaz.
種小名などのラテン語読み ヤポニカ・ポラキオイデス
種小名などの意味 [ポラキの様な]
一般名 イヌタムラソウ (犬田村草) 、オオヤアキギリ
日本固有種。多年草。草丈30~40cm。

学名 Salvia akiensis A.Takano, Sera & N.Kurosaki  
種小名などのラテン語読み アキエンシス
種小名などの意味 [安芸産の]
一般名 テリハナツノタムラソウ (照葉夏の田村草)
日本原産で広島、島根の固有種。広島では渓流に、島根では森の端に見られる。2014年に学名が命名された新しい種。多年草。草丈50cm。花冠は淡青紫色で毛が多い。5月に開花。

学名 Salvia glabrescens (Franch. & Sav.) Makino  
種小名などのラテン語読み グラブレスケンス
種小名などの意味 [やや無毛の]
一般名 アキギリ (秋桐)
日本原産で中部~近畿の山林に自生。多年草。草丈50cm。葉は幅広のほこ型。茎と花序に腺毛がない。花冠は下唇の向軸側が濃い赤紫色。

学名 Salvia isensis Nakai ex Hara
種小名などのラテン語読み イセンシス
種小名などの意味 [伊勢産の]
一般名 シマジタムラソウ (島路田村草)
日本原産で静岡~愛知~三重の固有種。絶滅危惧種。和名は発見された伊勢神宮島路山に由来。多年草。草丈80cm。一~二回羽状複葉。夏7~8月に開花。花冠は淡青紫色。

学名 Salvia koyamae Makino
種小名などのラテン語読み コヤマエ
種小名などの意味 [発見者の小山梅太郎への献名]
一般名 シナノアキギリ (信濃秋桐)
日本原産で長野東部~群馬西部の固有種。絶滅危惧種。多年草。草丈50cm。茎や葉、花序に腺毛がある。開花は8~10月。花冠は淡黄色。

学名 Salvia lutescens (Koidz.) Koidz.  
種小名などのラテン語読み ルテスケンス
種小名などの意味 [淡黄色の]
一般名 ウスギナツノタムラソウ (薄黄夏の田村草)
日本原産の多年草。かつて本種の変種とされたミヤマタムラソウ(深山田村草)、シロバナミヤマタムラソウ(白花深山田村草)、ナツノタムラソウ(夏の田村草)、ニシノタムラソウ(西の田村草)、シロバナナツノタムラソウ(白花夏の田村草)、ダンドダムラソウ(段戸田村草)も現在は本種と同種扱い。

学名 Salvia nipponica Miq.  
種小名などのラテン語読み ニッポニカ
種小名などの意味 [日本本州の]
一般名 キバナアキギリ (黄花秋桐)、コトジソウ (琴柱草)
日本原産で本州~九州の山林に自生。多年草。かつて本種の変種とされたタイワンアキギリ(台湾秋桐)、キソキバナアキギリ(木曽黄花秋桐)、ミツデコトジソウ(三手琴柱草)も現在は本種と同種扱い。草丈40cm。葉はアキギリに似る。茎や花序に腺毛がない。

学名 Salvia omerocalyx Hayata
種小名などのラテン語読み オメロカリクス
種小名などの意味 タジマタムラソウ (但馬田村草)
一般名 日本原産で、京都、兵庫、鳥取の固有種。多年草。本種の一種、ハイタムラソウ(這田村草)は福井の固有種で絶滅危惧種。萼上に櫛の歯の如き毛がある。

学名 Salvia pygmaea Matsum.  
種小名などのラテン語読み ピクマエア
種小名などの意味 [小さい]
一般名 ヒメタムラソウ (姫田村草)
日本原産で、南西諸島の固有種。、アマミタムラソウ(奄美田村草)も本種と同種。ハルノタムラソウに似るが、葉がより細かく2回羽状に裂ける。

学名 Salvia ranzaniana Makino  
種小名などのラテン語読み ランザニアーナ
種小名などの意味 [江戸時代本草家小野蘭山への献名] 
一般名 ハルノタムラソウ (春の田村草)
日本原産で紀伊半島、四国、九州の苔むした木陰や岩場に自生。多年草。草丈20cmと小型。葉は羽状複葉。春4~6月に開花。

