2017.3.1.

アーティチョークの植物学と栽培、人との関わり

博士(農学)

木村正典

分類・名称

アーティチョーク(artichoke)は、キク科(Asteraceae(Compositae)チョウセンアザミ属(Cynara)です。

学名とその意味

学名はCynara scolymus L.が古くから広く支持され、特に日本では主流となっています。同属近縁植物としてCynara cardunculus L.(カルドンcardoon、カルドcardo)が知られています。

しかし、Wiklund,A.は1992年、cynara属を、8種、4亜種に分類し、アーティチョークとカルドンは同じ亜種(C.cardunculus L. subsp. flavescens Wiklund) の品種違いであり、形態的な違いはとげの有無(棘のないのがアーティチョーク)であるとしています。

アーティチョークにもカルドンにもそれぞれいくつもの品種がありますので、棘のない品種の総称がアーティチョークで、棘のあるものの総称がカルドンという考えです。アーティチョークと呼ばれているものには棘のあるものもあり、カルドンにも棘のほとんどない品種もあることから、アーティチョークとカルドンは連続と考えるのが自然であり、Wiklundの説も納得できます。

Wiklundによるアーティチョークの学名表記はCynara cardunculus L. subsp. flavescens Wiklundcv. Artichoke (カルドンはcv.Cardoon)となります。
また、WiklundはC.  cardunculus  subsp.  cardunculus 
(『The Plant List』では C.  cardunculus  L.) がこれらの原種に相当するものとし、subsp.  flavescensはイベリア半島とマカロネシアに、subsp.  cardunculusは地中海中央~北東部に分布するとしています。
『The PlantList』にはCynara属に11種記載されていますが、厄介なことにCynara scolymus L.とCynara cardunculus subsp. flavescens Wiklundはシノニム(異名)の関係ではなく、別植物として記載されおり、混乱を生じています。最近の海外の学術論文ではCynara cardunculus L.subsp. flavescensWiklundの学名を多く目にします。近い将来、日本でもこのWiklundの学名が主流になるかもしれません。
属名のCynara(キナラ)は、「犬」を意味する古代ギリシャ語「κύων」、「κυνός」に由来し、総苞(そうほう)にある棘が犬の歯に似ていることに由来するとされています。種小名のscolymus(スコリムス)は、ギリシャ語で「棘」を意味する「skolos」に由来します。変種名のflavescensは「黄色っぽくなる」を意味します。

英名とその由来

英名にはartichokeと単独で呼ぶほかに、globe artichoke、French artichoke、green artichoke、crown artichokeなどの異名があります。
英名のartichokeは、もともとは「大きなアザミ」を意味する中世アラビア語のal khurshuufから来ており、スペイン語のalcarchofa、北イタリアのarticioccoと変化して誕生したと考えられています。ちなみに、Jerusalem artichokeはキクイモ、Chinese artichoke (Japanese artichoke)はチョロギを指します。

和名と中薬

和名はチョウセンアザミ(朝鮮薊)で、カルドンにも用いられます。ここでの「チョウセン」は「外国の」の意味です。アザミとは、キク科のアザミ連や一部のチコリ連の総称で、アザミ連にはCynara(チョウセンアザミ)属以外にSilybum(オオアザミ、マリアアザミ)属、Breea(アレチアザミ)属、Carduus(ヒレアザミ)属、Cirsium(アザミ)属などがあります。

生薬名を洋薊ヨウケイ(菜薊サイケイ)といい、伝統的中薬にはなく、アザミ類では大薊ダイケイ(ノアザミ)、小薊ショウケイ(アレチアザミ)、苦芺クオウ(ヤナギアザミ)、蓮座薊レンザケイ飛廉ヒレンなどがあります。

アーティチョークの花蕾
アーティチョークの花

形態

冬期にロゼットを呈し、太い直根で、短縮茎から根出葉を出すという、キク科に共通の特徴を示します。ロゼットを形成している根出葉は、25枚程度になり、広がった株の直径は1.5mに達します。

葉は羽状に深裂した複葉で、縁辺は波打って、棘はなく、裏面に細かい毛が密生して裏面が白っぽく見えます。一方、カルドンは棘の鋭いのが特徴です。

春から抽台して花茎が伸長すると高さ1m以上になります。一株当たり1年目に4~6、2年目に10~12の頭状花序(花序とは花の集まりの意)をつけます。カルドンでは15~50の花序をつけます。頭状花序はキク科の特徴で、アーティチョークの花はひとつの大きな花に見えますが、実は筒状(管状)花の小花がたくさん集まって形成された複合花で、ひとつひとつの小花が完全花(花冠、萼、雌しべ、雄しべを有する)となっています。小花はいずれも淡紫色です。

花蕾(開花後は頭状花序の基部)は鱗状の多数の小葉(総苞片)が花を包むように総苞を形成しています。形は球形~チューリップ型まで変異し、色も緑と紫、中間があります。径はカルドン(5~10cm)よりも大きい10~15cmです。ひとつひとつの総苞片の先端は内側にやや丸まって頂端の窪むのが特徴ですが、一部の品種では尖っています。また、根元ほど肉厚です。一方、カルドンは総苞片の先端の棘が特徴です。

