2015.12.1

【ビルベリー】食べるハーブ?飲むハーブ?ビルベリーはどっち?

株式会社グレースフィールド役員

木之下惠美

ビルベリーの自己紹介

ビルベリーの自己紹介をするにあたって、よく似たツツジ科の植物であるブルーベリーとコケモモを、ビルベリーと比較しながら進めていきましょう。

学名Vaccinium myrtillus(ワッキニウム・ミルティルス)、ツツジ科のビルベリーは、ブルーベリーの近種ですが、ブルーベリーにあらず。北欧フィンランドのムーミンのお話の中で、よく登場するジャムの材料となるコケモモとも近種ですが、これにもあらず。しかし、野生のコケモモとビルベリーは同じ北欧の出身。ブルーベリーは北アメリカ原産で、アメリカやオーストラリアで多く栽培されています。ビルベリーの果実とブルーベリーの果実の外見はよく似ていますが、ビルベリーの実の中身は黒っぽい紫色、ブルーベリーの実の中身はぶどうの中身のような色です。

ブルーベリーは生産可能な果樹ですが、土地や環境にデリケートなビルベリーは果樹としての生育は難しく、本来の環境にのみ適応できる薬樹やくじゅです。

ビルベリーには、果皮の部分だけではなく果実にもアントシアニンが豊富に含まれています。これは、ビルベリーが、白夜の夏とほの暗い冬という特徴的な北欧の気候の中で育つことに大きく由来します。アントシアニンは、植物の中で紫外線を受けて生成され、植物自身を紫外線から守る働きをしているのです。

ビルベリーとさまざまなアントシアニン

アントシアニンは、ビルベリーなどの植物に含まれる赤や青、紫や黒色として認識できる水溶性の色の植物栄養素群です。現在までに数多くの種類が報告されているアントシアニン類は、図1のように6種類のアントシアニジンにさまざまな糖が組み合わさり、多種のアントシアニンを構成しています。これらのアントシアニンには、血管の抗酸化・抗加齢作用、紫外線による細胞の損傷を防ぐ作用、目の保護作用、視力回復作用、生活習慣病の予防と改善作用、がん細胞の潜在的抑制作用などさまざまな働きがあります。アントシアニン類は相互作用により、毛細血管機能が改善され、眼精疲労や視覚機能の低下を改善する作用があるため、眼精疲労や目の加齢が気になる方に、多種のアントシアニンを含むハーブが注目されています。

ビルベリーはハーブ?それとも果物?

ビルベリーは、「薬用に用いられる植物のうち、野菜や穀物のように大量に生産されるものや観賞用の植物以外のものであること」、というメディカルハーブの定義に適合します。そのため、ビルベリーは果物というよりもハーブの一種と考えられます。また、ビルベリーは図1のように5種類のアントシアニジンに糖が結合した15種類のアントシアニンを含むことにより、特徴的な薬理性をもっています。

しかし、北欧で採取されたアントシアニンの含有率が高いビルベリーの果実は、ベリー類の中では水分量が多く、運搬に適しないため、ジャムやジュース、粉末などで日本国内にもたらされています。ビルベリー果実の凝縮剤は、天然のままではないため、摂取量の加減とともに、カフェインなどのアルカロイド類、鉄剤など、ほかのサプリメントや薬剤との相互作用に気を配る必要があります。

ビルベリーの葉はどうか?という疑問が残りますが、『メディカルハーブ安全性ハンドブック』(初版)において、クラス4とされ、十分なデータはないとされています。また、同書の第2版では、果実のみの記載となっており、果実はSafety Class 1,Interaction Class Aとあり、ビルベリーの果実の通常の摂取方法であれば問題がないことを示しています。

アントシアニンを活かすブレンドハーブティー

写真1上部から時計回りにハイビスカス、コーンフラワー、ローズヒップ、ブルーマローの花

アントシアニンを多く含むメディカルハーブは、ローズヒップの偽果、ブルーマローの花、ハイビスカスのがくほう、コーンフラワー(ヤグルマギク)(図1、写真1)などがよく知られています。ちなみに、アントシアニンの植物色素としての研究は、コーンフラワーのドイツブルーから始まりました


日本国内では入手が困難なビルベリーですが、生の果実が手に入るようでしたら、カップにビルベリーを数個入れ、そこに写真2のように4種類のブレンドハーブティーを注ぎ入れて内服するというのはいかがでしょうか。おいしくて健康的なスーパーアントシアニンティーになります。また、この4種類のブレンドに、ビルベリーのジャムを入れても同様の効果が期待できます。

写真2ハイビスカス、コーンフラワー、ローズヒップ、ブルーマローの花のブレンドハーブティーをビルベリーに注ぐ

日本国内でのビルベリーの栽培は極めて難しく、ハーブは土地や季節の違いで、その成分レベルも異なってしまいます。北欧の白夜の中で生育するビルベリーの果実は、ハーブの中でもことにデリケートです。

ハーブは、野菜や果物とは異なり品種改良ができません。品種改良されてしまえば、古い時代からのハーブ本来の特性や作用を享受することができないのです。

しかしブルーベリーは果実であり、日本でもすばらしいブルーベリーが各地で栽培されており、生での入手も比較的容易です。ブルーベリーには、ビルベリーの1/3程度の量ですが、ビルベリーと同様の15種類のアントシアニンが含まれています。生のビルベリーをブルーベリーに替えて4種類のブレンドハーブティーと一緒に楽しんでみてはいかがでしょう。ブルーベリーをハーブティーでしっかり温めてからいただくと、一層甘くておいしくいただけます。

 

株式会社グレースフィールド役員
木之下惠美 きのした・めぐみ
一般社団法人アロマハンドトリートメント協会理事長、(株)グレースフィールド役員。2009年、日本初のアロマハンドトリートメント協会を社団法人として発足。名古屋栄中日文化センター講師。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第34号:2015年12月