学名 Salvia plebeia R.Br.  
種小名などのラテン語読み プレベイア
種小名などの意味 [普通の]
一般名 ミゾコウジュ(溝香薷)、ユキミソウ(雪見草)、雪見草(セツケンソウ)、Austral sage
多年草東アジア~豪州、日本各地に自生。日本では各地で絶滅危惧種に指定されている。白花のシロバナミゾコウジュ(白花溝香薷)もある。一・二年草。草丈90cm。中薬では全草を茘枝草(レイシソウ)と呼んで咳血、吐血、喉痛、扁桃炎、化膿性中耳炎、痔瘡、初期の急性乳腺炎、打撲傷、咬傷、ひきつけ、膣炎、子宮頸肝炎などの治療に用いる。

台湾原産 旧世界セージ(アジア原産)

学名 Salvia hayatae Makino ex Hayata  
種小名などのラテン語読み ハヤタエ
種小名などの意味 [植物学者早田文蔵への献名]
一般名 阿里山鼠尾草
台湾の標高1500m付近の固有種。一年草。草丈45cm。花冠は白色。花序に腺毛がある。

学名 Salvia hayatae var. pinnata (Hayata) C.Y.Wu  
種小名などのラテン語読み ハヤタエ・ピンナータ
種小名などの意味 [羽状の]
一般名  ケタムラソウ (毛田村草)
台湾固有種。一年草。一回羽状複葉。

中国原産 旧世界セージ(アジア原産)

学名 Salvia miltiorrhiza Bunge     
種小名などのラテン語読み ミルティオルリザ
種小名などの意味 [赤みを帯びた黄土色の根]
一般名 丹参(タンジン)、red sage, Chinese sage, tan shen, danshen
中国原産の多年草。草丈80cm。根を丹参(タンジン)と呼び、月経不順などの婦人科系疾患や肝炎、神経衰弱などの治療に中薬利用される。

学名 Salvia przewalskii Maxim.   
種小名などのラテン語読み プルゼワルスキイ
種小名などの意味 [露の探検家Przhevalskyへの献名]
中国原産の多年草。草丈60cmで花の時期には90cmに達する。花冠は赤紫で、萼は赤褐色。根を甘粛丹参(カンシュクタンジン)、葉の背軸面に褐色の柔毛の密生する系統の根を褐毛丹参(カツモウタンジン)と呼び、いずれも丹参(タンジン)同様、月経不順などの婦人科系疾患や肝炎、神経衰弱などの治療に中薬利用される。

学名 Salvia yunnanensis C.H.Wright  
種小名などのラテン語読み  ユンナネンシス
種小名などの意味 [支那雲南の]
中国原産。雲南、貴州、四川の固有種。多年草。草丈30cm。花冠は鮮紫色で、萼は緑色。根を滇丹参(テンタンジン)と呼び、いずれも丹参(タンジン)同様、月経不順などの婦人科系疾患や肝炎、神経衰弱などの治療に中薬利用される。

学名 Salvia plectranthoides Griff.  四花菜葉丹参(シカサイヨウタンジン)  
種小名などのラテン語読み プレクトゥラントイデス
種小名などの意味 [シソ科プレクトゥラントゥス属植物に似た]
中国原産の多年草。草丈60cm。中薬では根を紅骨参(コウコツジン)と呼んで労傷による虚弱の治療に用いられる。

学名 Salvia cavaleriei var. simplicifolia E.Peter    
種小名などのラテン語読み カウァレリエイ・シムプリキフォリア
種小名などの意味 [仏の植物学者P.J.Cavalerieへの献名・裂けない葉を持った]
一般名 血盆草(ケツボンソウ)
中国原産の多年草。草丈30cm。腺毛を持たない。花冠は紫赤色。血盆草(ケツボンソウ)の全草を朱砂草(シュシャソウ)と呼んで咳血や吐血、鼻血、血痢、刀傷などの治療に中薬利用される。

学名 Salvia substolonifera E.Peter    
種小名などのラテン語読み スブストロニフェラ
種小名などの意味 [やや匍匐する枝を持った]
一般名 湖広草(ココウソウ)
中国原産の匍匐性の一年草または多年草。草丈30cm。花序に腺毛を持つ。全草を走茎丹参(ソウケイタンジン)と呼んで吐血や激しい嘔吐、蜘蛛瘡の治療に治療に中薬利用される。

学名 Salvia scapiformis Hance    
種小名などのラテン語読み スカピフォルミス
種小名などの意味 [葉のない茎の]
一般名 タカサゴタムラソウ(高砂田村草)、白補薬(ハクホヤク)、地梗鼠尾草
中国、台湾、フィリピンに分布する一年草。草丈25cm。全草を白補薬(ハクホヤク)と呼んで虚弱乾痩や労傷疼痛などの治療に中薬利用される。

