German Chamomile

ジャーマンカモミール

ジャーマンカモミール 

German Chamomile

Matricaria chamomillaMatricaria recutica

和名:カミツレ / 科名:キク科 /使用部位:花部

ジャーマンカモミールは、ハーブティーの原料として世界的に最も広く知られているものの一つである。毎年、米国に輸入されているカモミールの量は、750,000~1,000,000ポンド(約335~446トン)であり、その90%がハーブティーとして使われていると推定されている。米国や欧州では、健康と美容を目的にした外用剤としても広く使われているハーブである。商業的には、カモミールは、ジャーマンカモミールやハンガリーカモミールといわれ、類似しているローマンカモミール(Anthemis nobilis 別名イングリッシュカモミール)と混同されることはほとんどない。

【適応】

  • 内用:胃腸の痙攣/消化器系の炎症/消化不良/鼓腸
  • 外用:炎症性皮膚炎/神経皮膚炎/肛門-性器炎症(沐浴、洗浄)
  • その他:幼児の下痢/一般的な風邪症状/放射線照射や化学療法による粘膜の炎症

【作用】

消炎/筋肉の緊張緩和/鎮痙/傷の治癒促進/防臭/抗菌/皮膚代謝亢進/緩やかな鎮静/駆風

【主な使用法】

  • 内用・外用に際し、一週間以上続く急性的な不調や周期的な再発がある場合には報告するように注意を促す。
  • 内用
  • 乾燥花部を1回につき2-4gで1日3回、もしくは5gを1回のみ用いる。
  • 〔浸剤(ティー)〕ジャーマンコミッションEにて推奨されている投与量は、乾燥花部約3gに熱湯150mlを注ぎ、蓋をして5-10分間浸す。胃腸の不調には1日3-4回食間に服用する。スイス公認の浸剤としての用量は900mgを同様に調製し、1日3-5回服用する。
  • 〔エキス剤〕1:1(g/ml)の割合で、38-53%エタノール(v/v)で抽出した、青色の精油を少なくとも0.3%(w/w)含むエキス剤1-4mlを1日3回服用する。
  • 〔チンキ剤〕1:5(g/ml)の割合で、45%エタノールで抽出したチンキ剤3-10mlを、1日3回服用する。Kamillosan(R) Konzentrat製品は、約1:4.0-4.5(w/v)の割合で、42.8%エタノールで抽出し、100ml中に精油150-300mg、アピゲニン-7-グルコシド150-300mg、(-)-α-ビサボロール50mgを含む。成人は、湯100mlに5mlを入れて1日4回服用し、幼児は、湯100mlに2.5mlを入れて1日4回服用する。
  • 外用
  • 〔入浴剤〕肛門-性器の炎症では、乾燥した花50gを10Lの湯に入れて入浴する。
  • 〔ガーグル(うがい)〕乾燥した花3-10gに熱湯100mlを注ぎ、蓋をして5-10分浸す。口内炎や咽頭炎には、この浸剤で洗浄もしくはうがいをする。または、チンキ剤5mlを100mlの湯に注ぎ、1日3回以上うがいをする。
  • 〔蒸気吸入〕乾燥した花3-10gに熱湯100mlを注ぎ、蓋をして5-10分浸すか、もしくは、チンキ剤15mlを0.5Lの熱湯に注ぎ、上気道の炎症に1日1-3回蒸気吸入を行う。
  • 〔湿布〕乾燥頭状花を3-10%(m/m)含む半固体のペーストやプラスターを調製して外用する。
  • 〔リンス〕浸剤を3-10%含む温かい水性のリンスを調製して用いる。

※注意・・浸剤を眼の周辺に使用しないこと。

【禁忌】

アルニカ(Arnica spp.)、カモミール(Matricaria spp.)、マリーゴールド(Calendula officinalis)、ヤロー(Achillea spp.)や、ラグウィード(Ambrosia spp.)、キク属(Chrysanthemum spp.)等のキク科(AsteraceaeもしくはComposite)の植物には過感作反応が知られている。

※妊娠及び授乳期間での禁忌はない。

【副作用】

軽度な副作用の報告がある。稀に、接触性アレルギーが生じる。カモミールティーで眼を洗浄すると、稀にアレルギー性結膜炎が生じる。濃度の高い熱いティーでは、催吐作用が報告されている。加工されていない天然の花部には有毒作用はない。稀に、アナフィラキシー反応が起きる。分娩時のカモミールを含む浣腸により、致命的なアナフィレキシーが1例と接触性皮膚炎、蕁麻疹の記録が報告されている。

【薬物相互作用】

相互作用は知られていない。エキス剤はエチルアルコールによる潰瘍形成を予防する。ワルファリンとの相互作用の可能性が警告されている。

【臨床的展望】

ジャーマンカモミール抽出物に関する10例の臨床試験のうち、1例を除くすべての試験により、皮膚、神経、呼吸器の状態への適用としての効能が証明されている。3例の臨床試験では、口内炎での口腔洗浄、収斂効果、冷却効果を得るものとしてカモミールの活用について述べられている。口内炎に関する1例の試験では有意な改善が見られなかったとされている。皮膚科領域での臨床試験では、炎症性皮膚炎に対するカモミールクリームについての左右比較試験や、皮膚擦傷後の外傷治癒を促すカモミール抽出物の二重盲検試験が含まれている。その他には、風邪における呼吸器の不調の改善に対するカモミールエキスの蒸気吸入の有効性、精油の蒸気吸入による嗅覚刺激により気分を好転させる効果、心室のカテーテル挿入後の浸剤の経口投与の心臓への効果などの試験が報告されている。8年間に渡る5,058名の妊婦の試験では、クラリセージの葉部(Salvia sclarea)とカモミールの花部の精油が分娩時の疼痛緩和に効果的であることが示された。二重盲検、プラセボ対照試験での最近の報告では、カモミールエキスとリンゴペクチンの併用が合併症の無い子供の急性の下痢に有効であるかどうかが調べられた。

2009年2月発行

編集:特定非営利活動法人 日本メディカルハーブ協会・学術調査研究委員会

提供:アメリカン・ボタニカル・カウンシル

このモノグラフはAmerican Botanical Councilにより2003年に発行されたThe ABC Clinical Guide to Herbs, Mark Blumenthal (senior editor), © を翻訳したものです。

 Translated from The ABC Clinical Guide to Herbs, Mark Blumenthal (senior editor), © 2003 by the American Botanical Council (www.herbalgram.org). Courtesy of American Botanical Council.