第27回シンポジウム「睡眠」~女性のライフステージと心地よい眠り~
日程:2025年10月26日(日)
オンライン開催
理事・企画広報委員 佐藤香
第一部の橋口玲子医師による「睡眠のメカニズムから考える質の良い睡眠」では、私たちの睡眠が「体内時計中枢」「睡眠中枢」の2つの中枢によって制御されていることが示された。睡眠は単に休息の時間ではなく、脳と身体の統合的なメンテナンス機能を果たしており、年齢とともに浅い睡眠が増えることや、深いノンレム睡眠が成長ホルモン分泌と関わることなどが紹介された。特に女性はエストロゲンの変動によって睡眠リズムが乱れやすく、月経前や閉経期に不眠や気分の変化が起こることが多いという。 また、日本人の睡眠時間は世界的に見ても短く、慢性的な「睡眠負債」に陥っている現状が指摘された。睡眠不足は脳の新陳代謝を妨げ、メタボリックシンドロームや免疫不調にもつながるとされる。生活の中で朝日を浴び、朝食で体内時計を整えること、夜はブルーライトやカフェインを控えることなど、基本的な生活リズムを整えることで良い睡眠へ導く重要性が強調された。また、睡眠の一助となるハーブや精油の話が印象的であった。
第二部の篠原由佳先生による「睡眠とヨガ」では、ヨガの呼吸法や瞑想を通して自律神経を整え、自然に眠れる身体を育むアプローチが紹介された。睡眠・運動・栄養を健康の三本柱とし、テクノロジーや薬に頼らず、身体と心に丁寧に向き合うことが「本当の健康」であるというヨガ哲学の視点が印象的であった。特に、現代人の不眠の多くは「過剰な刺激と活動」による交感神経の高ぶりが原因であり、深呼吸やストレッチ、瞑想によって副交感神経を優位にすることが質の良い眠りにつながると説明された。
第三部の薬剤師エッデラ杏理先生による「植物療法の実践」では、ハーブや精油の芳香成分を用いた睡眠改善の具体的手法が紹介された。講演では、エストロゲン優位や慢性炎症、インスリン抵抗性が連鎖して不眠を悪化させる「魔のトライアングル」について説明があり、生活リズムの調整や植物療法を併用する意義と参考書籍が示された。また、フラワーエッセンスを活用して感情面を整えることや、「人生の輪」という自己評価ワークを通して自分の満足度を客観的に見つめる方法も紹介された。年代別にみたハーブの使い方として、ライフステージに応じた実践的提案もあった。
三者の講演を通じて、睡眠の質を高めるためには、日々の生活習慣、心身の調和、自然の力を取り入れた包括的な視点が必要であることを学んだ。