学名 Salvia chinensis Benth.   
種小名などのラテン語読み キネンシス
種小名などの意味 [支那の]
一般名 マルバアキノタムラソウ(丸葉秋の田村草) 、紫参(シジン)、小丹参(ショウタンジン) 
中国原産の一年草。草丈70cm。全草を石見穿(セキケンセン)と呼んで肝炎や赤白帯下の治療に中薬利用される。

チェリーセージ 新世界セージ

学名 Salvia greggii A.Gray 
種小名などのラテン語読み グレッギイ
種小名などの意味 [メキシコで採集したグレッグへの献名]
一般名 チェリーセージ (cherry sage)、アキノベニバナサルビア (秋の紅花サルビア), autumn sage
米国テキサス~メキシコ原産。狭義のチェリーセージ。‘Furman’s Red’, ‘Big Pink’, ‘Alba’, ‘Peach’, ‘Teresa’, ‘Pink’, ‘Purple Pastel’, ‘Cherry Chief’, ‘Desert Pastel’, ‘Strawberries and Cream’などの多くの品種がある。‘Javier’と‘Peter Vidgeon‘はRHSのAGMを受賞。S. microphyllaと近縁で自然交雑種 (S.× jamensis) もあり、交配品種も多い。小低木。樹高1.2m。葉は長さ2.5cmで、精油成分としてカルバクロールを含有し、オレガノの様な香りがある。夏~秋に開花。花冠は赤が基本で、ピンク、白など品種によりさまざま。 氷点下7℃まで生育可能。葉は豆料理や肉料理、シチューなどの香りづけに用いられる。

学名 Salvia microphylla Kunth    
種小名などのラテン語読み ミクロフィッラ
種小名などの意味 [小さい葉の]
一般名 チェリーセージ(cherry sage)、baby sage, Graham’s sage, blackcurrant sage
米国アリゾナ~メキシコ原産。チェリーセージとして流通する3種のうちの1種。本種のシノニムであるS. lemmonii A.Grayを独立種とする解釈もある。変種としてSalvia microphylla var. neurepia (Fernald) Eplingがある。園芸品種として、‘Alba’, ‘Blush Pink’, ‘Forever Red’, ‘Graham’s Sage’, ‘James Compton’, ‘Kew’s Red’, ‘Red Velvet’, ‘Red’など多数あり、’Cerro Potosi’、’Hot Lips’、’Ribambelle’、’Royal Bumble’はRHSのAGMを受賞。S. greggiiと近縁で自然交雑種 (S.× jamensis) もあり、交配品種も多い。常緑亜低木で落葉するものもある。原産地では樹高2mに達する。メキシコでは薬草茶として利用される。

学名 Salvia × jamensis J.Compton    
種小名などのラテン語読み ヤメンシス
種小名などの意味 [James Comptonによる発見地に最も近い村であるJameの]
一般名 チェリーセージ (cherry sage)
S. greggiiとS. microphyllaとの自然交雑種もしくは人工交配種。園芸品種として’Golden Girl’、’La Luna’、’Hot Lips’、’Javier’、’Rasperry Royal’、‘Lilac’、‘Lilac White’、‘Orange’、‘Purple’、‘Salmon’、‘Salmon Pink’、‘Salmon Yellow’、‘Yellow’など多数。

チア 新世界セージ

学名 Salvia hispanica L.  
種小名などのラテン語読み ヒスパニカ
種小名などの意味 [スペイン語圏の]
一般名 チア (chia), ブラックチア (black chia)
中米原産。メキシコ中部~グァテマラに自生。「chia」はこの植物のナワトル語の呼び名である「chian」を語源とするスペイン語。一年草で氷点下で枯死。草丈1.7m。花冠は紫もしくは白色。短日植物で秋に開花。温帯でもチアシード生産可能な早咲き品種もある。果実(チアシード)は長さ2mm程度の楕円形で光沢があり、黒、茶、灰、白などのまだら模様。チアシードはメソアメリカ文明の主食として重要で、儀式や薬用にも用いられてきた。チアシードにはαリノレン酸などのオメガ3脂肪酸やホウ素、カルシウム、鉄などのミネラル、コーヒー酸やケルセチン、ケンペロール、ミリセチンなどの抗酸化物質、ビタミンなどを豊富に含むスーパーフードとして注目され、吸水するとグルコマンナンなどのゲル状物質で12倍に膨れて、ヨーグルトやシリアル、スムージー、サラダ、飲料などで利用されるほか、乾燥種子を粉にして菓子原料にする。またスプラウトを食用にする。現在、チアシードはメキシコ、アルゼンチン、ボリビアなどで商業生産されている。