一般に種子と呼んでいる部分は、キク科の特徴である瘦果そうか(種子のように見える乾燥した果実)であり、ひとつの小花にひとつの果実が形成されます。しかし、結実性は悪く、果実のできない場合も多く、一つの頭状花序に50個も結実すれば上々です。果実は卵形~長卵形で長さは5~8mmです。この硬い果実の中に種子があります。果実の上部には冠毛が密生しており、乾燥するとタンポポのように綿毛になります。

栽培

地中海沿岸原産で、生育適温は20°C前後です。真夏が苦手で、高温期には花蕾が十分肥大しないうちに花が咲いてしまいます。冬期は氷点下10°C近くまで耐えますが、氷点下になる地域では防寒しましょう。

多年生草本で、繁殖は種子もしくは株分けで行います。アーティチョークはF1品種でなくても遺伝的に固定されていない可能性が高く、こぼれ種で種子繁殖すると、親と違う形質が現れる場合があり、品質低下につながります。したがって、株分けによる栄養繁殖がおすすめです。株分けは真夏を避け、植えつけ2年目以降の6月もしくは9月頃が適期です。植えつけて4年を過ぎると、花蕾の収量が低下しますので、株分けして株を更新するとよいでしょう。

播種する場合、春、遅霜の心配がなくなってから行います。キク科は直根で移植を嫌いますので、直播きもしくはセルトレーなどの根を傷めない方法で育苗します。一度植えつけると、移植できません。大きくなりますので、植えつけ場所に気をつけましょう。

土作りには完熟牛糞堆肥などの畜糞堆肥を年に1回、施しましょう。開花を充実させるにはリン酸の豊富な骨粉や魚かす、バットグアノなどを、あらかじめ土と混ぜて積んでおくボカシ肥を作って春先に施します。

葉や根を薬用として、花蕾を野菜として利用するには日当たりのよい場所で十分に光合成を行う必要があります。花蕾の収穫は、花蕾の径が10cmくらいで、総苞の開く前のまだつぼみの硬い開花前に行います。食べるのは、総苞片の基部と花托(花床)です。径が5cm程度の若い時期に収穫すると花蕾や花茎をまるごと食べることができます。葉を薬用とする場合は十分に展開した葉を収穫します。一方、カルドンのように葉柄基部を野菜として利用する場合は、花蕾収穫後に花茎を地際30cm程度で切り戻し、株元の葉をワラや寒冷紗などをまいて縛るなどして軟化します。

アブラムシがものすごくよくつきます。アブラムシは風で飛ばされてきますので、可食部を防虫ネットや台所の水切りネットなどで覆うとよいでしょう。

人との関わりの歴史

アーティチョークの記述は、イタリアとシチリアでの栽培を記したテオフラストス(B.C.371-287)にまでさかのぼります。ディオスコリデス(A.D.40-90年頃)や大プリニウス(A.D.22/23-79)はカルドンとアーティチョークの催淫や男子の産み分け作用を記しています。

ギリシャ神話では、ゼウスがエーゲ海の島で美女キナラ(Cynara)と出会い、キナラを神にしてオリンポスで暮らさせるも、キナラは疲れ、母恋しさで抜け出してしまい、それを知ったゼウスが怒りでキナラをアーティチョークに変えてしまったとされています。

800年代初頭には、アラブ系の人たちによってスペイン、イタリアへと持ち込まれて栽培が広がったため、アラビア語を起源とするアーティチョークの名が普及したと考えられています。

アーティチョークを有名にしたひとつに、カトリーヌ・ド・メディシス(カテリーナ・デ・メディチ)が1533年、アンリ2世と結婚する際にイタリアからフランスに持ち込み、催淫作用があると考えられていたアーティチョークを初夜に食べ過ぎた逸話があります。ちなみにカトリーヌは、フォークやアイスクリーム、マカロンなどもフランスに導入しました。

日本にはカルドンが江戸中期に、アーティチョークが江戸末期にオランダから渡来したとされています。

アーティチョークの薬効に関する研究は、1930年代に肝疾患や動脈硬化との関係などでなされて以降盛んになります。1954年にPanizzi,L.らはアーティチョークからシナリン(cynarin)を分離しました。1966年にMaros,T.らは肝臓の再生効果を、1972年にGrogan,J.L.らはコレステロール低減作用を、1997年にGebhardt,R.らは抗酸化作用を、1999年にWegener,T.らは肝・胆道系疾患や消化器疾患に対する効果を、2001年にGebhardt,R.は抗胆汁鬱滞作用を、2004年にZhu,X.らは抗菌作用を、2011年にFantini,N.らは血糖値低下効果を報告しました。

アーティチョークは、観賞や野菜、化粧品、石けん、サプリメントのほか、葉を苦味の強いティーで利用します。ベトナムでは花蕾や根を苦味の少ないティーで利用します。イタリアにはアーティチョークを用いたシナール(cynar)という苦いリキュールがあります。庭に1本あるだけで楽しみが広がりそうですね。

 

博士(農学)
木村正典 きむら・まさのり
ジャパンハーブソサエティー専務理事。 ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わるとともに、園芸の役 割について研究。著書に『二十四節気の暮らしを味わう日本の伝統野 菜』(GB)、『カルペパー ハーブ事典』(監修)(パンローリング)、『ハ ーブの教科書』(草土出版)、『有機栽培もOK! プランター菜園のすべ て』(NHK 出版)など。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第39号 2017年3月