2021.3.6.

アレルギーのメカニズムとセルフケア アレルギーのきっかけは「皮膚」にあった !(2)

くろかわ皮フ科院長

黒川晃夫

アレルギーが起こるメカニズム

“ アトピー”ってどんなもの?

アトピー性皮膚炎は、単なる乾燥性の湿疹と区別がつきにくいこともあり、適切な治療を受けないまま、自己流で対処している人も少なくありません。気になる症状があれば、なるべく早めに専門医を受診するようにしましょう。

アトピー性皮膚炎とは上手に長くつき合う気持ちで

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が現れ、よくなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。アトピー素因(※)に皮膚のバリア機能の低下が加わって発症し、ストレスで悪化しやすい傾向があります。また、かくことでバリア機能が壊れて刺激が入りやすくなり、同時に知覚神経が過敏になって、さらにかゆみが強くなるという悪循環に陥りがちです(p.9右下参照)。初期の適切な対処が重要なため、疑わしい症状があれば早めに皮膚科専門医を受診しましょう。治療は、ステロイド外用薬などで皮膚の炎症を抑え、皮膚を清潔にして保湿するスキンケアを行い抗ヒスタミン薬を内服し、かゆみを抑えるのが基本的な治療です。その上で、補助的に漢方治療、食事療法、アロマセラピー、精神・心理療法などを行うこともあります。上手に長くつき合う気持ちで根気よく治療を続けていくことが大切です。

アトピー素因……本人または家族にアレルギー疾患の既往歴がある、またはIgE抗体を産生しやすい体質。アトピー素因を有する人や、アレルギー疾患がある人は、3年に1度は総IgEや各種アレルゲンなどのアレルギー検査を。症状によりそれらの値は変化します。

接触皮膚炎はアレルゲンを特定し、原因物質との接触を避けること

アトピー性皮膚炎と同様、皮膚にかゆみや湿疹が現れる病気に接触皮膚炎があります。天然ゴム製品や金属など特定の物質に触れることで起こる遅延型アレルギーで、中には原因物質に気づかず使用を続け、皮膚の炎症が長期にわたって続く人もいます。接触皮膚炎が疑われた場合は、病院でパッチテストを受けて原因物質(アレルゲン)を調べ、陽性反応が出たものとの接触を避けるようにします。接触皮膚炎の場合も、皮膚が乾燥しているとアレルゲンが侵入しやすいので、皮膚の保湿を心がけてバリア機能を強化することが予防・改善につながります。

漢方から見たアレルギー

漢方は心と体を一体のものとしてとらえ、心身のバランスを整えることを目的とした医学。アトピー性皮膚炎をはじめアレルギー疾患は、精神的ストレスや体質、内分泌代謝や自律神経の異常などいくつもの要因がかかわっているため、漢方治療を併用することで、よりよい治療効果が得られることも少なくありません。診療では「しょう」「寒熱」「気血水」という独特の診断概念を用い、体質やその時の状態によって、一人ひとりに合わせた漢方薬を処方します。例えば、痩せて気力もあまりない「虚証」の人には、12歳までの小児の場合には黄耆建中湯おうぎけんちゅうとう、それ以上の年齢の人の場合は補中益気湯ほちゅうえっきとうを、熱がこもっている人には白虎加人参湯びゃっこかにんじんとうをといった具合です。

保湿で皮膚のバリア機能を強化 !

皮膚トラブルを防ぐために第一に心がけたいのが、保湿によるスキンケア。空気が乾燥する秋冬はもちろん、日射しやエアコンの影響で肌の内側は一年中乾いています。毎日の習慣にして、健康で美しい肌をキープしましょう。

保湿ケア Moisturizing care

保湿剤は皮膚が本来もっているバリアの代わりになります。保湿のタイミングは、入浴後と朝の洗顔後など1日2回以上が効果的です。

①まずは肌を清潔に。ただし洗い過ぎはNG !
ごしごしと強くこすると、皮脂を取り過ぎたり、皮膚を傷つけたりしてしまいます。石けんをよく泡立てて手でやさしくなで洗いし、石けん成分をよく洗い流します。

②バスタブに浸かって、リラックス&保湿
38〜39°Cのぬるめのお湯にゆっくり浸かりましょう。42°Cを超えるとリラックス効果が得られないばかりか、皮脂が溶け出し、肌が乾燥しやすくなります。保湿成分入りの入浴剤やハーブバスもおすすめです。

③入浴後には保湿剤をしっかりと
入浴後、すぐに保湿剤を塗って肌の表面をコーティングします。夏はオイルフリーの化粧水タイプや乳液、冬はクリームや軟膏など、季節や自分の肌の状態に 合ったものを選びましょう。

インナーケア Inner care

日常生活では睡眠不足やストレスを避け、全身の健康状態をよくすることも大切です。バランスのよい食事を心がけ、肌に有効な栄養素を意識的に摂り入れましょう。

【 ビタミン・ミネラル 】
美肌のビタミンといわれるビタミン C、皮膚や粘膜を丈夫にするビタミン A、皮膚の新陳代謝を助けるビタミンB群など。ミネラルでは皮膚細胞の再生を促す亜鉛がおすすめです。

【 プロバイオティクス・プレバイオティクス 】
免疫に深くかかわる腸内細菌叢のバランスを整えます。プロバイオティクスはヨーグルトに含まれるビフィズス菌など。プレバイオティクスはプロバイオテクィスを増やすオリゴ糖など。

皮膚の構造

皮膚のバリア機能の中心的役割を担っているのは、肌表面にある角質層です。角質層では表面を覆う「皮脂」、角質細胞内の「天然保湿因子(NMF)」、角質細胞間を埋める「角質細胞間皮質」(セラミドなど)の3つの成分によって、皮膚の潤いが保たれています。一方、乾燥した皮膚(ドライスキン)では、これらの成分が少なくなるため、水分が蒸散しやすくなり、バリア機能が低下して、外部からの刺激に弱くなります。

健康な皮膚は表面も潤ってキメが整っていますが、バリア機能が低下した皮膚はスキだらけの状態で、アレルゲンや微生物が侵入しやすくなっています。

ボタニカルアート = 田中 沙織

くろかわ皮フ科院長
黒川晃夫 くろかわてるお
1994年、大阪医科大学卒業。同大学附属病院にて臨床研修。市立枚方市民病院(現市立ひらかた病院)主任部長、大阪医科大学(現大阪医科薬科大学)准教授を経て、2020年4月、兵庫県尼崎市にてくろかわ皮フ科開院。大阪医科薬科大学非常勤講師を歴任。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。医学博士。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第54号 2020年12月