学名 Salvia columbariae Benth 
種小名などのラテン語読み コルンバリアエ
種小名などの意味 [鳩のような]
一般名 チア (chia), ゴールデンチア (golden chia), chia sage, desert chia
北中米原産。米国南部~メキシコにかけて自生。一年草。草丈50cm。葉は羽状に裂け裂片は不規則で丸みを帯びる。ネギ坊主の様な球状の花序を花茎に1~2個着生。花冠は薄紫色で苞は赤紫色。チアシード(果実)はアメリカンインディアンにとって重要な食料であるとともに、解熱剤、傷薬のほか、目の異物除去に薬用とされる。

学名 Salvia carduacea Benth. 
種小名などのラテン語読み カルドゥアケア
種小名などの意味 [アザミの様な]
一般名 チア (chia), thistle sage
米国カリフォルニア~メキシコバハ・カリフォルニアの高地原産。一年草。草丈は生息地によって15~100cmと幅がある。ロゼットを呈して、花茎を伸長する。根出葉は無柄で長さ30cm、アザミの様な羽状で棘があり、毛に覆われて白っぽく、レモングラスの様な香りがある。花茎の先端に、白い綿毛で球状になった花序を1~2個着ける。この綿毛で球状になる花序は極めて特徴的。萼には棘があり、綿毛の丸い花序の土台となる。花冠は薄紫色でオレンジ色の雄蕊が目立つ。果実は白っぽい茶色でまだら模様がある。観賞用に供される。アメリカンインディアンはチアシードをほかの穀類とミックスるして粉砕しお粥などの食用にする。

学名 Salvia tiliifolia Vahl    
種小名などのラテン語読み ティリイフォリア
種小名などの意味 [シナノキの葉の様な]
一般名 タラムマラチア (Tarahumara chia)、 linden-leaf sage
中米原産。生育旺盛で侵略性が強く、現在では、北米南西部、アフリカ、中国、インドなどにも帰化。芳香があり、草食動物が食べない。一年草。草丈1m。葉の形はシナノキに似る。花冠は薄青紫色。果実(チアシード)はこげ茶色でまだら模様がある。チアシードは古代からメソアメリカの重要な食料。

学名 Salvia polystachya Cav.     
種小名などのラテン語読み ポリスタキア
種小名などの意味 [穂を多く付ける]
一般名 チアデカンポ (chía de campo)、ワイルドセージ (wild sage)
中米原産。メキシコ、グァテマラ、パナマ、コスタリカに自生。多年草。草丈2.7mに達する。花冠は薄紫色。チアデカンポはフィールドチアの意。チアと名が付くがチアシード用ではない。伝統医療では、下剤、胃腸薬、難産治療に用いられるほか、葉の香りで鼻血を止血したり、葉の汁や煎剤で髪を黒くしたり、葉の浸剤を内服して頭痛に用いたりする。メキシコ薬学会はエモリエント剤および目の異物の除去剤と記している。

米国原産 新世界セージ

学名 Salvia apiana Jeps.  
種小名などのラテン語読み アピアナ
種小名などの意味 [ハチの]
一般名 ホワイトセージ (white sage)、bee sage, sacred sage
米国カリフォルニア~メキシコ北西部原産。モハーヴェ砂漠やソノラ砂漠などの乾燥地に自生。常緑亜低木。 ‘Compacta’などの品種がある。樹高1~1.5m。葉は白っぽい銀色。学名の種小名の如く、花にはオオハナバチやマルハナバチ、クマバチ、ツリアブ、ハチドリなどが蜜を求めて集まるが、受粉に貢献するのはオオハナバチとマルハナバチに限られている。アメリカンインディアンは、種子を挽いて主食のピノール(トウモロコシ主原料の粉)に混ぜる原料の一つとするほか、ビスケットの原料に用いる。さらにクラリセージ同様、吸水種子のゼリー物質を利用して目のごみを取るのに用いる。また、茎葉を料理に用いたり、根を産後のケアにティーで利用する。茎葉を束ねて乾燥させて焚き、スマッジングによって燻蒸、浄化、お祝いなどの儀式に利用。近年、乱獲によって野生の個体が減っている。

