2021.3.24.

腸の健康を考える-腸内細菌に注目!-(1)

いりたに内科クリニック院長

入谷栄一

腸の健康が全身に及ぼす影響について、活発な研究が行われています。その中で、腸内環境が便秘や下痢などの便通異常だけでなく、感染症、アレルギー、肥満、糖尿病、動脈硬化、がん、歯周病、うつなど、様々な病気の発症と関係することが分かってきました。腸の健康状態が悪いと、肌荒れや肌老化など美容面にも影響します。まさに、全身の元気とキレイのカギを握っているのが腸なのです。

若々しく健康的な毎日を過ごすために腸の健康を左右する“腸内細菌”に注目し、腸内細菌のバランスを整える「腸活」を実践しましょう。

Keep the gut healthy 生活習慣病予防や老化予防にも腸から健康を見直そう

健康を意識する人たちから、熱い視線を浴び続けている“腸”。その秘密の花園“腸内フローラ”の世界に分け入ってみましょう。

腸は消化・吸収だけでなく 免疫機能の大事な担い手

腸は食事で摂った食べ物を消化・吸収し(主に十二指腸、小腸)、便をつくって不要なものを排出する(大腸)役割をもっています。また、腸には全身の免疫細胞の6〜7割が集中しており、免疫機能を正常に働かせるためにも重要な臓器です。腸がよい状態なら免疫がきちんと働き、病原体や有害物質から体を守ってくれます。逆に腸に不調があると、免疫が低下してかぜや病気にかかりやすくなったり、免疫が過剰に働いて、アレルギーや自己免疫疾患などを引き起こしたりすることになります。

こうした腸の働きをコントロールしているのは、自律神経です。過剰なストレスを受けると、その刺激が脳に伝わり、自律神経のバランスが乱れて下痢や便秘など腸の不調が起こることになります。ただし、腸と脳の関係は一方的ではなく、腸に不調があると、その情報は神経系を介して脳に伝わり、腹痛や不快感と共に、抑うつや不安など感情の変化も引き起こします。このように腸と脳は密接に関係しており、「腸脳相関」と呼ばれています。心の健康を保つためにも、腸は重要な役割を果たしているのです。

腸の健康を保つポイントは 腸内細菌のバランスと多様性

腸が全身の健康に関係することが明らかになるにつれ、そのカギを握る存在として注目されるようになったのが、腸内細菌です。

私たちの腸には、およそ100兆個、1000種類以上の腸内細菌がすみついています。これを「腸内細菌そう」といい、腸壁の粘膜に生息してお花畑(フローラ)のように見えることから「腸内フローラ」とも呼ばれています。
腸内細菌には大きく分けて体にプラスの働きをする「善玉菌」、体に悪影響を及ぼす「悪玉菌」、そのどちらでもない「日和見菌」の3種類があります。善玉菌に対し、悪玉菌は悪者扱いされがちですが、健康を維持するために必要な役割も果たしており、あくまでバランスよく腸内に存在していることが重要です。また、腸内細菌は多様性(種類が多いこと)も大事です。多種多様な菌が共生することで、一部の細菌がダメージを受けても他の細菌が協力して腸内環境を良好に保ちます。このように腸内細菌のバランスがよく多様性に富んでいることを “ 腸内環境がよい ” 状態といいます。

腸内環境の状態は、毎日の便をチェックすれば、ほぼ分かります。滑らかなバナナ状で匂いの強くない便が出ていれば、腸内環境は良好です。一方、腸内環境が乱れてくると、硬くコロコロした便やゆるい液状の便が出たり、便の匂いがきつくなったりします。お腹が張ったり、おならが増えたりするのも悪玉菌が増えている証拠です。

善玉菌を優位にバランスのよい状態を

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ボタニカルアート = 田中 沙織

いりたに内科クリニック院長
入谷栄一 いりたにえいいち
総合内科専門医、呼吸器専門医、アレルギー専門医。日本メディカルハーブ協会理事。東京女子医科大学呼吸器内科非常勤講師。在宅診療や地域医療に力を入れる他、補完代替医療やハーブ、アロマに造詣が深く、全国各地で積極的に講演活動も行う。著書に『病気が消える習慣』、『キレイをつくるハーブ習慣』(経済界)など。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第55号 2021年3月