2022.5.15.

南の島の蔓性植物

石垣島サイエンスガーデン代表 ボタニカルアーティスト

橋爪雅彦

今回は本土では見ることの少ない八重山独特のつる性植物をたずねてみましょう。

●ヒスイカズラ

長さ20m以上にも伸びる蔓性のヒスイカズラ。植物とは思えない翡翠色をした独特の形状の花を一房に150ほど下垂させ、藤棚のように周囲を埋め尽くします。フィリピンのルソン島周辺が原産ですが、現地でも絶滅危惧といわれ、なかなか見ることはできないようです。国内でも多くの植物園では温室で見ることができますが、沖縄では露地栽培が可能です。私のガーデンでも棚から蔓が周囲のセンダンなどの大きな木に這い上がり、最盛期には1,000本近いエメラルドグリーン色の花房が下がって、原産地のような趣を醸し出します。花言葉は「私を忘れないで」ですが、一度見た方は忘れようにも忘れられない感動を受けます。

ヒスイカズラ
●ワニグチモダマ

ワニグチモダマは小笠原から奄美以南熱帯地域に分布するマメ科の蔓性植物です。10m以上にも伸びる蔓は海岸林の近くで見ることができます。淡い黄緑色の花は4㎝くらい、10~30ほどの花を散房花序につけます。実はあまり見ることがありませんが、長さ10㎝以上もある大きな実に、硬い種が数個入っています。名前の由来は種子の形が鰐口わにぐち(神社仏閣の正面の軒につるされた金属製の音具)に似ているのでついたといわれています。

ワニグチモダマ
●カショウクズマメ

八重山と台湾に分布するマメ科の蔓性植物です。ワニグチモダマによく似た花は一まわり大きく5~6㎝、暗紫色でペンダントライトのような形状で、山中でよく見かけます。さやは10㎝ほどのワラジのような形をしており、2㎝くらいの硬い丸い種子が入っています。この種子はアクセサリーなどによく利用されています。ワニグチモダマとカショウクズマメはムクナ(アーユルベーダでも重要な薬用植物)の仲間ですが、ガーデンではムクナ・ベロッティーという種が育っています。国内では栽培例が少ない種で別名をレッドジェードバインといい、真っ赤なヒスイカズラと同様の花が見られると思います。

カショウクズマメ
●マイソルヤハズカズラ

インド原産のキツネノマゴ科の蔓性植物です。とても細い1mほどの花茎に赤褐色の苞に包まれた鮮黄色の花弁との対比が特徴の花が、次から次へと咲き続けます。開花期間も石垣島ではヒスイカズラが終わる頃の4月から9月頃、沖縄県内では年間を通してあちこちで花を見かけます。県内ではヒスイカズラと同様に、花数が非常に多く豪華な棚仕立てを見ることができます。

マイソルヤハズカズラ
●シクンシ

中国南部や東南アジアなどに分布する、常緑の蔓性木本植物です。原産地では薬用や観賞用として栽培されています。他の木に絡みつきながら10mくらい伸長します。線香花火が弾けるような形状の花は、咲き始めは初め白色ですが後に淡紅色から濃紅色に変化します。花は穂状に多数咲き桃の果実を甘く熟したような香りがあり、夕方にはより香りが強くなります。花期はほぼ年間を通して咲くようで、街中でも塀を飛び越して咲く花の塊をよく見かけます。

シクンシ
●ニトベカズラ

メキシコ原産の蔓性の多年草です。名前の由来は新渡戸稲造博士にちなんでいるようですが、日本に渡来したのは1971年といわれていますから、わりあい新しく見られるようになった植物です。主に民家の塀に絡まるように植えられて、小さなピンクの花のように見えるのはハート型をした萼片で、ブーゲンビリアに似ています。別名クイーン・ネックレスとも呼ばれ、年間を通して咲くためよく見かける花になりました。

ニトベカズラ
●バラアサガオ

バラアサガオはメキシコから南アメリカ原産の蔓性植物です。今では世界中の熱帯に広く分布します。国内でも小笠原や八重山などに帰化しています。大きなヤツデのような葉を広げ、蔓や葉の大きさからはチョット拍子抜けするような、鮮やかな黄色い5㎝ほどの花をつけます。バラアサガオの名前は果実をとり囲む萼が開いてバラの花のように見えることにちなみます。果実はドライフラワーとして利用され、英語名ではウッド・ローズと呼ばれています。

バラアサガオ
●カエンカズラ

カエンカズラはブラジル原産の蔓性植物で、沖縄ではブロック壁や日除け棚などに這わせて花のカーテンのように植えられています。「火炎葛」というその名の通り、初春の頃の花の咲く様は炎が燃え上がるような景観を呈します。また、初春の花の見事さだけでなく、成長が早いその緑は、暑さをしのぐ景観植物としても利用されています。

カエンカズラ

●ガーリックバイン

ガーリックバインは中南米原産の蔓性常緑低木で性質はとても強健です。他の物に絡みつきながら数m伸び、柔らかな光沢のある葉をつけます。花はラッパ状で、直径6㎝ぐらい、小枝の先に数個から十数個固まって咲かせます。花色は、咲き始めは濃紫色で次第に明るい青紫色に変わり、やがて白色に変化するので、一株で様々な花色が楽しめます。秋口が開花期ですが、温度が高いとそれ以外の時期にも花を見ることがあります。この植物の最大の特徴は「ニンニク臭」で、別名(ニンニクカズラ)の通り植物全体が臭います。

ガーリックバイン
●ベンガルヤハズカズラ

ベンガルヤハズカズラはインド~東南アジア原産の蔓性植物です。花は径5~8㎝の漏斗状で、花色は青紫色、花筒の内部は黄色です。最大の特徴は、低温期には花数は減りますが年間を通して咲き続けることで、春と秋に特に多くなります。挿し木で簡単に増やせるため日除け棚や道路の法面などいたる処で青紫の花を見ることができます。

ベンガルヤハズカズラ

このように、亜熱帯の島々では年間を通して多くの蔓性植物が楽しめます。沖縄で見られる蔓性植物の多くは花の数が非常に多いことが特徴で、沖縄を訪れた際は民家の壁面などから道路に咲きあふれる花を楽しむことができるでしょう。

石垣島サイエンスガーデン代表 ボタニカルアーティスト
橋爪雅彦 はしづめまさひこ
東京都立園芸高等学校卒業。学研の図鑑・東京大学出版会・誠文堂新光社(ガーデンライフ)・東京書籍生物教科書の図版及び科学論文などのイラスト担当。大阪花博東日本イベント総合プロデュース。国立博物館監修『原色日本のラン』執筆のため、東京より石垣島に移住。石垣市川平において「川平ファーム」としてパッションフルーツの加工を始める。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第57号 2021年9月