学名 Salvia sonomensis Greene   
種小名などのラテン語読み ソノメンシス
種小名などの意味 [ソノマ産の]
一般名 ソノマセージ (Sonoma sage)、クリーピングセージ (creeping sage)
北米カリフォルニア州そのまカウンティ固有種。匍匐性の亜低木。マット状になり、草丈30cmで開花期以外は15cm。花冠は薄青紫色。 ‘Cone Peak’ , ‘Farmar-Bower’, ‘John Farmar-Bowers’, ‘Serra Peak’などの品種がある。

学名 Salvia spathacea Greene    
種小名などのラテン語読み スパタケア
種小名などの意味 [仏炎苞の]
一般名 California hummingbird sage, hummingbird sage, pitcher sage
北米カリフォルニア原産。常緑多年草。草丈50cm。ハチドリが受粉する。花茎の各節に輪生花序を形成。赤茶色の苞が発達してよく目立つ。園芸品種として、’Confetti’, ‘Avis Keedy’, ‘Powerline Pink’などがある。観賞に供されることが多く、本種はRHSのAGMを受賞。

学名 Salvia reptans Jacq.   
種小名などのラテン語読み レプタンス
種小名などの意味 [匍匐性の]
一般名  コバルトセージ(cobalt sage)
米国テキサス原産。テキサス~グァテマラに自生。多年草。草丈1m。匍匐性だが、立性品種もある。葉は細長い。花冠はコバルトブルーで、下唇が大きく、目立つ。

学名 Salvia farinacea Benth.    
種小名などのラテン語読み ファリナケア
種小名などの意味 [粉質の]
一般名 ブルーサルビア、ケショウサルビア (化粧サルビア)、mealycup sage, mealy sage 
米国テキサス州~メキシコ北東部原産。多年草。温帯では一年草扱いされる。草丈90cm。日本には昭和初期に渡来し、観賞用として普及。’Blue Bedder’, ‘Strata’, ‘Victoria’, ‘Alba’など多くの品種がある。S. longispicataとの交雑品種もいくつかある。

学名 Salvia ‘Indigo Spires’(S. longispicata x S. farinacea)   
一般名 ラベンダーセージ (lavender sage)
落葉多年草。米国カリフォルニア州ハンティントンデザートガーデンで発見された、S. longispicataS. farinaceaの交配品種。観賞用で人気。

メキシコ原産 新世界セージ

学名 Salvia divinorum Epling & Játiva    
種小名などのラテン語読み ディウィノルム
種小名などの意味 [神の]
一般名 サルウィア・ディウィノルム、ska maría pastora, seer’s sage, yerba de la pastora
メキシコオアハカ州シエラマサテカ雲霧林の固有種。常緑多年草。草丈1 m以上。茎は中空。有毛の白い花冠と薄紫の萼が美しい。マサテコ族が呪術、宗教、医療目的で使用。シャーマンも使用。幻覚症状を引き起こすサルビノリンAを含有し、北欧、独、伊、豪州、米国の一部の州で栽培と取り扱いが禁止、そのほかの多くの国で所持は良いが販売が禁止されています。
日本では医薬品医療機器等法に基づく指定薬物に指定。

学名 Salvia elegans Vahl     
種小名などのラテン語読み エレガンス
種小名などの意味 [優美な]
一般名 パイナップルセージ (pineapple sage), pineapple-scented sage, タンジェリンセージ (tangerine sage)
メキシコ原産。温帯高地の森林に自生。常緑多年草~亜低木。草丈1.5m。短日植物で秋から開花。赤く細長い花冠が良く目立ち、ハチドリやチョウが受粉する。コーヒー酸やロスマリン酸、サルビアノール酸、フラボンを含有。アンジオテンシンII受容体拮抗作用やアンジオテンシン変換酵素阻害作用による降圧効果が報告されている。葉と花を食用にするほか、メキシコの伝統医療では不安症や高血圧治療に用いる。

学名 Salvia involucrata Cav.    
種小名などのラテン語読み インウォルクラータ
種小名などの意味 [総苞の]
一般名 ローズリーフセージ (roseleaf sage)
メキシコ原産。樹林の端の木陰に自生。多年草。本種と園芸品種の’Bethellii’、’Boutin’がRHSのAGNを受賞。ほかにも多くの園芸品種がある。草丈1.5m。花冠、萼、苞が濃いピンク色。苞葉は3つの花を包んでいて、開花に伴い脱落する。花序先端に大きなつぼみの着くのが特徴。伝統医療で、スマートドラッグとして記憶増強に用いられる。

学名 Salvia leucantha Cav.      
種小名などのラテン語読み レウカンタ
種小名などの意味 [白い花の]
一般名 メキシカンブッシュセージ (Mexican bush sage)、アメジストセージ、メキシカンセージ
メキシコ原産。多年草。温帯では地上部が冬枯れする。氷点下4℃まで生育可能。草丈1.3m。花冠は白を基本として有毛、苞は濃紫色で毛深くフェルトの様。精油成分は、酢酸ボラニル(24%), β-グルジュネン (15%)、β-カリオフィレン(14%)、ジラピオール (11%)、ビシクロゲルマクレン(9%)とする報告や、酢酸ボラニル(10%)、カリオフィレン(10%)、β-ファルネセン(11%)、ゲルマクレンD (11%)、アリストレン(17%;花の主要成分)、α-ピネン(4%)、δ-d-カンフェン(3%)、β-ピネン(2%)とする報告、酢酸ボルニル(41%)、アズレン(13%)、ゲルマクレンD(8%)、ボルネオールL (8%)、ビシクロゲルマクレン(5%)とする報告などがある。観賞に供されることが多く、園芸品種も多数。本種はRHSのAGMを受賞。

学名 Salvia patens Cav.    
種小名などのラテン語読み パテンス
種小名などの意味 [開かれた、遮られていない]
一般名 ソライロサルビア(空色サルビア)、ゲンチアンセージ (gentian sage), spreading sage
メキシコ~グァテマラの高地原産。多年草。種小名は花冠の形態から。草丈1.2m。’Camebridge Blue’はRHSのAGMを受賞。氷点下12℃まで生育可能。観賞用。

南米原産 新世界セージ

学名 Salvia coerulea Benth.  
種小名などのラテン語読み コエルレア
種小名などの意味 [青色の]
一般名 blue anise sage , anise-scented sage , Brazillian blue sage
南米原産。学名については日本ではシノニムのS. guaranitica A.St.-Hil. ex Benth.もよく見かける。本種をメドウセージと呼ぶのは明らかな間違い。’Black and Blue’などの品種がある。落葉亜低木。草丈1.5m。アニス臭がある。氷点下10まで生育可能。観賞用。

学名 Salvia splendens Sellow ex Schult.      
種小名などのラテン語読み スプレンデンス
種小名などの意味 [強光沢のある、立派な]
一般名 サルビア (来路花)、ヒゴロモソウ (緋衣草)、スカーレットセージ(scarlet sage)、bonfire salvia
ブラジル原産。多年草だが氷点下で枯死するため温帯では一年草として扱われる。
日本には明治に渡来し、昭和になって花壇花として普及サルビアの名で流通する観賞用の種としては、本種以外にも S.coccineaS. farinaceaS. patensなど多数ある。
園芸品種として’Sizzler’や’Salsa’、’Violacea’、’フラメンコ’、’ボンファイアー’、’カラビニエール’など極めて多数あり、’Vanguard’ と ‘Van-Houttei’はRHSのAGMを受賞。 草丈1.3mになるが、花壇用品種は小型で 60cm 程度。

学名 Salvia uliginosa Benth. 
種小名などのラテン語読み ウリギノーサ
種小名などの意味 [湿地生の]
一般名 ボッグセージ (bog sage)
南北アメリカ原産の多年草もしくは亜低木。温帯では越冬しないため一年草扱い。野生のものは草丈1mに達する。日本には明治初期にサルビアより早く渡来。観賞用サルビアの極早生種として流通。プルコ系などの品種がある。中国にも渡来し、中薬では全草を小紅花(ショウコウカ)と呼び、止血や腹痛の治療に用いられる。

南北米原産 新世界セージ

学名 Salvia coccinea Buc’hoz ex Etl.    
種小名などのラテン語読み コッキネア
種小名などの意味 [紅色の]
一般名 ベニバナサルビア(紅花サルビア)、朱唇(シュシン)、blood sage, scarlet sage, Texas sage, tropical sage
南北アメリカ原産の多年草もしくは亜低木。温帯では越冬しないため一年草扱い。野生のものは草丈1mに達する。日本には明治初期にサルビアより早く渡来。観賞用サルビアの極早生種として流通。プルコ系などの品種がある。中国にも渡来し、中薬では全草を小紅花(ショウコウカ)と呼び、止血や腹痛の治療に用いられる。

当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第61号 2022年9月